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宅飲み参加初対面



沖田くんと飲みに行く事は多い、でもいつもの店でも家でも無く「今日は知り合いん所飲みに行こーぜ」と言ってくるから珍しいなとは思ったけど知らない人の家なんて聞いて無い。


「ちょっと待って、これ誰の家?」

「知り合いん家つったろィ。」

「いや家なんて言ってないよね? 知り合いの所って言った。てっきりお店経営してるのかと思ったよ、嫌だよ家とか、しかも男の人でしょ?」

「自意識過剰じゃね?」

「そうじゃなくて!人見知りなの知ってるでしょ!? 」

「仕事だと思ってりゃ喋れんだろ」

「いや何で職場出てまで仕事だと思わないとならないの。もー、私帰るからね。」

「却下ー、お前居ないと俺1人に何じゃん。」

「何その寂しがり屋みたいな台詞。誰? 」

「俺とお前以外年上なんでィ」

「いやいや沖田くんそんなの気にしないよね。」

「うるせェぞお前ら、人様の邪魔に何だろうが。」

「だって沖田くんがっ!」

「人のせいにすんじゃねぇや、ピーピー喚いてんのお前だけだろ」

「ピーピーなんて言ってない!」

「だからやめろってのアホ共、ガキじゃねんだから大人しくしてろ。」


仕事を片付けてから行くと言う真面目な上司が保護者のように叱ってくる。来るの早いですね、流石土方さん仕事早い。

それより沖田くんだよ、全然話にならない。このままじゃ知らない人のご自宅にお邪魔する事になる、そんなの嫌だ。


「兎に角、私は帰るからね、また今度飲も。」

「約束破んの?」

「だって知らない人の家なんて聞いて無いもん!しかも沖田くんの友達とか初めてじゃん、変に思われたくないよ。」

「人見知りだってちゃんと言ってあるから心配すんじゃねーや」

「微妙な気遣いだな…………もー、私盛り上げるとか出来ないからね、他の子にやって貰ってよ。」




───────




他の子なんて居なかった、私以外みんな男じゃん。

料理とお酒の乗ったテーブルを囲い、それなりに人数は居るのに騒がしくは無く少し賑やか程度だとは思うけども……

え? 何で私はここに居るの? ねぇ沖田くん何処らへんが俺1人になるの? いや知ってたけどね、君がそんなの気にしない事は知ってた。だけど見て、私の浮きっぷり半端無いよ、男5人に女1人、違和感しかないよね、私どう考えても邪魔でしょうよ。しかも知らない人の家とか落ち着く訳が無い、男の独り暮らしなのに綺麗だなとは思うけど、そうゆう問題じゃない。


「おなごならこのエリザベスの可愛さが分かるのでは無いかと思うのだが、どうだ?」

「可愛いと思います、くちばしとか特に!」

「そうだろう! やはりおなごにはエリザベスの可愛さが伝わるのだな!」


帰りたい、もう完全に営業スマイル張り付けた。取り敢えず相手の気分を損なわさせず上げるよう心掛けてる。私はここで何をしているんだろう、ご飯は美味しいけど。


「どんだけそのキモキャラ推してんだよ、聞いてる方が疲れるわ。」

「お前にこの可愛さが分からんのか!見てみろこの愛らしい目を!」

「ただの点じゃねェか」

「貴様ァァァ! そこに直れ!今からエリザベスの魅力を三日三晩とくと聞かせてやろう!」

「悪ぃ、テーブル開けてくれる? 皿乗せるから。」

「あっ、はい!」


料理が無くなりそうになる度に台所に消えて大皿で新たな料理を運んでくるこの銀髪さんは、コックさんか何かなの? ご飯美味しいし、だからこの人のお家でやるのかな。


「どー、それ。」

「へ、あ、だし巻きですか? 凄く美味しいです! 味染みてて何処の居酒屋さんよりも美味しいです!」

「ははっ、そりゃ良かった。」


優しいなこの人、子供みたいに笑う。
皆沖田くんの友達だし良い人達なんだろうな、突然現れた私にも嫌そうな顔1つしないし肩身狭くならないようになのか話掛けてくれるし。



