この男が全ての元凶だと直感で分かった。
堪らず、感情が爆発する。

「ぁ……っ貴方は誰ですか、ここはどこなんですか!?
どうして僕をこんな所に…それにこんな服とチョーカーまで……。こんなものいりません。いらないからともかく僕を家に帰して下さいっ!!
帰して…っ…。もう分からない。訳が分からないよ……っ!」

コントロールのきかない感情が雪弥を侵し、激情に身を任せて猛々しく言い募る。ぎりぎりと男のネクタイを掴んで引っ張った。
もしこの場に男の部下がいれば顔を真っ青にして引き剥がしただろう。殺されると思ったに違いない。男もこれが雪弥でなければ躊躇いなく、それこそ眉一つ動かさないで処分していた。
しかし、そんな普段であればこんな無礼な振る舞いを許さない筈のアラストルは、ただされるがままである。

怒りや恐怖、不安がぐちゃぐちゃに混ざって渦巻いている。雪弥はかたかたと震えて、涙を溢しながらも、男を睨みつけるのを止めかった。怯えっぱなしの自分にこれ以上負けたくなかった。
ただでさえ白い手は、力一杯ネクタイを握り絞めているせいか哀れなほど青白くなっている。そんな見る者に憐憫の情を抱かせる雪弥の姿を、アラストルはまるで極上のワインをたしなむかのように、どろりと熱の籠った瞳でうっそりと見つめていた。

「……ユキヤ」

マグマのような熱さを持つ掠れた声で自分の名前を呼ばれ、びくりと身をすくませる。
半ば無意識にネクタイから手を離して片足を引くが、男はそれを許さぬとばかりに、雪弥の腕を掴んで華奢な腰を掻き抱いた。

「……ひっ!…い、嫌だ…離しっ…ぅ、うン…んんッ…」

抗議の声は、アラストルの口内に消えた。
強引に男の厚い舌が雪弥の口腔を凌辱する。歯の裏側や上顎、内頬と柔らかで敏感な部分を執拗なまでに犯す。

「…ぅ…ふ…くぁ…」

ぴちゃぴちゃと淫わいな音が部屋に響く。口だけでなく耳までなぶられてるようだ。頬が薔薇色に火照る。
男の舌は巧みに動いて、雪弥の縮こまった小さな舌を引き摺りだすと、絡め舐り犯した。半開きになった唇からどちらのものともつかぬ唾液が、雪弥の顎から首筋へと垂れ、酷く淫らに彩る。
キスなどと可愛いらしい表現では表せないほどに、アラストルは雪弥の唇を、口腔を、舌を貪り尽くす。それはもう唇でするセックスだった。

「……く、ふぅ……うン…ふぁ……はぁ、はぁ…」

五分近くもたっぷりと唇を味わられる。もはや雪弥は男に腰を支えられていないと立っていられない状態だ。
唇を離すと銀色の糸が雪弥の舌とアラストルの舌に繋がっていた。

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