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――竹中専務から貰ったチケットは全部で7枚。
誰と一緒に行くべきかと悩んでいると、佐助さんが眉を顰めながら尋ねる。
これは……デジャヴ。ホワイトデー再来か。
「…それ、誰から貰ったの?もしかして会社の男?」
「…上司からです。たまには友人達とゆっくり過ごしてほしいって言われて。確かに男性ですけど、佐助さんにとっての「真田の旦那」と同じ立場なんですからね。殺すとか物騒なこと言わないでくださいね。」
眼を細めながら不機嫌さを露わにする彼に釘を刺す。
というかどうして会社の人からもらったなんて分かったんだろう。
そう疑問を口に出す前に、佐助さんは言った。
「こんなチケットが買えるほど、名前ちゃんが余裕ないの知ってるから。」
おう……財政状況がばれていたようだ。
確かに転職前後はすぐに転職先が見つからないことも考えて節制はしていたのだけれど、メーカーを変えたりして気づかれずに節制していたのに。
武田のオカン…侮りがたし。
「それで…招くメンバー決まってるの?もし決まってないなら、俺様と名前ちゃんの2人で行けばいいんじゃない?交通費も節約できるし。」
「嫌ですよ、残りのチケットが勿体ないんですもん。ここだけの話…これを貰ったの、実は慶次さんがきっかけだったんです。」
「前田の風来坊が?」
「私と佐助さん、かすがと慶次さんで出かけた時があったでしょう?その時に入った喫茶店で私達のこと、うちの上司が見かけたみたいなんですよ。しかもその時、家族ごっこの話をふざけてしていたじゃないですか。それをうちの上司が聞いていたみたいなんです。」
「へぇ…それって転職前の話でしょ。稀有なこともあるもんだね。」
佐助さんが少し不満げに反応する。
…まだうちの上司を疑っているんだろうか。
馬鹿なことを言わないでほしい。
うちの上司はなんて言ったって社長とデキているんじゃないかと思われるほどの社長崇拝が激しい人だから、私を好んでいるはずがない。
そのことを伝えると、一瞬、佐助さんは顔を引き攣らせた後、苦笑いをしていた。
どうやら知り合いに似た人がいるらしい…ってかすがのことか。