「気ィ付けな。ソイツ一見社交的で笑顔も振り撒くが、そのエサに釣られた獲物を一回喰って情も無く捨てるようなヤツだぜ」

「……え、」


聞こえた台詞に ほんわかしか気持ちが一気に消え去った。
さっきの笑顔にそんなモノが隠されていたなんて……、人間不振になりそうだ。


「オイふさげんなよテメェ、情も無く捨てんのはお前だろうが、いきなりフラれたと泣きついて来たぞ」

「旦那その人どうしたんで?」

「そりゃ慰めて帰したよ」

「慰め?」

「……」


こわ、何だこの人達。顔の作りが良い人ってやっぱりそれなりに遊んでるのか、闇を見た。
早く帰りたい。






だいぶ料理も減り空いたお皿がきっと溜まってる筈、私はこの時を今か今かと待っていた。
決してつまらなかった訳ではなかったし、殆ど桂さんのエリザベストーク聞いてただけだけど楽しかった、ご飯美味しいし。だけど流石に笑顔張り付けるのが疲れて来たからもう本当に帰りたい、人見知りに知らない人の家でしかも女1人はハードルが高過ぎる、沖田くんは一応気に掛けてくれてるのか何も考えてないのか突然話振って来てくれたりするけれど、その際も桂さんが喋ってるからこれは独り言なのかと良く分からなくなりつつもやっと席を立つチャンスが来た。

と、思ったのにお皿が運ばれて行く……!何だあの人主婦なの!? ご飯美味しいしっ!


「あっ、あの、私洗いますっ」

「そー? じゃ、手伝ってくれる?」


違う!違うよ、一人で洗いたいんだよ!そして席を立ったこの勢いで帰りたいんだよ、しかも手伝うって何、二人で洗うの? 余計厳しい環境だよそれ、初対面で二人きりは更にハードルが高い、ここの人達には人見知りの大変さが分からないの?


「いえ、お料理全部作って下さったんですよね? とても美味しかったです、お手伝いも出来ませんでしたので、せめて片付けは私にさせて下さい。」

「女の子1人に片付けさせるワケにはいかねーの、それとも何、俺と二人きりになんのが嫌って?」


はいそうです。とは言えない、それにわざと言って来てる感じがする、だってニヤニヤしてるもん。



「くくっ、顔に出てんだけど」

「……意地悪ですか」

「んーや? 場を和ましただけ」


俺洗うから拭いてと布巾を渡されてあまり私の必要性を感じなかったけど、最近コンビニのデザート食った?とかバームクーヘンなら何処のコンビニが一番美味しいとか、中々に楽しい会話に気まずい事にはならなかった。

きっとこの人はモテるから女の人が寄って来るんだろう、情も無く捨てるって所が信じ難いけれど、土方さんと沖田くんみたいに遠巻きでモテるより笑顔振り撒けるから近寄って来るんだろうな。
ここに私じゃ無いもっと女の子らしい人が来てたら盛り上がっただろうに、キャピキャピと喜ぶ女性社員が目に浮かぶわ。


「よし、取り敢えず片付いた。お疲れさん助かったわ。」

「いえ殆ど何もしてないですよ、お疲れ様でした。」


何はともあれこれで帰れる、お開きになるのが何時かは分からないけど最後まで居る必要なんて無いよね。そもそも女の私が居ない方が場も盛り上がるだろう、後は上着を羽織って笑って帰ります宣言すれば良いだけ。


「銀時、酒」

「酒くらい自分で取りに行けや、って、は? もう無ェじゃねぇか。」

「金やるから買って来いよ」

「ざけんな、飲みてぇヤツが自分で行け」

「釣りは要らねぇ」


こんなに飲んだのにまだ飲むんだ。諭吉をチラ付かせ釣りは要らないとか何処のボンボン。けどこれから二次会的なものが始まりそう、丁度良い頃合いだったんだラッキー。


「つか俺1人で行くワケ? 」

「上着羽織って行く気満々のヤツ居んだろ」

「……え、えっ!? いや違っ! 」

「おなごに酒を持たせるのはどうかと思うぞ」

「余った金でどうせ甘ったるいモンでも買って来んだろ」

「なるほど、それなら軽いな」


えぇ!? 嘘でしょ私も行く流れなのこれは!? 帰る準備してただけなのに!? 今から買い物行って直ぐ帰れる? いや無理だ、何なのこの人達、男同士で楽しみなさいよ全く。


