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精一杯の上書き



途中で止まった事もありだいぶ遅れてコテージに到着し、ついた時には買い出し組も辰馬も俺達以外は全員既に寛いでいた。
質問の回収に来た総一郎クンは特に何も発する事は無く無言で自分の用紙を確認しているからそれも気になったが、それよりも先ずは、


「おいテメェふざけんなよ、変な質問書きやがって。」

「ククッ、全部答えたのか?」

「あぁ答えてやったさ、最後までしっか……り、」


あれ、最後の質問俺答えたっけ? それ処じゃ無いまま終わらなかったか? あそこまでダメージ受けて、……マジか?


「はい、高杉さんが書いたのこれです。ちゃんと口調まで頑張ったのでしっかり報酬下さいね」

「……クッ、ははっ!なんっだこれ、」


え、何? そんな爆笑する回答あったか? つか最後は?

珍しく腹抱えて笑ってる手元から抜き取った紙を見れば、最後の質問用紙の解答欄に「しゃぶりたくなるような胸してたら、そりゃーな。」って何じゃこりゃァァァァ!? 俺こんな事言って無いよね!?!? 平然と返したみてぇになってんだろ!?


「楽しそうじゃのう! わしも参加したかったぜよ。」

「日頃言えない事でもこのような形なら言いやすいからな」

「お前は素直に言えよ! 後半3つは特にな!」

「何故殴る!? 許すと書いてあるではないか! 」

「やり方が姑息なんだよ、ったく。」

「しかし、彼女も楽しそうで何よりだな。」


まぁ確かに憂鬱だっつってたし意外と楽しかったと思って貰えたのなら万々歳だ。俺は一緒に居れるってだけで楽しいであろう事は分かってたけど、思わぬ精神的打撃があったものの結果的に楽しいドライブが出来たわけだから既に大満足だしな。



・・・



その後バイキング形式の夕食を食べ、辰馬とヅラはずっと食い続けてるし高杉と大串クンはずっと飲んでるから一足先に3人で温泉に向かった。予めコテージから必要なモン持って来てるからそのまま入り口で分かれて入るワケだが、上がったらあの子浴衣じゃね? 今更気付いた、浴衣大丈夫? いや俺がね、大丈夫?


「脚とか捲れ放題じゃねぇの? 大丈夫なのか? 」

「知りやせんよ」

「胸元とかも緩んだらどうすんの? 袖もユルユルだし見えんじゃん二の腕とか」

「あぁ、胸派なんでしたっけ。そう言えばアイツ胸意外とありやすよね。」

「そうなの!? いや知らないんだよマジで、ホントに見てなかったんだよ俺全然。だって身体目当てじゃ無ぇし。」

「へぇ。いつも目立ねェ服着てやすけど社員旅行で浴衣着てた時は結構分かりやすよ、上がったら見れるんじゃねェですかィ。」

「いやいやそんなん見てたら変態だと思われんだろ、折角築き上げてる安全性が無駄になっちまうわ。」

「偽りの安全性ならあって無ェようなモンですぜ」


失礼なヤツだな、手ェ出そうと思った事なんざ1度も無ェし声聞いたり笑顔見ただけで口元緩んじまうくれぇ末期なんだぞ。

キミのように平気で触るなんて出来ねぇ、全くと言って良いくらいノータッチだからね。何度頭撫でたい衝動に駆られてもひたすら耐えてる俺の気持ちなんざ誰にも分かんねぇだろうよ。






「旦那ァ、俺先行きやすんで1人で待って下せェ。」

「いやいやいやダメだろ、俺1人はダメだろ色んな意味で。あっちも何で?ってなっちゃうし、俺も初めての姿に眩暈しちゃうかもしんねぇだろ? そんな時どうする? キミが止めてくれれば問題ないでしょうよ。な、だから待ちなさい。」

