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トーストバリエーション



スマホのアラームで目が覚めた、止める為に瞼が上がらないまま横に置いてたスマホに手の伸ばしたら柔らかいモノにぶつかり、何かと思って無理矢理瞼を持ち上げれば人の顔に手を置いてたらしい。


「んっせェ、はやくとめろ」

「あぁ、ごめん。って何でここで寝てんの。」


みんな居間で雑魚寝してるんじゃないの?

あれから少しして寝室に敷いてもらった布団で寝かせて頂き、先に起きて化粧する為に起こさないようボリューム小さくしてアラームをセットしてたのに何でここに居るんだよ沖田くん、しかもちゃっかり布団入っ来てるし。いや全く気付かないくらい人様の家で爆睡してる私が一番問題だけども。


「あっちイビキうるせんでさぁ」

「あー、お酒飲んでるもんね、仕方無いよ。」


全く起きる気は無いんだろう、寝返りを打つように身体がこっちに向いたけど起き上がった私のせいで捲れた毛布を引っ張り顔が埋まりつつある。
私もまだ寝てたい気持ちは山々で、起きなきゃなと思いつつもボーッと呑気な寝顔を眺めてたら段々と瞼が閉じて行き、でも直ぐにそれを咎めるように声が聞こえ一瞬飛んだ思考が戻って来た。



「目玉焼き半熟で。」

「……うん。……いや違う、ここ私の家じゃないからね」

「台所にあんの好きに使っていーよ」

「え!? 」


もう1人居たの!? 全然気付かなかった、急に後ろから聞こえた声に驚いて振り返ったらベッドに家主が居た。自分のベッドに寝てるんだから何の問題も無いのかもしれないけど見張っててくれる筈の家主がベッドで転がってるよ。


「……普通にベッドで寝てるんですね」

「まぁ俺の家だしな。でもちゃんと見張っててやったろ」

「寝る時は誰も居なかったのに起きたら2人も増えてますよ」

「総一郎クンはいつもの事なんじゃ無ェの?」


いつもの事? 同じ布団で寝る事なんてそんなに無いけど。泊まりに来る事はあっても別に布団敷くよ、まぁ沖田くん基本自由人だしどうでも良いとして貴方は?

……でもただ自分のベッドで寝てただけなのに騒ぐ事でも無いか、それにお陰で完全に目が覚めたからまぁ良いや、ここで化粧は出来なくなったから洗面所借りようかな。


「また洗面所お借りますね」

「おー。つーか化粧落としても目のデカさ変わんねぇのな、顔色すげェ悪いけど」


……そうだ、私スッピンだったんだ。化粧をしたからと言って美人になれるわけではないけれど気の持ちようが全然違う、普通に顔向けてたけど他人に晒したくは無い顔だ。まだ脳の働きが鈍いのかな、寝起きは皆そうだよね。


「良かったな、化粧しなくても変わんねぇってよ」

「良くないでしょ、貴重な朝の数十分の意味」


男の人には分かるまい、習慣化してはいるけれど手間に思わない訳でも無い。新しい化粧品を買った時の喜びはあるけれど眠い目擦ってその為に早く起きるのも中々に億劫なのだよ。
枕に頬を押し付け二度寝する気満々な寝起きの癖に整った顔の貴方に何度理不尽な苛つきを覚えた事か。

そしてベッドの上で身体をこっちに向けながら、肘を立たせて手の平で頭を支えてるこの人も同じ人種なんだろうな。


「化粧してから作る、食パンって昨日買ったのを使って良いんですか?」

「そーあれも会費だから、俺フレンチトーストがいいな。」

「材料あるんですか?」

「あるある、その辺にあるモン何でも勝手に使って良いかんね」

「分かりました」


必要最低限の化粧品しか持って無いけどコンビニで化粧水とか買えたから良かった。

鞄を持って部屋から出れば確かに凄いイビキが聞こえる、誰だろう1人だけだ。

飲み散らかした惨状を視界に入れながら物音を立てないように洗面所に行き、さっと身支度を整えて台所に向かう。


集まる時はいつも会費制らしく私もここに来て直ぐに払った。飲みに行くと高く付くし家の方が都合が良いらしく料理が上手な坂田さんがお家を提供しているそう。余った会費は電気代モロモロって事でポケットマネーになるそうで甘い物買ったりするらしい、好きな物を好きなように作って食べれるから自分にとっても都合が良いんだって昨日コンビニでの帰り道で言ってた。
好きなようにと言っても昨日の料理からして皆の好きな物を作ってるように見えたけどね、沖田くんと土方さんが好きそうな物があったから。

コンビニでデザートを選んでる姿はとても楽しそうだったから優しいんだか賢しだけなのか分からないけど、昨日手伝えなかった分朝御飯作って自己満足しよう。


沖田くんは食パンに目玉焼き乗っける例のスタイル、土方さんは前に会社でサンドイッチ食べてたから玉子のサンドイッチでも作っとこうかな。坂田さんはフレンチトーストで私のも一緒に作るとして、後2人が分からないな、てかこれイビキ誰だ気になる。


