現パロ | ナノ
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セコムは後のキューピッド



暫くバカ騒ぎが続き、先に休むとベッドがある隣の寝室にあの子が1人抜けた後も更に続き深夜2時過ぎにようやくお開きになった。
朝飯は各自だし出発時間は決めてねぇけど大体午後だから明日の運転にも差し支えは無ぇだろがな。

2階に大部屋の寝室があるのはこのコテージも変わらないらしく、いつもは1階に部屋なんぞ無ェから別室のあるコテージを辰馬が探してくれたんだろう。

……しかしながら、やっぱり勿体無ぇとも思っちまう。
そんな時はどうする? そりゃあ毎度お馴染みキミが居てくれれば全てが解決する。


「ねーってばー、沖田クゥン。」

「1人で行って下せェよ、あと可愛く無ェんで。」

「んな冷ェ事言うなってー、今度パフェ奢ってあげるからさ、ほらほら起きて起きて。」


一度は2階に上がり悩みはした、疲れてるだろうとか色々考えもした。けど結局は勿体無ぇなと言う自分本意な結論に至ったわけだ。でもキミが居てくれれば全てが丸っと解決だろ、俺の部屋じゃ無くてもそこまで不自然じゃない筈だ、きっといつもの事だと思ってくれるに違いない。

だから大部屋で総一郎クンの隣を陣取り、無理矢理起こせば少々不機嫌な顔をされたが一緒に行って貰わねば。






「は、……くっそ可愛い寝顔してんな毎度毎度なんなんだこいつ。」

「真顔怖ェんですけど。」


そっと忍び込んだ部屋のベッドで、シーツに顔を半分隠し目しか見えねぇけど俺ん家の枕より明らかに柔らかいからか埋まってる。横向いてるせいで何かもう頭も顔も殆ど埋まってるよ、小さな寝息を立てながら気持ち良さそうに眠ってるし、こんなん見たら真顔にもなんだろ。

それを暫く眺めてたらシーツ捲って普通に入り込み横に並び始めるからいつもながら複雑ではある。


「お前良く平然と同じ布団入れんな? マジで平気なの?」

「平気じゃなかったら旦那の応援なんてしやせんし、ましてや会わせもしなかったって会話を何千回もしやしたけどもう寝て良いですかィ?」

「あっ、ハイどうぞ。アッでももうちょい拝んどくわ。」

「……意外と根性ありやすよね、もっとガンガン行くのかと思ってやしたよ。」

「んー、俺も行きそうだと思ってたんだけどなぁ。面と向かって初めて会ったらさ、上手く言えねぇけど自分押し付けるより徐々に俺に慣れてくれて、その内自然と惚れてくれたら良いなぁって思ったんだよね。」

「ガチじゃねぇですかィ」

「ガチもガチ、一世一代のマジなヤツだからね。ゆっくりゆっくりで良いんだよ俺は、例え手に入らなかったとしても、そっちの方がこの子の幸せならしゃーねぇしな。」

「へぇ、そこまで想ってんのに今更別の男のモン咥えてんの平常心でいられるんで?」

「ハハ、」

「大人になると思っても無ェ癖に格好付けて身ィ引くのが板に付くんですかねィ、こいつ自分の為だって偽善押し付けて自己満足で身を引くタイプのドラマ嫌いですぜ。」

「……覚えとくわ」


身を引くなんざ出来るかと聞かれたら疑問だけど、ちょっと格好つけて言ってみただけなのに容赦無ェな。

実際どう転ぶかなんざ分からねぇしよ、なんせ初なんだぞ。右も左も分からねぇと言っても過言じゃねぇし、多分これが俺の初恋になる。叶うかどうかは分からない、でも無理矢理手に入れたんじゃ意味が無ぇからこの子の意思で俺を見て欲しい。



「……ん、……? …おきたく、?」

「珍しいな、途中で起きる事なんて無ェのに。」

「……んー、ちょっと飲み過ぎたみたい、」

「あぁ、トイレ? ちゃんと手ェ洗ってから戻って来いよ。」

「私、洗わなかった事なんて一度もないよ。」


背後に回って余ってるベッドに潜ってたら、か細い声が聞こえて心拍が急速に動き出した。ホント凄いね、何も感じねぇの? そんな普通に直ぐ会話出来ちゃうんだ。


「……やっぱり居る。」

「お邪魔してまーす」


モゾッと顔だけ振り向いて確認されたけど、いつも居るしやっぱ慣れてくれてた。けど、まぁ良いやって顔して起き上がる姿を眺めていると、何とも美味しい浴衣マジックが起きたのに気にする事もなく部屋から出て行ったから悶絶するくらい良いよな。