「理性グラグラじゃねェですかィ。」

「きっともうすぐだって」


温泉から上がってもコテージに戻らずあの子が上がって来るのを何とか総一朗クンを宥めながら待ってたら、数十分で本当に出て来た。
そして当然だがやっぱり浴衣だ、だけど長袖のTシャツを中に来てるらしく袖から見えてる。あれなら胸元緩んでも心配無ェな、ただ単に寒いからなのかそれとも男だらけの部屋を考慮してなのかは分からねぇけど良いと思う。
しかし胸は、うん、ホントな、気付かなかった。帯締めてるせいでどうやっても強調されちゃうんだな、ならしゃーねぇよ。


「あれ? 待っててくれたんですか?」

「いや、俺達も今さっき出た所。」

「ふふっ、そうですか、ありがとうございます。」


え、何で笑った? 即行でバレた感じ? 何で?

にしてもアレだな、やっぱ表情が最初に比べてかなり柔らかくなったよな。後たまに目が合うようになった、お礼言う時は大体こっち見るけどそれ以外だとそもそもこっち向かねぇかんな。なのに視線がちょいちょい重なるって事はやっぱ慣れて来てくれてる気ィする。


「お前上に羽織るの持って来てねぇの?」

「それがうっかりコテージに置いて来ちゃって」

「どんくせェな、取って来るからここで待ってろ」

「え? 良いよ良いよ、走ればそんな寒くないと思うし。」

「良いから待ってろ、旦那ソイツ見張ってて下せェ」

「おー」


何だかんだ優しいよなアイツ。まさか俺と二人きりにしてくれようとって事は無ぇだろうし、湯冷めしねぇように心配してんだろ? すげぇ優しいじゃん、そりゃ懐くわけだよ。

けどどんくさくは無ぇだろうよ、何を隠そう俺と総一郎クンも忘れてるワケだから。つか何処にあったよ、絶対ェ見付けづれぇ所に置いてあったんじゃねぇのか、すれ違う他の客見てその存在を知ったぞ。


「コテージ戻る前にお手洗い行っておこうかな、探してきますね。」

「おー。ここで待ってるわ、別に急いでねーからゆっくり探しといで」

「はい、ありがとうございます」


本当は近くまでついて行きたいけど男に待たれんの嫌だよな、距離近くなったかなーと思っても、あんま馴れ馴れしいのはまた違ェだろうし。


1人ソファーに座って待っていれば総一郎クンの方が先に帰って来た。俺の羽織も持って来てくれて礼言ったけど、トイレ行ってるつってんのに周り見渡して探してるっぽいからお前も十分過保護だろ。


「……いつから行ってるんで?」

「えー? そんなのチェックしてねぇよ、可哀想だろ。キミはそんなに待てないの?」

「そうじゃ無ぇでさァ、……あ、電話。」


良いタイミングで総一朗クンのスマホが鳴り、まさか迷子で戻って来れなくでも無かったのかと呑気に考えてたら、スマホに耳を当てたまま動かなくなった表情は何かを探るような真剣な顔だ。
電話なのに喋りもしねぇし身内に不幸でもあったんかな、と視線をあの子が向かった先へ向けていたらボソボソと独り言のような声を発し始め耳を傾ければ俺の予想は全て間違っていたらしい事が分かる。


「……部屋じゃねぇ、倉庫か? 声が響いたんでどっかの倉庫か何かでさァ」

「は? 何が? 」

「今連れて行かれやした、同じ階の自販機前で。」


連れて行かれたと言う言葉に、どう言う事だと疑問を投げ掛けるよりも早く足はさっきまで自分が呑気に眺めてた方角へ向かい走り出していた。
何がどうなってんのかまるで分からねぇが向かった先にトイレはあれど側の自販機の近くに倉庫なんざありゃしねぇ。
振り向いても総一朗クンはまだ居ねぇがアイツがあの子を使ってこんな悪質な悪戯をするとは思えない、1人で歩いてたあの子を何処ぞの野郎が部屋に連れ込むなんざ物騒な世の中じゃ有り得過ぎて焦る気持ちを隠し切れず、片っ端からこの辺の部屋をぶち破ろうと向かえば背後から珍しくもデカイ声が俺の足を止めさせた。


