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初めて対面した日から2週間後、マジでバイト先に来たのには驚きもしたし、こんな女装してる男相手に酒飲んで何が楽しいのかスゲェ陽気に飲んでるモンだから止めるのが遅れ、水に変えた時には殆んど寝る寸前だった。

最初は起こしてタクシーに乗せようとも思ったが、こんな酔い潰れてんのに1人でなんざ乗せられねぇ。
だったら俺も乗って家まで送るかと考えながら寝顔見てたら、俺はただの良い人で終わりてぇわけじゃねぇし流石に店で潰れるまで飲むのは自己責任だろって事でお持ち帰りさせて頂いた。

まぁ据え膳とは思わねぇけどな、何ならベッド寝かせた後タオルで顔支えながら化粧落としたかんね、極力触らず事なきを得たわけだ。

連れ帰った事で警戒心や不信感を抱かれても困るからソファーに転がりこの後どう展開させりゃ良いんだと考えても、まともな関係を築き上げた事の無い俺には気の利いた台詞や接し方も分かりゃしねぇ。
取り敢えず、寝てたし家知らないから連れて帰って来たっつー言い訳が無難だろうと説明内容を決め、ふと視界に見えた光に視線をずらせばカーテンから漏れてる日の光。どうやら数時間が秒で過ぎ去ってたらしい。


次の約束ってどうやってすんの? そんな単純な事すらも分からねぇんだが、つか連絡先ってどのタイミングで聞くの? あれ、ヤバくね俺、童貞か? けどいきなり連絡先聞くとか軽い感じだと思われたかねぇしな、何かサラッと聞けるタイミング無ぇかなと思ってたら化粧水やらが無ぇじゃねぇかと気付いた。

コンビニに知恵でも置いてりゃ良いのにと向かってもある筈もなく、化粧品の棚に行けば数種類並んでいて一瞬止まるが直ぐに前回買ってたヤツが分かっちまった。これには自分で自分に驚いた、選ぶとき側に居たわけでも無ぇのにちょっと見えた程度で覚えてるモンなんだな。

如何に今までの相手に興味無かったかって事を思い知らされる。
この化粧水一式が俺の部屋に並ぶ事ってあんのかな、自分の物を置いて帰らねぇ主義なんだっけ、そんなあの子が自分で俺の部屋にこれを並べて帰る未来を作る為にはどうしたら良い。
言ってくれりゃあ何だってしてやる、だけどそんな簡単に望む未来が出来上がれば苦労しないわな。

自分で作らねぇと、何をどうすりゃ良いかも分からねぇ俺にあの子は勿体無ぇとも思うが、それを決めるのは俺じゃねぇ。


そろそろ起きるかなー、なんて計画も何も立てちゃいねぇのにパンケーキ作ったら食うだろうかと考えちまう俺の脳内花畑を消し去るように、振り返ったら人が立ってりゃビビるだろ誰だって。



何はともあれアッサリ連絡先交換出来たのは有り難かったよな、お金を払う事に頭が行き過ぎてて俺とカフェ行く約束しちまってっからね。二人きりなんざ避けたいイベントな筈なのに、しかも回数制限無しだぞ。

1回目は約束通り払って貰ったけど、2回目は席を立つフリして勝手に払った、帰り際にもう払ったと言えば、は?って顔されて淡々と自分が払う為にここに来たんだと真顔で主張されたから多分物凄く頑張って来てくれたんだろうな。
最終的に店で買ったクッキーをプンスカしながら渡されて思わず笑っちまったら更にヘソを曲げられたけど、別れて少しした後に、奢って貰った癖に態度が悪すぎてとても反省してると言う謝罪からご馳走様でしたとお礼の言葉の他に『次は私が払いますので』とLINEが来たわけで、口元緩まずにはいられねぇだろ。



それとは別に月1回程度の集まりも総一郎クンが連れて来てくれたお陰で会える回数も増え、2回目はまだ営業スマイルが張り付いていたものの、今回の3回目はだいぶ高杉とも普通に喋るようになってたらしくそこは別に成長してくんなくて良かったが場の雰囲気に慣れて来てくれてるならば良しとしよう。



「名前ー! おんし来月暇かのう? 」

「え? 特に何も無いですけど、何でですか?」

「温泉に行くぜよ! 毎年恒例行事になっちょるき、一緒に行けんかと思ってのぅ。」

「ありがとうございます、でも皆さ 「おぉ!まっことかぁ!ほんならいつもより良いコテージ探しておくぜよ、心配せんで待っちょれ!」 ……いや待って待って違うっ!坂本さん違うっ、ちょっと待って下さいっ!」