「ッ、おみ足が、……っ、」

「……」


ドン引きされてる視線を感じるけど仕方無ェだろ。だってスッゲェ捲れてたんだもんよ、寝てたんだから裾捲れんの当たり前だけど際どいんだよ。

しかしこう言う事は考えちゃいけない。頭から離れなくなっちまうし、触りたい欲が駆られる。忘れよう、寝て起きたら全て忘れよう、だから今だけ少しの余韻に浸らせてくれ。

目を瞑り、ソファーで見た脚も手痕はあれど白くて綺麗だったなと思い出していたら、暫くして扉の開閉する音が聞こえ戻って来たのが分かった、寒かったのか若干の小走りだ。


「沖田くん沖田くんっ、」

「……ん、……なに」

「外イルミネーションやってるよ!」

「知ってらぁ、さっき電気消した時見えた。」

「私は今知ったの、ねぇねぇ沖田くーん、」

「どいつもこいつも何なんでさァ、ちったァ大人しく寝れねぇんで? 」

「じゃあ一人で行く。」

「分かってんだろ、こんな時間に1人で外出んなら俺はもうテメーの心配をしねぇ。」

「だから一緒に行こうって言ってるの! すっごい綺麗だよ、ちょっとだけ、ね? ちょこーっとだけ。」

「寝みーんだっつの、そっちで狸寝入りしてる人と行けば」

「えっ、」


……え、いや俺も、え、何ですけど。俺は今さっき良からぬ妄想をしてしまったんですが、しっかり会話は聞いていたけれどね、小声だったけどバッチリと聞いていたけどね。

俺が寝てると思ったんだろうな、聞いた事の無いような甘えた声だった。わざと何だろうけどお願いする時そんな甘えたなの? とても良いと思います、俺にもしておいで。


「…………起きてるんですか?」

「……うん」

「起きてた……」


ゆっくり目を開けて顔を向けたら驚いた顔して止まり、独り言のような言葉も聞こえた。

俺の存在を知ってからこの子はまだ数ヶ月なんだ、焦る必要なんて無い。だけど何もしないで待ってたって始まりやしねぇからな、出来れば少しずつでも俺を知って欲しい。



「俺は誘ってくんねーの?」

「えっ、……でも、もう寝るんじゃ……」

「誘ってくれんなら起きる」

「…………、……いきませんか、?……イルミネーション……」

「良いですよー、上羽織っといで。」

「はいっ」


クソ可愛い、何で恥ずかしがってんの。

つか俺に惚れて貰える要素ってあんのかな、あの子は魅力ポイント沢山あんじゃん、俺あるかな。つか釣り合わないんじゃねぇのあんな可愛い子、すげぇ嬉しそうな顔して「はいっ」て言われたよ。


「顔の緩みヤベェですぜ。」

「冷たくあしらえるキミがホントに凄いと思う。」


俺には一生出来ねぇと思うわ。




・・・



「うわすごっ、あっちまで続いてる!」


外に出ればアルコールが一気に抜けそうなくらい未だ風が冷たく身体に堪える。なのに駆け足で近寄り口を開けたまま上を向いて眺めるその姿からは寒さを感じ無いくらい元気だ。


「写真撮っとこ」


ライトの光を浴びながらスマホを持ち上げ、良い撮影ポイントを探してるんだろう動く身体を、持って来てた自分のスマホのロック画面を解除してその背中へ向ける。
何か興味の引くモンでも見付けたのか横を向き笑って撮影する姿を画面越しに触れ、俺の手元にその瞬間が残った。


「坂田さんっ、」

「んー?」

「見て下さい!」


指差す先にあった光は、まさかのパフェ。流石の俺も間抜けに口開けて見ちまったわ。何故パフェをチョイスした、しかも上手いな、イチゴやらオレンジやら色取り取りで完成度も高い。