「旦那あっちでさァ! 」


従業員に倉庫の場所を聞いてたのか総一朗クンの結構な後ろから走って付いて来てるオッサンを待てる余裕も無く、指差す方へさっき同様走って向かい関係者以外立ち入り禁止の部屋だったが構わずドアを蹴飛ばせば、勢いの付いたドアが壁にぶつかる音で一瞬辺りが静まり返った。

薄暗い部屋ではあったが目を見開いて俺を見る3人の男が居るのは直ぐに確認出来き、その真ん中で馬乗りにされながら口も手も押さえ付けられてる姿が目に入った瞬間、俺の頭で何かがキレた音がした。


「……殺す」


一番最初に目か合ったのは馬乗りになってる奴だ、浴衣の合わせ目を掴み無遠慮に脱がそうとするその手を切り落としてやりてぇよ。
静かに近付いたと思ったが途中から走ってでもいたのか怯えたようなツラを向けられた、その顔面目掛けて本気で殺そうと拳を振るった。


「っ、だめ!!!!!! 沖田くん早く来て!!!!」


だが部屋中に響く程の声が俺の動きを止めさせ、殴る筈だった拳は当たる事なく顔のスレスレで止まった。その直後に総一郎クンと、近くにでも居たのか他の奴等も駆け付けて来て俺の身体はヅラと辰馬によって引き離され後ろへ下がったが、視線は奴等から離れねぇし殺意も消えしねぇ。


「コイツらどうする、殺るなら手伝うぜ?」

「絶対やめて下さいよ、何もしないで。」

「はっ、偽善者か? そこまて震えて涙すら流してもコイツらを庇うなんざ理解出来ねぇな。」

「馬鹿ですか、そんな奴等どうだって良い。今、貴方達が殴れば、私を助けてくれたのに悪者になるのは坂田さん達なんですよ。そう言う世の中なんです。」

「……ならどうする、泣き寝入りか? これが大した罪にならねェのも分かってんだろ、ここでコイツらを逃がせば後々に罰が下るなんざ甘ェ事を考えてるワケでもあるめぇ。明日からもまた普通に生活してるだろうよ、そう言う世の中だ。」

「そうです、女1人でフラフラしてた私に落ち度がある、浴衣着て誘うような格好してたのが悪い。そう言われて終わる、そんな冷たい世の中。私浴衣脱がされそうになってとても悲しかったので、貴方達も体験して貰って良いですか? 全部脱いで施設中駆け回って下さいよ、そしたら忘れてあげます。」

「ククッ、そりゃァ良いな面白ェ。」


……良い度胸してやがる。全く相手も見ずに座り込んだまま、総一郎クンに寄り添って貰った状態で良くもまぁそこまで口だけで虚勢張れるわな。

徐々に落ち着きを取り戻した俺は、総一郎クンの腕をしっかり掴み顔を隠すように寄せてる姿をただ眺めてた。
襲われかけた今も十分怖かっただろうけど、きっと連想されたんだろうな。つか多分これが初めてじゃ無ェな、だから総一郎クンは何やかんや言いつつ待ってたし自分が離れる時は俺に託した。それなのに俺が1人にさせちまったが為にこんな事になったんだ。




結局お金で許して欲しいと懇願して来た奴等にアッサリ了承して、有り金処かATMで下ろして来いと、これは総一郎クンだけどカツアゲにしか見えなかった。

コンビニが備わってる温泉だからって、貰った金使い込むのもどうかと思うが酒とつまみを買い込んでコテージに行くと本人が言うから良いんだろう。


先に他の奴等を戻らせ、総一郎クンが再び温泉入るように促し俺も迷いはしたが一緒に待つ事にした。


「前にもあったの? こーゆう事。」

「去年の社員旅行で絡まれてやした、腕掴まれた程度だったらしいですけど俺が便所から戻った時には土方さんが胸ぐら掴んでるのをアイツが止めてた時だったんで、俺が最初から動画取ってたつって脅して金巻き上げたのを真似したんでしょうねィ。今回は味方が多かったから良かったものの、声は張れてもあんな震えて泣いてたんじゃハッタリも良いとこでさァ」

