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佐助さんがテレビから引っこ抜いた物体X…もとい真田幸村さんはいまだに気を失っていた。
とりあえずソファーのうえに横たえると、佐助さんは頭をかきながら呟いた。
「まさか旦那までこっちに来るとはなー……。」
「やっぱりあのゲームが何かの引き金になったんですかね。でも……佐助さんは井戸からこんにちはだったんですけど。」
「こんにちはって…俺様、好きであの場所にいたわけじゃないからね。」
真田さんの上でああでもない、こうでもないと条件について話し合っていると、さすがに騒がしかったのか真田さんは身じろぎ、身体を起こした。
「ここは………佐助!?なぜ佐助がこんなところに…確か任務中であった気がするのだが……。」
「…確かに任務中だった。その途中でこの異世界に旦那と同じように飛ばされてきたってわけ。それより旦那、見てみなよ、面白いものが見れるぜ。」
まだ自分がどんな状況にあるのかまるで分っていない真田さんに軽く(本当に軽くだった。)佐助さんは説明してから、再度戦国BASARAのゲームを起動させた。
先ほど食いついてまで見ていた戦国BASARAのOPが流れる。
「これは…俺達が先ほどまでいたところではないか!?佐助の言った「異世界」というのは真だったということなのか……!?この世界は一体……。」
「それがまだ俺様にもわかってないんだよね。唯一、この世界で頼れるってのがこの名前ちゃんなんだ。先にこの世界に来た俺様を色々世話してくれた人なんだけど。」
2人のやり取りを茫然と見ていた私だったが、佐助さんに促されるままに自己紹介を始めた。
「苗字名前と申します。この世界の上田城で佐助さんに会いまして、なんやかんやで佐助さんとここにいます。」
「某、真田源次郎幸村と申す!何やら佐助が世話になったというので、一言お礼を申し上げたい!」
「なんかすっごく投げやりな説明だったけど…まぁ、いいか。」
横で私の説明が不服だったようで佐助さんがぶつぶつ独り言を言っていたが、私の身にもなってほしい。
貴方の主に半ば脅されて世話することになりましたなんて正直に言えたもんじゃない。
きっとよくて喧嘩が始まる。
そして、賃貸アパートが壊れる。
それは絶対避けたいことだ。
私の自己紹介に真田さんの状況把握も終わり、(本当に佐助さんが軽く説明するだけで真田さんの状況把握が終わった。佐助さんがそれほど信頼されているからなのか、それとも真田さんが単純だったのか。)現代テイストの佐助さんに戦装束の真田さんがこれからどうしようかと考えあぐねている。
なんかミスマッチだ…まずはお風呂に入ってもらおう。
寝間着はさっき佐助さんに出したものの予備で買っておいたもう1セットがあるから、無理やりにでも着てもらおう。
「とりあえず真田さん、まずは湯浴みにでも行ってください。こちらの世界での湯あみの仕方は佐助さんに聞けば大丈夫だと思うので。佐助さん、面倒だったらもう一度入ってしまってもいいので、補助をお願いできますか?シャワーの使い方とかはもうわかりますよね。」
「了解。任されましたってね。旦那、案内するよ。」
こちらに向かって一度ウインクしてから真田さんを連れて浴室へ向かう佐助さんを見て、忍(というより佐助さん本人)の適応能力に改めて感動してしまったのであった。
元々、現代人なんじゃないの?あの人。