「さて、私もそろそろ動かないと怒られてしまうわねえ…まずは、檸絽、諷ちゃんだったかしら」

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「それじゃわたしは仕事が残ってるので、また会いましょう!」
「…っていうか付属中の生徒なら多分わたしの寮入れるから、いつでも来なさいよ」
「わあ、ありがとう姉さま!今晩行きます!」

そんな軽い約束をして、楓は自分の寮へと戻った。
部屋に入ると、ルームメイトは既に疲れているのか眠っていたので、先に風呂にでも入ることにした。


楓はそこまで長風呂しない主義の人間だ。
必要最低限の事を終わらせれば風呂場にそこまで長居せずにスウェットに着替えて戻る。
ルームメイトはシャワーの音で目でも冷めたのだろうか、大きな欠伸をして乱れた髪を整える。
それ程大した事でもないような素振りで楓に小さな封筒を手渡した。

「何これ?」
「私も詳しくは知らん、お前宛だそうだ」
「…悪趣味な封筒ねえ」

中身を開いても、暫く楓にはどうすべきか分からなかった。
ただ一つ理解できたのは、唯一の妹がこの場には来れないということ。

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「…もしもし、そこの『風紀委員』の方」
「はい、どうかされましたか?」
「少し道に迷ってしまったのよ…、この研究所に行きたいのだけれど」

薄汚れた白衣に身を包む科学者のような女性。
しかしここ学園都市ではそれほど珍しい光景でもなく、諷は何の疑いもなく女性の方へと近づく。

「…こちらですか、……っ!?」
「……ごめんなさいね?私だってこんな事したくはないけれど、なんて言ったら嘘にはなるかしら」

科学者のポケットから出されたハンカチに染み込んだ薬品の匂いだけが、その場へと残った。


a Scientist's Hand
(忍び寄る魔の手)

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03/18
お久しぶりです 映画見てきました


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