「……思い出しちゃったのかな」

「でしょうね」


気ィ遣わないでついて行くべきだった、1人でフラフラ歩かせるなんざ良く良く考えりゃ危ねぇわ。
俺はあの子の身の安全より自分が嫌われないかを優先にさせちまったんだ、例えウザがられても近くまで行けば良かった。


「……そう言や、電話って自分で連絡して来たのか?」

「画面見なくても俺に電話かけれるように覚えさせやしたからね。」


それは凄いな、過保護もここまでくりゃ感心するわ。
だってよ、それ電話ってタイミング難しいだろ。只のナンパの可能性もある、けど躊躇してたら連れて行かれる。ならヤバくなる前には電話しねぇと間に合わねぇじゃん、何にもなくても電話しろって事だろ?


「すげェな……え、マジで好きじゃねーの?」

「旦那のとは違いやすよ、独占してぇとも触りてぇとも、ましてや抱きてェとも思わねーんで。ただ、あのヘラヘラした顔見てると落ち着くからってだけですぜ」

「ふーん、俺触りてぇと思うけどな。」

「だから違うんでさァ、安心して下せェよ横取りなんてしやせんし、これでも結構応援してやす。」

「え!そうなの!? 」

「車二人きりにしてあげたじゃねーですかィ」

「いやアレさぁ、なんつー質問してんのよ。あの子も怒ってたぞ、変な空気になったらどうしてくれんだ。」

「楽しくなかったんで?」

「……楽しかったけど」


カフェ行っても俺が話し掛けてるってだけでそこまで会話してるワケでも無ェしな。食ってる時は楽しそうだけど自分の事とか話してくんねぇって事はまだまだって事だろ。









「わぁ! 何このイチゴオレの山!?」

「約束のイチゴオレと無事に返金されたお礼のイチゴオレ、あと元気を出してねオレだ。他の皆も似たような物だろう」

「全部イチゴオレ……!」


バリエーション無しか、コテージに戻れば馬鹿みてぇにイチゴオレの紙パックがテーブルに山積みになってる。せめて帰ってから買ってやりゃ良いのに、こんなん飲みきれるワケねぇし持って帰んの大変だろうが。


「すっごい量ですね、嬉しいですありがとうございます! 元気を出してねオレだけ今飲もうかな、どれですか?」

「だいたいこの辺りがそうだ。因みにここから左は坂本の"わしも参加したかったぜよオレ"だ。」

「えっ坂本さんも買ってくれたんですか!すみませんありがとうございます……!」

「今度はわしも取って置きの質問考えておくぜよ!」

「そうですね! 今度は一緒にやりましょう!」


いや何を? 俺にする質問じゃ無ェよな? 心臓に悪ィしもう十分だっつの。つかいつまでイチゴオレの説明してんだよ全部同じじゃねぇか、さっさと飲ませてやれよ、さっきの今なんだからどう考えても疲れてるだろうし休ませてやろうと言う心遣いはお前らには無いのか。


「そうじゃ! おんし用にベッドのある寝室を選んだんじゃき! 1人で1階の方が寝やすいと思ってのぅ!」

「そんなお気遣いまで! ありがとうございます!」

「ゲームもあるぜよ!嫌な事は笑って吹き飛ばすのが一番じゃからのう、遊んで忘れられたら良いんじゃが」

「大丈夫ですよ、温泉入って気分も洗い流して来ましたから沢山お酒飲んでゲームして一緒に楽しみましょ」

「化粧も落ちてんな、ガキみてぇなツラして良く狙われたモンだなァ」

「はは、言うと思いましたよ。こんな私のスッピンでも可愛いと言ってくれた人ちゃんと居たんですからね」

「過去にか? 結局今居ねェんじゃ説得力なんざ皆無だろうよ」

「そんな事は無い、俺は化粧なんてしなくても十分可愛いと思うぞ」

「わしも思うぜよ!」

「わーい、嬉しいです、ありがとうございますっ!ほら見て下さい心優しい人がこんなに沢山居ます。」

「ハッ」

「腹立つ!!」


だからそうやっていちいち反応すっからから かわれんだよ。
ヅラと辰馬に宥められながらソファーに座り、何やらそのまま缶チューハイを手に持ちお楽しみ始めてんだが、完全に出遅れたわこれ。呑気に離れたテーブル席で飲んでる場合じゃなかった。