「いやぁ、私そろそろお暇しますので、ご馳走様でし、」

「風邪を引くといけないからな、特別にエリザマフラーを貸してやろう」

「………………ありがとうございます。」


誰も私の話聞いてない、桂さん凄く紳士でマフラー巻いてくれたけど、お暇するって言ってるじゃん聞いて? そこじゃなくて違う気遣いしてくれないかな、帰らせてよ。




────────





「ふぃー、寒ィ。酔いが冷めちまうな」

「本当ですねぇ、コンビニ近いですか?」

「歩いて10分くれぇ」


10分、往復で20分か。私何時に帰れるんだろう、さっきから帰る事しか考えてないよ。大勢で飲むより少人数で楽しむ派なんだよ私は、つまり疲れた。気疲れしたしもう眠い。

皆が居た室内から急にシン、と静まった外で2人の足音だけが響いてる。
友達ならば例え無言でもそれで成り立つけどこの状況は"早く帰りたい"が余計増すような状況だし話し掛けられるとビクビクしちゃう、怖いとかじゃないんだよ、ちゃんと答えなきゃと言う謎のプレッシャーやら沖田くんが連れて来た女が変な奴だったと後々に言われたら申し訳無いしで必要以上に気を張ってしまう。



「マフラーそれ恥ずかしくね? 替えてやろうか?」

「いえいえ大丈夫ですよ、エリザベス可愛いですし。」

「マジか」


どうしてそんな所は気遣ってくれるのに帰りたい気持ちを気遣ってくれないんだ。少し前を歩く身体が歩きながら顔だけ振り返って聞いてくれる謎の気遣い、コンビニ行くってなる前に私は既に上着羽織ってたよね、普通は帰るんだって思うよね。


「つかもう終電終わってんじゃん、どうやって帰んの?」

「あっ、タクシー拾うので大丈夫です」

「金かかんじゃん、泊まってけば? どうせアイツらも雑魚寝だろうし。」


いやおかしいでしょ、タクシーで帰るって言ってるんだからそれで良いじゃんか、じゃあもう帰んなって言って? 今すぐ言って? マフラー返しといてやるよって手を出して? 私が帰ろうとしてるの気付いてたんですね、なのにどうして私も雑魚寝する流れになるの、嫌だよ帰ってベッドで寝たい。


「そう言う訳にはいかないですよ、一応こう見えても女なので。あそこに居る人達がどうとかじゃ無いですからね、私なんかに何かって思う人は居ないでしょうし、そうでは無くて初対面の人達ましてや初対面の人のお家で飲んで寝るのはどうなのかなって。どうぞ自意識過剰と思って下さい。」

「わぁーってるっつの、だから泊まればって言ってんだろ。 タクシーだって二人っきりだぞ? 危ねぇじゃん、寝室に布団敷いてやるからそこで寝ろよ。」

「タクシーが危ないんですか? 」

「知らねぇ奴に家知られんだぞ、危ねぇだろ。」

「……いや、まぁ、そうかもしれないですけど、でもそれはとっても可愛い人だった場合じゃ無いですかね、そんな頻繁に問題起きてましたっけ?」

「なんだ、ちゃんと警戒心持ってんのかと思ったのに自分なんかって思ってんなら気ィ遣ってやんねぇかんな、高杉辺りに流されそうになってても、うっかり高杉が部屋に入って行きそうになっても自業自得だと無視すんぞ。」