軽く片付ける為だと心で言い訳をしてコッソリ見に来たら、誰でも無かった。
いや正確には私が想定してた3人の中の誰でも無くて知らない人が1人増えていてその人だった

誰だろうこの人、坂田さん以上に髪の毛フワフワしてる。私が寝た後に来たって事だよね、想定してた3人は眉間に皺を寄せながら寝てるよ、可哀想に。
起こしちゃ悪いし軽くゴミだけ片付けとこう。

適当な量作れば良いかな、沖田くんの半熟は完璧マスターしたから起きてから作ろう、黄身固まったらまた文句言われるし悔しいもん。




─────────




よし、モジャモジャの人には3種類作ったし高杉さんはサンドイッチと例のパン。桂さんは独断と偏見で遊び心を加え、コーヒーは無かったけど丁度帰りに職場用に買ったのがあったからそれで準備した、職場には新しいのを自分で買って行こう。


「お前は相変わらず早起きだな」

「あっ、おはようございます土方さん」

「はよ」


テーブル片付けてくれたんだ、持ちきれなかったコップの乗ったお盆を持って来てくれた。
洗うのはまとめてするとして、皆起きたのかな。



「もう皆起きますかね? 」

「あぁ、動き出してるからな。お前全員分作ったのか」

「要らなかったですか?」

「いや食うと思う、悪ィな。」

「いえいえ、土方さんのサンドイッチ普通のマヨ量なので自分ので足して下さいね。ここのマヨ無くなっちゃったら困るので。」

「おー」

「あ、沖田くん出てきた。もう目玉焼き作って良いの?」

「ん」


指で輪っかを作り見せてきたから良いらしい。続々と起きて洗面所に行き来してる、土方さんがテーブルを片付けてくれからもう運ぼうかな。



「まっこと旨そうな匂いがするのう!」

「おはようございます、と、初めまして?」

「おぉ、おんしが! 」


朝から声が大きいなこの人、凄く元気いっぱいだ。だけど笑顔で優しそう。



「コーヒーじゃねぇか、アイツ毎回忘れて来やがるのに。」

「持って来てくれたのでは無いか? 銀時では無いであろう。」

「職場用のが丁度あったので、あ!職場にはちゃんと自分で買い直しますからね」

「別に疑って無ェよ、つかこれも会費で良いだろ。後で俺が別で払う」

「いえ大丈夫ですよこれくらい。」

「しかし全員分の朝食まで作ってくれたのであろう、大変だったんじゃないか? わさわざ焼いたパン、ザベスゥゥゥゥ!?」

「うるせぇよ、何だいきなり」


良かった、思った以上の反応だけど喜んでくれて。
パンに乗せたほぼ卵白のみの目玉焼きにソースで絵を描いただけだけど、くちばし用には多過ぎた黄身はデコレーションとして使った。



「見ろ!エリザベスがパンの上に乗っているぞ!」

「良かったな」

「おなごは器用だな、有り難く頂こう。先ずは写真を撮ってから。」

「女子か」

「わしの自己紹介は無いのか、一瞬でかやの外じゃき」

「あ、これ、何を召し上がるか分からなかったので3種類にしました、良ければ好きなの食べて下さい」

「おんしは優しいのう、お土産買って来たぜよ!向こうじゃ人気あるっちゅーてたから適当に買って来たんじゃが、似合いそうじゃのう!」

「向こう?」

「ソイツ海外行っててそんなこっちに居ねぇんだ、深夜に帰って来て真っ直ぐここ来たんだと」

「わぁ、ハードですね、お疲れ様です。お土産私も貰って良いんですか?」

「おんにし買って来たんじゃ、きっと似合うぜよ!」

「わー、ありがとうございますっ」


貰った紙袋を覗いて見ると海外の化粧品が入ってた、これはどう考えたっておかしい、急に参加した私に化粧品? これその辺で買った感じじゃないよね専門のお店のやつだよ。つまり私にじゃない、坂田さんと桂さんにじゃないの? 急に私が居たから気を遣ってくれたんだ、他の人にはバイトの事言うなって言ってたし今返してボロが出ても困るから後でコッソリ坂田さんに渡そうかな。って、


「あれ? 坂田さんは?」

「アイツ起きんの遅ェから放っとけ。」



マヨネーズを過剰に乗せたサンドイッチを頬張る土方さんは、やっぱり何処でもマヨラーで他の人は見向きもしない。慣れてるんだね。
そして沖田くんから文句が出ないと言う事は半熟合格だったらしい。

起きて来ない坂田さんのフレンチトーストはラップでもしておこうかな、いつ起きるのか分からないから私は食べたら帰ろう。化粧品は置き手紙書いて隅に置いておけば大丈夫だよね。


「折角のトーストが冷めてしまうのは残念だ、すまぬが銀時を起こして来てくれないか?」

「えっ、私が行くんですか?」

「俺はパンザベスの撮影で手が離せない、だが俺以外は誰も動かん。」

「……何枚撮ってるんですか…」


まぁ確かに他の人が行くようには思えないな、けど丁度良いか、化粧品ついでに渡せるし。


紙袋を持ったまま寝室に入ると、枕に顔を半分埋めながら定期的な寝息を立てて爆睡なのかな。あんなに騒がしいのにスヤスヤ寝れるなんて凄いよ、低血圧なの?