「何でアイツ直ぐ絡まれんだ? 」

「啖呵切れても目ェ合わせらんねぇからナメられんでさァ」

「いやそれ以前に何で啖呵切んなきゃならねぇ状況に陥んだよ」

「童顔でまぁまぁデケぇんで馬鹿が釣られるじゃねーですかね」

「でけぇ? 」

「土方さんむっつりの癖に見てねぇんですかィ? 割りとありやすよね、ねぇ旦那。」

「俺に振るな。」


見てない、俺は見ていない。決してやましい気持ちでは見ていない。多少、ほんの多少チラ見した程度だから。
つかコイツらはどうでも良い、俺はあっちに行きたいんだが。だけど周りに人が集まり過ぎんのもあんな事があった後だし不味いのか?


「おんし、脚に手痕付いてるぜよ」

「あー、……はは、大丈夫です、」

「……可哀想じゃのう、」

「そんな悲しい顔しないで下さいよー、坂本さんは元気に笑ってる方が似合いますよ。」

「それはおんしもじゃき」


……何してんの? ねぇ、何で太腿撫でてんの?
あのモジャモジャ野郎どさくさ紛れて太腿触ってんだけど。例え捲れて見えたとしても見ない振りか膝掛けでも掛けてやれよ触るんじゃねぇよ。
そして何故嫌がらない?つか太腿って……、しかも直だぞ!? アイツ直に太腿触ってんだけど!! 何で!?


「おいおい総一郎クンよ、呑気にチー鱈食ってる場合じゃねぇよ見ろよアレ、セクハラかまされてんぞ助けに行かなくていーの」

「アイツ俺の彼女でも何でもねーんで、酒飲みながら嫌がっても無ェのに行く必要無ェでしょう」

「いやいや、さっきの今だから怯えちゃって拒否れねんじゃねぇの? 知り合いだから言えないとかあんじゃん、行った方が良いって」

「そんなに止めてェなら自分で行ったら良いじゃねーですかィ」

「俺が行ったら不自然だろ、後でコッソリ潰しとくから」


だから行って下さいお願い行って。
つかアイツ何なんだよマジで、ふざけんなよ。俺だって上書きしてぇの我慢してんのに何で平然と触ってんの?


「そう馴れ馴れしくおなごの肌に触れるのは如何なものかと思うぞ。」

「おぉ、すまんのう。赤くなっちょるのが気になってつい触っちょったぜよ。」

「大丈夫ですよ、優しさなの分かりますから。」

「見掛けによらず意外とあるよな」

「いやそれ脚じゃないですよね、高杉さんのはセクハラにしか聞こえないです」

「金時の好きそ、ッギャアア!?」

「わ!? ……わぁ、……凄い、飛んだ、え、大丈夫ですか?」

「ほっとけあんなセクハラ野郎。」


壁に激突して動かなくなった辰馬を引き吊った顔して眺めてる、脚に目をやれば片方が捲れて見えたままだ。

俺は触れない、他のやつらと違ってやましい気持ちがある分、触った時に伝わってしまうかも知れない。無意識にでも欲を乗せて触っちまったら怖がらせちまうし警戒心にも繋がるだろう。それが怖くて触れない。

自分の浴衣の袖を伸ばして拭き取るように拭うしか今の俺には出来ない。もし、いつか俺を受け入れてくれる日が来たら、その時はゆっくり全ての記憶上書きしてやれたら良いんだけどな。


拭き終わって裾を直し肌を隠してから視線を上げると珍しくしっかり目線が重なって焦った。



「……ちょっと意外」



それだけ言って、ふっと笑った顔が、動き出した辰馬に戻り可笑しそうに笑ってる。


意外? 何が意外?

何か良く分からんが胸の奥がむず痒い感じがした。





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