「えっ……」


何故? タクシーが危ないとかどんだけ心配性かと思うくらいのお気遣いだったのに一瞬で突き放された。
流されそうになってもって、そんな事あるの? しかも高杉さん限定なんだ、そんな感じには見えなかったけどな、私に興味なんて持って無いと思う。
そうじゃなくて常識的に考えて初対面の男の人の家に泊まるなんて良くないでしょうよ。


「ちゃんと警戒心持ってんなら見張っててやんよ」

「えぇ、いやタクシーで良いじゃないですか」

「危ねぇだろ」

「そんな事言ってたら私タクシーもう乗れないじゃないですか、今回乗らなくったって使いますもん」

「なら近くのコンビニで降ろして貰え」

「は、はぁ、じゃあそうします。」

「今日は良いだろ、泊まれば」

「どんだけ泊まらせたいんですか」

「さぁ?」


何が、さぁ?だよ、話が一向に終わらないよ。嫌だよ泊まるの、そもそも初対面とかの問題だけじゃないからね、何も起きないのは分かってるよ常識的に良くないって言ってるんであって、どちらかと言うと身支度的な問題なんだよ。いくらお酒飲んでたって化粧は落として寝たい、でもだからといってスッピンで平気な程若くも無い。

そこら辺は男の人には分からない事情だろうけども、あんな顔面偏差値高い所なら余計嫌だよ。


「お化粧したまま寝たら肌って物凄く荒れるんですよ」

「クレンジングシートあるよ」

「……余計なお世話だと思いますけどね、そう言うの意外と気付きますからね、たった一枚って思うかも知れないですけど、結構厚みとか…………ある、から、」



これ完全に墓穴掘ったわ、



「私男の人の家に物置かないようにしてるから知らないけど」



いやもう遅いよ言い訳じゃん、経験者は語るみたいになってる。学んで止めたみたいじゃん、……そうだけど。

最悪だ、消えたい。
きっとこの人、浮気の一回や二回許せよって感じのタイプだよね、だって遊んでるって聞いたし。

物凄く恥ずかしい、涙出そう。


「違ェよ彼女とかじゃねぇから、つか居無ェし。ヅラのだよ、アイツ仕事しながら夜こっそりバイトしてんの、こっから近ェしそのまま泊まり来るから置いてあんの。」

「……バイト?」

「そー、こっち系」


そろっと見上げたら手の甲を自分に向けて口許に緩く弧を描きながら振り返っていた。何そのポーズ、オネェですか?


「……オカマさん?」

「そー言う事。」

「…………凄く似合いそう、絶対綺麗じゃないですか。」

「あれ、引かないんだ?」

「寧ろ会いたいです」

「ふーん? 俺もたまにしてるっつったらどうする?」

「え?……えぇ!? 」

「バッカ!声でけェよ!」

「っ、す、すみません」


びっくりして大きい声を出してしまい慌てて自分の手で口を塞いだ、だってたまにって、オカマさんしてるの? まさかのオカマさんのバイト。


「え、……え、めっちゃ見たい、写真無いんですか?」

「今日一番の笑顔じゃねぇか、ねーよンなモン」

「何だぁ、残念……ピンクっぽいですね」

「おー、当たり。ピンクの着物とか着る時あるわ」

「着物! えー、……何処ですか? 」

「マジかお前食い付き過ぎじゃね? 来る気か?」

「駄目ですか」

「駄目では無ェけどよ、俺そんな出て無ェかんな?」

「次の出勤はいつですか?」

「マジじゃねぇか。」


呆れた顔しながら笑われて、さっきの惨めな気持ちも恥ずかしさもどっか行っちゃった。
何も聞かないし馬鹿にもせずに流してくれた、もしかしたらこの話をしたのも話題を変える為だったのかな。



「……ありがとうございます」

「何が? つか他の奴等に言うんじゃねぇぞ、特に高杉にバレたらお前の頭も天パにしてやるからな」

「えぇ、やだ。」

「おいヤダとか言うなよ傷付く」

「ふふっ、」



結局タクシーは無理そうだからコンビニでスキンケアセットを買い、水物を全て持ってくれた横でデザートの入った袋を持つ帰り道は、だいぶ足も軽くなっていた。






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