「坂田さん、フレンチトースト出来ましたよ」



こんな普通に声掛けただけで起きるとは思わなかったけど本当に起きない、身動きすらしてくれないよ。



「坂田さーん、朝ですよー、皆ご飯食べてますよー、…………坂田さーん……」



虚しい……、人を起こすのってこんなに虚しい行為だっけ、ひたすら無視されてる気分だ、心が折れる。
何かアイテム無いかな、でもさっきは普通に起きたのに何で突然死んだように眠ってるの。


失礼ながら部屋を見渡せば、なんと可愛らしいパペットがあった。真ん丸なお目めで真っ白なフワフワの毛並みの犬のパペットだ、可愛いモノが好きなのかな。

勝手に拝借して右手に装着したパペットを枕から半分見えてる額にグリグリと頭部を押し付けて再度名前を呼べば、目は開いてないのに口角か少し上がったのを見逃しはしない。


「やっぱり起きてる、さっきアッサリ起きたのにおかしいと思いましたよ。なんで寝たフリしてるんですか。」

「んー? 違ぇよ、今起きたんだって。」


見える片眼が薄く開き緩やかに笑いながらパペットを私の手から抜き取り言ってくるけど絶対嘘だ。本気で寝てるなら突然こんな事されてふにゃふにゃ笑ってる筈無いよ。


「意地悪ですか」

「してねーよ。でも惜しかったな、少しでも触って起こしてくれりゃァ布団に引き摺り込んでやったのに。」

「……」


目を細め無言で非難を訴えたら、くくっと喉で笑いながら起き上がり、ぐっと両手を伸ばして柔軟した後も尚、口許に緩く弧を描き見つめて来る姿には溜め息が漏れる。


「ひでェなぁ」

「どっちがですか。あ、そうだ、これお土産って貰ったんですけど本当は私にじゃなくてお二人にですよね? 化粧品が入ってました、コッソリ返しておきますね。」

「いや俺が化粧品なんざ貰ってどうしろってんだ、バイトの事言ってんなら店にあんだから置いてかれても困るっつーの」

「え? だって化粧品ですよ? ここに私が来るって知ったとしても帰る直前とかですよね? 」

「アイツ輸入ビジネスみてぇな仕事してんの、店は持って無ェけどあっちで買ったモンこっちで良く分からんルートで売ってんだと。だから女モンも持って帰って来てんだろ。」

「そうなんですか、何か凄いですね。」


なら商売文句だったんだ、お店で働いてる店員さんとかも凄く褒めてくれるからつい調子に乗って買ってしまう事もあるし、あんな満面な笑みで似合ういそうって言われたら私も買っちゃいそうだな。


「結構騒いでたんだけどな、気付かなかった?」

「全然ですね、お酒飲んでたし爆睡でした。」

「いや呑気過ぎだろ、警戒心何処行ったよ」

「最終的に泊まると決めたのは私ですし、それに坂田さん見張っててくれるって言ってくれたじゃないですか。だからぐっすりです。」

「んな易々と男信用しねー方が良いと思うぞ。俺が何処でこれ着替えたか知らねぇだろ、総一朗クンも居たけどこの部屋で着替えたんだかんな。」

「私が寝てる時に同じ部屋で着替えられても特に何も思わないです、でも信用しない方が良いと自分で言う人を信用する程寛大な心は持ち合わせて無いので、もう坂田さんの言葉は信用しませんね。」

「ウソウソッ!嘘だから、じょーだん、いや着替えたのは嘘じゃねぇけど大丈夫、俺信用しても大丈夫な人間。」

「本当ですか?」

「本当本当、だって大人しく寝てたろ? どっこも触ってねぇよ?」

「……じゃあ、本当に行っても良いんですか?」

「いやどんだけだよ、そんなにオカマしてる俺に会いてぇの?」

「すっごい見たい」

「良い笑顔だな、こんちきしょーが。」


でも笑ってるし駄目って言われないから私は良いと判断しますよ?

ベッドから立ち上がり手に持ってたパペットを私の頭に乗せて寝室から出て行く坂田さんに、慌てて頭から下ろし元の場所に戻してから追いかけた。


居間に戻れば桂さんはまだ撮影を繰り返してて、沖田くんに至っては足りねぇと我儘発言。何故かモジャモジャさんの頭にはコブが出来ててこんな感じの扱いで良いんだと言われたけど、どんな感じなの。
だけど何とも賑やかな朝食にちょっと楽しいと思いながら少し冷たくなったフレンチトーストを頂いた。





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