関わらないようにしようと、人知れず固く誓ってからまだ一週間も経っていない。
なのに、なのに、なんですかこの光景は。
「いやあ探したよ〜、何せ僕、何回考えてもやっぱり君のこと知らないんだよね。」
そうでしょうね。
「でも君は僕のこと知ってるんでしょ?なのにこの前いなくなっちゃうんだもん。」
逃げたんだよ。
「ひどくない?僕結構頑張って探したんだけど。」
頑張りすぎだよ。
「それで―――――、君、誰?」
「お客様、お品物を持ってからレジにお並びいただけますか?」
「…、へえ。」
へえ、じゃないんだよ、こっちはまさか避けようとしていた対象がこんな近日中に対象から出向いてくるなんて考えてないんだよ。
というかそもそもこの時間帯は学校とか塾帰りの学生やら仕事終わりの社会人やらで混むんだ、レジに行列ができてるのを見てくれ。
この混んでる時間帯にお話に来るなんて非常識通り越していい度胸だな。
そして外見がいいせいで並んでるお客さんも隣のレジの同僚も圧倒されてるじゃないか。
そもそもこっちはこんなイケメンに免疫ないんだ、私がなかなか返事しないからって軽く顔を覗き込もうとしないでくれ。
身長も高いな、何センチですか!!!
へえ、の一言で片づけられたけど、あの返事が私の精一杯なんだよ!!!!!
「お客様、大変混み合っていますのでお品物をお持ちになってから再度お並びいただけますか」
再度なんて並ばなくていいからもう帰ってほしい、切実に。
「ん〜、わかった、ねえ今日何時上がりなの?」
「…はい?」
「今は忙しいからだめなんでしょ、仕事終わるの何時?」
「そういったプライベートなことはお答えできかねます。」
おい固執するな早く帰ってくれ。
決して目を合わさずに、正確には合わせられないが正解だが、返事をした後に即刻レジ応援のベルをこれでもかと鳴らす。
実際に混み合っているし応援は必要、そして個人的に一番重要なのがこれ以上この“五条悟”と話してはだめだという強い意志、そのため話す隙を与えないようベルを連打する。
隣の同僚が狂ったようにベルを鳴らす私を見て引いていたが、こっちはそれどころじゃない。もしかするとお客さんも引いているかもしれないが、今の私にそこまで確認できる視野の広さはない。
「ははっ、君おもしろいね。」
「とんでもありません。」
話しかけられればベルを振る手を止め、内心どんなに焦っていたとしてもきちんと顔をとり繕い、返事をする。
――――――社会人やっててほんとよかったよ、社会の荒波にもまれながらもきちんと顧客対応していたのがまさか今役立つなんて。
「まあいいや、今君は話す気ないみたいだし。また近々くるよ。」
「ご来店ありがとうございました。」
また来てほしくはないんだけど。
思い通りにいかないあの人
もう会いたくないのに予告付き