「すげェな、初めて見たわパフェのイルミネーションなんざ。」

「私も初めて見ました! これロック画面にしようかな。」


俺はお前の横顔にしたい。バレたら大変な事になるからしねぇけど。



「……俺もそれに変えよっかな」

「こっち、この辺から撮ったら苺が綺麗に写りますよ」

「おー」


同じくすんなとか思われっかなとも思ったけど、アドバイスしてくれるって事は大して気にしてねぇって事か。
こんな珍しいモンの写真を二人で使ってたら誤解されちまうかもしんねぇぞ、と思いたい所だが共通の知り合いは全員ここに居るし職場違ぇから誰も勘違いなんざしねぇわな。


「あっ、待って坂田さん私より背高いから違うんだ、苺被っちゃってる、ちょっとしゃがんで撮って下さい」

「おっ、と、……」

「ここです、ここから撮ったら苺綺麗に入りません?」


こだわりが凄い、のは良いんだ全然。それよりも顔が近ェってんだよ、んな同じ目線なんなくても良いだろうに無防備過ぎる。こんなんちょっと俺が横向きゃ触れちまいそうなくれェ近いかんね。スマホ掴んでる腕に触れ誘導してくれてるが俺のスマホ画面しか見てねぇで、こっちばっか余裕無く心拍上がってんのが腹立つから画面をスライドしてインカメラにしてやった。


「っ、びっくりした、……、もぉ、何すんですか。」

「すっげぇ近ェから教えてあげようと思って」

「いや本当ですね、すみません、苺しか見てなかった……」



この辺も別に怖がったりしねぇんだ、画面越しに目が合った瞬間勢い良く離れて距離が空いたけど、照れたように顔を背けて髪を触ってる。

シャッターは流石に押さなかった、つか押せねぇよ。自分がどんな顔してるかなんざ見たかねぇわ、確認しなくても多分見たこと無ぇ程緩みまくった間抜けヅラしてんだろうよ。


「……苺、綺麗に撮れました? 」

「いや、お前撮ったの送って。それにする。」

「じゃ、送りますね。」



先日終わった会話文の下に突然華やかな写真が投下された。他愛無い事で連絡入れようとも何度も思った、だけど結局ウザがられたら嫌だなと出来なかったから俺は結構ヘタレなのかも。
それでも俺が動かなきゃ何も進まねんだ、慎重になり過ぎんのもアレだよな。



「何かパフェ食いたくなって来たな」

「本当ですねー、もしかしたらそう言う魂胆なのかも。」

「……次いつ行く?」

「カフェですか? 今の所何も無いのでいつでも、オムライスも食べに行かなきゃですね」

「んじゃァ来週オムライス行くか、パンケーキ旨いんだっけ?」

「そうです、でもパフェ無いですよ?」

「パフェはその次って事で、再来週とか。」

「そんな連続で贅沢してバチ当たりませんかね。」


贅沢、と言う言葉に口元が緩みそうになる、俺と行くカフェも贅沢に入るんだ。

ならもう少しお前の生活に踏み込ませて貰おうか、贅沢では無く、それが日常になるように。

気を遣ってまた怖ェ目に合わせたんじゃ俺が傍に居たって何の意味も無ェしよ。


「そろそろ戻る? 身体冷えたんじゃねぇの。」

「はい。……あの、坂田さん、」

「んー、何?」


この子の口から自分の名前が出る度に心臓が跳ねる、そして俺は呼べねんだわ、女の名前を呼ぶ習慣が無かったらしい。いざ呼びてぇなと思っても何て呼んで良いのかとアホみたいに考えて、結果お前呼びだぞ。最低じゃねぇか。

コテージに向かって歩きながら返事をしたが中々続きが聞ける事がなく、もしかして照れ隠しで背を向けたけど冷たい態度に見えてたりすんのかと慌てて振り向くと思った以上に近く真後ろまで来ていて驚いた。


「……あの時、助けてくれてありがとうございました。言わなきゃってずっと思ってたんですけどタイミングが掴めなくて、……あと折角助けてくれたのに私が止めたから気を悪くしたかなって思って。来てくれて、あんなに怒ってくれて凄く嬉しかったんですけど、でも殴っちゃうと坂田さんにも少なからず非が出来てしまうので、……ごめんなさい。」

