ぼんやりとした意識のまま雪弥はくたりと男の胸に倒れ込む。ふるふると子兎のように震え、シャツに弱々しくすがる。
ただでさえ慣れていない行為なのに、ここまで激しく蹂躙され、雪弥の意識は半分飛んでいた。
体を桃色に染め上げながらとろんと溶けた表情は、左目下の泣き黒子と相まって雄を揺さぶるほど扇情的である。
乱れた呼吸からちらちらと覗く赤い舌と濡れそぼった唇がいやらしい。

アラストルはそんな雪弥の淫美なさまを暗い劣情の炎を灯して見つめていた。

「ユキヤ、私の美しい蝶…」
「…ぁっ……」

そっと雪弥の唾液でてらてらと光る唇を撫で、男は猛毒を垂らす。

「お前は私のものだ。
これからはこの邸がお前の家となる。欲しいものはなんでもやろう。敷地内なら外に出してやっても構わない。お前のために花園も用意した。
だが、私から逃げることは許さない。
お前のその美しい体も、汚れない心も、私だけのものだ。血の一滴から髪の毛一筋、涙一粒まで全て、な。
例え死んでも、その美しさを保ったまま冷凍保存し硝子ケースに納めて愛でてやろう」
「ひっ……ゃ、や…」

――――狂気。
まさしくその言葉を体言する男の言動と澱んだ瞳に、雪弥は全身を震わせた。許容オーバーな事態に頭がガンガンする。
腕を突っぱねて男から逃れようとするが、思うように動かない。性的なことに疎い体は先ほどの行為のせいですっかり鈍り、緩慢な動作にしかならなかった。
当然、アラストルは苦もなく捕らえた。

ひょいっといとも簡単に雪弥を抱き上げ、ベッドへと放る。上質な寝台は柔らかに雪弥を受け止めた。

「お前が私のものであるということを、その身に刻んでやろう」

ゆっくりと優雅に近づいて来るアラストルを、雪弥はただ首を振って見つめるしかなかった。

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