暖かな春のある日
…佐助さんの朝食は相変わらず美味しい。
今回は遅めに起きたため簡単な洋食だけで済ませたものの、自分で作るよりも遥かに美味しい朝食に舌鼓を打った。
朝食の後のコーヒーをリビングまで持っていき、昨日の夜にそのままにしてあったPCの画面を立ち上げた。
今日やらなければならないことは今の仕事の引き継ぎについてまとめることだ。
気合を入れてPCの画面に向かうと、いつの間にか戻ってきた佐助さんがここぞとばかりに忍の技を駆使して、ソファに座っていた私を抱えた。
仕事の邪魔をされた私は思わず抗議の声をあげる。
「ちょっと何するんですか!?…仕事中なのに。」
「せっかくの休みの日なんだぜ。なに仕事なんか持ち込んでんのさ。…ま、気持ちは分からねぇでもないけどねぇ。」
「それなら下ろしてください。」
「それは聞けない相談だねぇ…ちっとは俺様のこと構ってくんない?このままでも仕事は出来るだろ。ほら、早く進めちまわないと。」
後ろから抱きしめる態勢を直してくれない彼に私は溜息をついてみせると、佐助さんに抱えられたまま仕事を進めることにした。
…が、時折私の首筋に埋め、脇腹を撫でて妨害してくる佐助さんに再び非難の声をあげた。
「ちょっと佐助さん、やめてくださいってば!」
「えー…これも駄目なわけ?ホント朝から名前ちゃんはつれないんだから。」
「っていうか仕事の邪魔しないでください。いつまで経っても終わらないじゃないですか。これじゃ、お出かけできませんよ。」
私の言葉に仕方ないというように佐助さんは脇腹に置いていた手を外した。
しかし、依然として抱えられている態勢は変わらない。
とりあえず妨害の手は止まったので、私はそれ以上抵抗するのはやめて仕事に集中した。