この学園にきて一週間、5人が死亡。
現実味のない数字に、わたしの精神もかなりずたずただ。
学級裁判が終わったため、今度は3階に行けるようになった。
ここは学校だというのに、娯楽室なんてものもあるからちょっとびっくりした、セレスさんは大喜びだ。
だがそんな教室ではなく、わたしが気になったのは物理室だ。

「ねえ汐海さん、これってなん何だろうね?」
「うーんどうだろう…動いてるけど」
「それは空気清浄機ですよー!」

ご丁寧にモノクマが説明してくれる。
どうやらわたしたちがここで生活できるのもこの空気清浄機のおかげらしい、…外は一体どうなっているんだ。
わたしがいろいろ機械をいじってみるのもいいが、あんまり機械は得意ではないし、またの機会にしよう。
それにしても空気清浄機って……、怪しい、すごく怪しい。
止めたらわたしたちは死ぬのかなあとか、死に対する恐怖も薄れてきた、というか死に対する感覚が麻痺していると言った方が正解だろう。

美術室を探索していたメンバーと合流すると、何やら不思議そうな顔をしていた。

「どうしたの?」
「あ、汐海ちゃん…あのね。この写真って、見覚えある?」
「……わたしと、誰……?」

そこに写っていたのは紛れもないわたし。
でもわたしはそんな写真撮った覚えはなかったし、隣にいる人も知らない人だ、……ていうかこの人、どんな髪型してるんだ。
すごく親しそうな写真だが何もそれについて思い出せない。
どうやら写真はこれだけじゃないらしく、驚いたことに桑田くん、大和田くん、不二咲さんの3人が楽しそうに笑っている写真も美術室に落ちていたようだ。
謎がますます深まる、あの3人は間違いなく……死んでいるはずだし。

一旦食堂に戻って3階について整理する。
すると朝日奈ちゃんが何かを言いたそうな、でも言えなさそうな。
セレスさんの巧みな話術により、まもなくその真意が明かされた。
どうやら不二咲くんの幽霊を見た、らしい。

脱衣所のロッカーの中でそれは光っていた。
確かにこれは不二咲くんが持っていたパソコンだが、どういうことだろう。
霧切さんがパソコンをつけると、そこには不二咲くんの顔が写っていた。

『おはようございます!ご主人たま♪』
「ふ、不二咲くん…!?」

何だこれ!不二咲くんが画面で喋ってる!
画面の不二咲くんはどうやら人工知能プログラム『アルターエゴ』とか言うらしい、すごい…こんなの作れちゃうのか、流石は『超高校級のプログラマー』と言ったところ。

「あなたはここで何をしているの?」
『ああ、それはね…実はこのパソコン、すっごーく厳重にロックがかかってるんだ。だから多分この学園に関する秘密、とかが隠されてると思うんだよね!』
「すごい…!」

一同もびっくり、不二咲くんがわたしたちに隠れてこんなことをしていてくれたなんて。
このパソコンから明らかになる情報があれば、間違いなくわたしたちの役に立つだろう。
これは不二咲くんが遺してくれた『希望』と評するべきか。

『ああそうだ、解析してたら出てきたんだけどね…』
「…汐海さん、あなたこれ何だかわかる?」
「え、わたし?」

霧切さんがわからなくてわたしにわかること、そんなにないと思うんだけど。
指示された通り画面を見ると、そこには細かく書き込まれた化学式。
……これは流石に、霧切さんにもわからないか。
ざっと目を通したが、どうやら何かの薬の作り方のようだ。
と言ってもその大量の材料と膨大な手間を考えると、まだ完成してないように思える。
ご丁寧に『副作用あり、死ぬかも』なんて書いてあるけど、一体誰が作ったんだろうこれ。
プリントアウトも出来ないので、仕方なく一字一句メモを取ることになりかなり時間がかかってしまった。

その後わたしがパソコンから離れると、石丸くんがアルターエゴに向かって兄弟ーー大和田くんについて尋ねた。

「君は、…兄弟を恨んでいるか……」
『ああ、そっか…石丸くんは責任を感じてるんだね…』

アルターエゴ不二咲くんはその姿を大和田くんに変え、格言めいたものを石丸くんへと伝える。
その言葉に感極まった石丸くんは、覚醒を遂げ、石田くんになった。
いやいや、本当にそうなんだよ、自分で石田って言ってるんだから。
……もしかしたら、石丸くんの精神はもう崩壊しているような、そんな気がするけど。
微妙な空気となりその場は解散、わたしは図書室へ向かった。

「ってええ、ちょっと汐海さん何してるの…?」
「あっいや、さっきアルターエゴが言ってたやつ、何だか調べてみようと思って…」
「それにしてもその量は……」

研究者の血かどうかは知らないが、わたしは篭って勉強するのが結構好きだ。
図書室で調べるのもいいのだが、十神くんがいろいろうるさそうなので本をまとめて持って行こうとしたところを苗木くんに止められる。
…流石に量が多すぎたか。
だが何て苗木くんは優しいのか、わたしの部屋まで半分持ってくれるらしい、やったね。

「ありがとう苗木くん」
「別にこのぐらい気にしないでよ、それに…さっきのあれがボクには何だかまったくわからないけど…汐海さんならわかるかもしれないでしょ?」
「う、うーん、どうだろ…頑張ってみる」
「あはは、ボクに何かできることあったら、遠慮なく言ってね」

あー、こういうことさらっと言えちゃう人って素敵だよね…十神くんとか見習ってくれないかな。


新世紀銀河伝説再び!装甲勇者よ大地に立て!(1)


----
02/10



Prev Next
Back





- ナノ -