「……いや、つか何で俺の心配なんかしてんの、あんな怖い目に合ったんだから人の心配より自分だろ。そもそも、俺がお前を1人にさせたから起こったんだぞ、総一朗クンだったら付いて行ったろ、俺が上着取りに行ってればあんな事にはならなかったんだ。」

「坂田さんは自分を責める人なんですね、責任感じる事なんて何もないのに自分のせいにするんですか。私は1人で歩いてた自分のせいだなんて思いませんよ、中にシャツ着てるし温泉で浴衣着て歩いて何がいけないんですか。1人で歩いてたら襲って下さいって言ってるようなものなんですか?」

「んなわけあるか、頭おかしい奴らの言い草なんざ聞く必要無ぇよ。」

「そうですか、じゃあ頭おかしい人に遭遇したせいで起きた事ですね。怖い思いをして運が悪かったと記憶に残すのか、それとも血相変えて駆け付けてくれた人がその後も心配そうにチラチラ視線くれるのを覚えておくのか、それは私次第ですが坂田さんが気に病むのなら巻き込んでしまって申し訳無いがひょっこり浮上して1番です。」

「……血相変えて駆け付けたってやつにしようか。」

「分かりました、ならそれをずっと覚えてます。助けに来てくれてありがとうございました。」


目の前で微笑みながら見上げて来る姿を腕の中に閉じ込めたくなる。
気を遣って距離が出来るなんざ馬鹿馬鹿しい、本人が気にするなと言うのなら考えるのは止めよう。
そんな事を考えるのなら今後同じ事が二度と起こらないように気を付ければ良い、俺がこの子を守れるよう先ずはその権利が欲しい。

さっき焦らずゆっくりつったけど、やっぱもうちょい積極的に行っても平気かな。何か気付かねぇんじゃねぇかとも思えて来たし、もしかしたらちょっと鈍いのかもしんねぇ。


何事も、ある程度の積極性は必要だと考えながら部屋に戻り寝室に行けば、グッスリ眠ってる総一郎クンが当然居るわけで、何の躊躇も無くベッドに入って行く姿はやはり複雑だ。


「……ッ、つめた、つか、さっぶ、」

「外寒かったから冷えちゃった、お布団暖かいねぇ」

「いやお前身体冷てーよ、寒い。出てけ」

「ここは元々私が使わせて貰ってるベッドだよ。」

「冷てッ!? 足冷てェつの引っ付いて来んな!」

「沖田くんあったかーい」


羨ましい以外何物でもない、ねぇその布団の中で何が起きてんの? もしかして脚絡ませて来てたりすんの?


特に喜びを感じ無いらしい総一郎クンは心底嫌そうに身体を軽く起こし眉間に皺を寄せてる、隣のベッドに転がってる俺が視界にでも入ったのか視線が重なった瞬間に更に眉間の皺が深くなり面倒臭そうな顔してるけどな。


「何で起きるの。寒いんだけど、暖気漏れちゃうよ」

「あー面倒クセェ。」

「えっ、何処行くの?」


ベッドから降りて部屋からも出て行った総一郎クンに流石に俺も焦ったけど、頭を起こして扉を見たまま動かなくなった後頭部は哀愁にまみれていて可哀想だ。
もう見ないから戻って来てやってくれとすら思ってしまう。


それでも数分置かずに毛布抱えて戻って来た、2階から持って来たんだろう。


「ぐっ!? ぇ、ちょ、……っ、え、……動けない……」

「それで暖気独り占め出来んだろィ」

「いや、……ちょっ、全然動けないっ、」



可哀想に、毛布で巻かれちゃって。
ちゃんと上からシーツごと掛け布団も被せて貰ってるけど、あれじゃ全く身動き出来ねぇだろ、寝返りすら難しいわ。



「んっ、く、……ん、……んぅ……っ」

「……」

「はっ、……んん、………………」

「……何か可哀想な顔してこっち見て来んだけど総一郎クン」

「その内寝やすよ」

「……うー、…………」

「……何か凄く目で訴え掛けて来んだけど総一郎クン」

「ならそっち連れてって下せェ」

「いやそれはダメだろ。大人しく寝んなら総一郎クンだって許してくれるよきっと、良い子すんの?」

「……いいこする」


良い子するらしいからほどいてやるべく起き上がり布団を捲ったは良いが、綺麗に巻かれ過ぎてて境目が見付からない。

胴体部分を触って探すワケにもいかねぇしと思ったが見える範囲に多分無い、仕方無ェから足元から探すかと顔を向けたら爪先が出てた。いや爪先くらい出るのは当然だし別におかしい事なんてない。何の変哲も無い足の指先にすら興奮する俺、かなりヤバいわ、だけど自分でちゃんと自覚あるからまだマシな方だろ、多分。