可哀想だないつもいつも。
仕事があると朝飯食って直ぐに帰宅すると言う辰馬を玄関まで見送るのに立ち合えば、流れるように温泉行きが決定しちまった。
人の話を最後まで聞きやしねぇで言うだけ言って片手を上げデケェ声で笑いながら行っちまった姿を、靴を履き慌てて追い掛けて行ったがアイツ足速いし無理じゃねぇかな。

多分、皆さんで行って来て下さいとでも言おうとしてたんだろう。先にお礼を述べたから続きの台詞を遮断され決まっちまったんだ、何つーか、難儀なやつだ。


「…………一瞬で消えた、ワープしたの?」

「アイツ段飛ばしながら階段下りるから。」


扉を開けて待ってれば予想通り絶望感を背負って戻って来た。

女一人で俺達と行くのは何かと問題がある。今回も泊まってくれてはいるが出来れば帰りたいって思ってるのは分かってる、けど良いのか悪いのか押しに弱い子みてぇなんだよな。
勿論ここで助け船を出してやる事も出来る、俺が言っといてやるって言えば済む事だしきっと笑って喜んでくれんだろうな。

だがしかし、行きたいよね、二人じゃ無ぇけどそれでも行きてぇじゃん。


「良いコテージ探すっつってたし大丈夫じゃねぇの?」

「坂田さん的には何がどう大丈夫だと思うんですか?」

「ん? んー、……温泉の近くのコテージ借りてくれてんだけどよ、台所あるしいつもみてぇに朝は食いたいやつが自分で作って食って、夜は温泉の所のバイキング行って食うんだけどそこが結構旨いんだわ。まぁ風呂上がった後も一緒に居ることになるけど化粧してなくてもそんな変わんねぇし平気じゃね?」

「変わりますよ失礼ですね。そこもですけど、一番は移動中ですよ。」

「移動中? 車1台レンタルして行くわ、もう1台は土方クン出してくれっから。」

「あっ、土方さんなんですか? だったら大丈夫かな。」

「……密室だから?」

「へ? 密室? 」

「え? なに心配してんの?」

「……え、だって、途中でトイレ行きたくなったらどうするんですか、……言いづらいですもん」


そこ? いや言いなよ普通に、他の奴等だってトイレくらい行くぞ。けど男しか居ねぇもんな、そりゃ言いづれぇか。


「なら土方クンの車乗ったら? 何か言いづれぇ事あっても総一郎クンにでも言えんだろうし、俺でも良いけど。」

「んー、そうですね、でもちょっと憂鬱。」


あのメンツじゃ断然総一郎クンに懐いてるのは一目瞭然だけどよ、俺にもちょっとは懐いて来てる気もすんだよね。だってよ憂鬱ってそれ本音じゃん、玄関に俺しか居ねぇから漏れた本音だろ?
連絡するタイミングが分からずまだ次のカフェが誘えてねぇが、飲み会ん時にそれとなく話振って次に繋げちゃいるわけで自然消滅しねぇように必死過ぎでアイツらに知られたら笑われそうだ。沖田クンは多分知ってんだろうに何も言って来ねぇから俺の話はしねぇのかもな、つまり現在この子の中で俺の存在はその程度。
それでも、会話から緊張が抜けて俺に慣れて来てるんだ、進歩は確実にある。


「高杉さんが一番スッピン馬鹿にしてきそう」


してもしなくてもそんな変わんねぇと思うけどな、少し幼げにはなるが全然違ぇ奴も結局居んじゃん、元々ナチュラルなんだから大して変わらねぇだろ。失礼らしいから言わねぇけどよ。
けどまぁその言葉に否定は出来ねぇか、アイツ何かとちょっかい掛けるから、お前もいちいち反応するからからかわれるんだぞ。




━━━━━━━━━━━




向かえた当日、レンタカーに俺とヅラ、高杉が乗り辰馬は現地集合だから残りの3人が土方クン車に乗ってる。正直言えば残念でもあるが、この方があの子も安心だろうしな。


「一緒に乗らなくて良かったのか?」

「あっち3人の方が気楽で良いだろ。」

「そうか? そんなに変わらないと思うが。」


つーか不自然だろ、6人居んだから3人で分かれんのが普通だろうが。俺が向こうに乗ればきっと総一郎クンがこっちに来る事になるから余計話づれぇし大串クンと3人は何か嫌だ。