「ひぁ、……っ、くすぐっい……」



わざとだけど境目を探すフリして指先で足の裏触ったら指がパッと開いて逃げるように反れる、つか、触っちゃった。こんなちょっと触っただけで俺の手は指先に心臓あるみてぇにドクドクし始めた、痺れにも似た感覚のまま土踏まずを撫でればピクリと反応を見せ、それが何とも理性を狂わせる


「んっ、……、ゃ、くすぐったぁっ!?」

「っ、……ぶねぇ、……焦った、大丈夫か?」

「だ、大丈夫です、ありがとうございます」

「イチャ付くならそっちでやって下せェ」


イチャ付いてはいない断じて、ただ俺が軽く飛んでただけ。マジで危ねぇよ、総一郎クンが足で落そうとした身体がベッドから落ちる寸前に反射的に腕が動き何とかキャッチ出来た。
危ねぇのはこの子じゃ無く俺だ、多分それに気付いてやってくれたんだろう、助かった、キミが居て良かったわマジで。


転がった拍子に出て来た境目からやっとほどけたが、ベットに戻りづらいのか床に座り込んだままじっと総一郎クンの背中を眺めてる姿はこれはこれで中々。


「……怒ってるの?」

「怒ってねー」

「ベッド入っても蹴らない?」

「大人しく寝んならな」


ノロノロと入り込む姿に今度は複雑より安心が勝った、んな所いつまでも座り込まれて風邪でも引かれちゃ敵わねぇしこれで俺も眠りにつける。



「坂田さん、イルミネーション付き合ってくれてありがとうございました。楽しかったです。」

「おー、俺も楽しかったよパフェ見れたし。」

「ふふっ、なら良かったです、おやすみなさい」

「……おやすみ」


いつか俺の隣でその言葉を聞ける時が来るならば、絶対ェ腕ん中閉じ込めるかんな。通路なんざ挟ませねぇ、俺結構しつけェかんな、覚悟しといた方が良いと思うぞ。言わねぇけど。





後日、きらびやかなイルミネーションに向かってスマホを掲げている姿にスマホ向けて盗撮してる俺の姿を2階の窓から盗撮されていた写真が送られて来て、ふざけんなとスマホ握り締めた数秒後にツーショットの事実に気付き誰も見てねぇのに1人口元を押さえた。


そっからはかなりアピールしまくった訳だ、これでもかってくれェ特別感出して甘やかしたのに全く気付いては貰えず、俺なりに優しくしても手応えは無く、けど嬉しそうだし楽しそうでもあったから、まぁ良いかとも思いながら未だかつて無い華やかな日々を送っていた。


時間の合間に毎日連絡するようになり全く面倒に思わないモン何だなと思いつつも、飲んで返信忘れてた日にはどうしたものかと悩みもした。だけど向こうから来る気配は無かったから素直に飲んで返信遅くなったと言えば「全然大丈夫ですよー」と共に別の話題振ってくれるし1日数回程度のやり取りだが中々の好感触で、タイミングが合った時に試しに電話してみたら聞こえた声が弾んでいて勘違いしそうになった程。


だからそろそろ意識でもしてくんねェかなと思ってた矢先に「彼氏出来たらしいですぜ」と連絡来たら、そりゃァ余裕なんざ消え去るだろ。

でも結局は勘違いつーかハメられただけで泣かせちまったけど、でももう大丈夫。
取り敢えずだいぶ耐性はついてるしゆっくりお前のペースで近寄ってくれりゃ良いしよ、焦んなくても全然へーき、つー事で末永く宜しく。





俺が名前を呼んで腕を広げれば、嬉しそうな顔して走って近寄って来んのは、まだ数ヶ月先のお話ってな。





─END─


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