「なんだ、お前があっちに行けばアイツに助手席乗せてやんのに」

「何で俺と入れ替わりであの子がこっち来んだよ。」



それ何の為に俺あっち行くんだよ、んな事誰がさせるか。


バカの相手をしながら1つ目のサービスエリアに付き、今回は女の子が居るし全てのサービスエリアで止まった方良いとヅラが言い出したから俺としても助かった。それならあの子も気ィ遣わずに済むし止まるとヅラが伝えてたから本人も安心すんだろ。


「旦那ァ、こっちですぜ」

「え? 俺こっちなの? けどキミが居ないとあの子も寂しんじゃね?」

「アイツならあっちの車乗ってもう行っちまいやしたよ。早く乗って下せェ出発しやすから。」

「何だって!?!? 」



確かに止まった所に車が無ェと思ったけどよ、絶対ェ高杉だろ! あの野郎助手席に乗せてやがんのかクソが、ぶっ殺してやりてぇ。


「何で行かせたんだよ、お前が言えば行かねぇだろ。」

「アイツ俺の忠告は聞きやすけど別にいちいち俺の許可なんて求めてやせんよ。あっちに乗るねーっつって行きやしたんで手ェ振って見送りやした」

「何でだぁ、止めてくれよそこは。何吹き込まれんだか分かったモンじゃねぇよ。しかもアイツらと3人って大丈夫なのか? 心細いんじゃねぇの?」

「旦那過保護過ぎやせん? それにだいぶ慣れて来てやすし笑いながらあっち行きやしたよ」

「ちょっと待て高杉に惚れるなんて事ァ無ェよなぁ」

「それは知りやせんけどタイプじゃねーと思いやすけどね。」

「タイプ知ってるの総一郎クン!! 何それどんな!?」

「優しい笑顔を向けてくれる人」

「ぐっ、……厳しい、……もっと金持ちとか分かりやすい方が良かった、いやそれも無理だけど。優しい笑顔ってどんなの、俺の顔は? 俺の笑顔はどうなの? つか俺笑えてる?? 」

「よくニヤニヤしてやすよ」

「ダメじゃねぇかッ!! 」


それはどう考えても優しい笑顔じゃねぇよ、変態的な笑みだ。優しい笑顔って何、それって練習すりゃ出来るようになんの?



「はぁ。キミの笑顔は優しい笑顔なの?」

「俺がタイプじゃねぇと言った直後に言って来たやつですぜ」

「マジか、俺からしたら優しい顔して見てんのにな。えー、分かんねぇな、俺圏外だったらショック。」

「流石にそれは無ぇでしょう、シフォンケーキ食った相手って旦那ですよね? 楽しそうに話してやしたよ。」

「えっ、マジでか。」


シフォンケーキって先週じゃん。結局あの集まりの時に話振ったらシフォンケーキに食い付いてくれたからそのまま約束すんのに成功したが、あんま連絡してウザがられても嫌だから本当はマメにしたかったりするけど出来てない。
人見知りって言うだけあって会話もそこまで無ぇし、俺的には見てるだけでも楽しいから良いけどあっちが気まずく感じちゃ意味が無ぇから世間話をぽつらぽつら程度にしてる。
逆に話し掛け過ぎで嫌がられても困るとも考え始め、俺は今までの人生どうやって生きて来たのかも良く分からなくなる始末。

だから連絡は時間と場所の確認程度で簡易的なやり取りだけだし、それでも楽しみにしてますの言葉に喜び、旨そうに食ってる顔見てるだけで腹も胸も一杯になったが、帰る前にお手洗いに行くと言って席を立った隙に金を払い終えとけば「私が払うって言いましたよね。」と静かに苛つかれ前回以上にご立腹だったけど、可愛い顔が台無しだぞと指摘すると一瞬フリーズしたものの負けじと反発して来てたら周囲から痴話喧嘩かとヒソヒソ聞こえ始めたのを教えてやったら耳赤くしながら膨れてた姿に、ニヤ付く顔を抑えられず更にご機嫌斜めでも解散した後はご馳走様でしたとお礼のメッセージを送ってくれる。

……鮮明に覚えてる、え、何ならあの子の台詞全部覚えてるかも、やべぇよ俺気持ち悪いわ。

にしても知らねぇ所で俺と会った時の話題上がってたとなりゃかなり嬉しい。


「あー、次は一緒の車乗りてェなぁ」


もうどんなメンツでも良いから同乗したい。つか俺以外全員同乗済みとかおかしくね?





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