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私のヒーロー



(注※会話の内容に少々DVな要素あります)








社員旅行から3ヶ月経ち、沖田くんは宣言通り動いたらしく今じゃ女性社員が彼にまとわり付く事が無くなった。何をどう動いたのかは分からなかったけど、聞いても口元上げながら思い出し笑いでもしてるのか怪しげな笑みが怖過ぎたから気にしない事にしてる。

それでも遠巻きで見られてる事には変わり無く、社員旅行以来度々飲みに行くようになった私が少々当たり強くなるのも仕方がないと思ってたけど、それもやっとここ最近落ち着いて来てくれて助かった。


「それお前の仕事じゃねーだろ、また苛められてんの?」

「いや違うよ、てか別に苛められてはいないからね」


ちょっと風当たりが強かっただけ、仕事分担が面倒系のが多くなったり厄介なのが回って来る回数が明らかに増えてたから、まぁそうなんだと思ってた。だけど今までも定期的には回って来てた仕事だしネチネチした嫌がらせとかは無かったからマシだと思い、誰かがやらないとならない仕事だから文句は言わなかった。
それでも最近は少なくなってきたから付き合ってないって納得したみたいで普通に話し掛けて来るようになったんだよ。

ただね、私指定の仕事が増えたのよ、それも面倒な案件の。そりゃ頑張ったけども、面倒な仕事増えたら多少は腹も立つし余計頑張ってやりきったよ、それを評価してくれたらしいし勿論断るなんて出来ないからこれもやるしかないけどさ、仕事の量も増えたんだよ。年末の特別手当てに色付けるって言うからそれを糧に今頑張ってる、だからそんな溜め吐きながら急かさないで。


「これ終わんないと私の次の仕事が進まないの、でも他にもやる事残ってて手が付けれないんだって。だったらいっそ私がやった方が早いでしょ。」


やる事詰まってるんだから仕方無いとは言え、終わらせてくれないと私の仕事が進め無いとなるとやっぱり心がせっかちになって苛々しちゃう。
なら自分でやっちゃえば彼女は他の仕事に集中出来るし私も自分が頑張れば早く終われるし一石二鳥だもんね。面倒なのはさっさと終わらせてスッキリしたい。


「ならそれ仕上げたら終わりな、その後飲みに行くからそっち30分以内で終わらせろ」

「えっ、手伝ってくれるの? 悪いし飲み明日は?」

「今飲みたい気分なんでィ。無駄話してねーで手ェ動かしな、俺より遅かったら罰ゲームな」

「何でだよ!」


でも手元に残された私の分より多く持って行ってくれたのは分かる、ならこれで沖田くんより早く終わら無いのはおかしい。けども!早いんだよォ!普段サボってギリギリに終わらせる癖に実は滅茶苦茶出来る子とか狡い、前に問い詰めたら早く仕上げたら他の手伝わされるから時間調整してるらしい、賢いよね。私はさっさと終わらせたいから真面目に取り組んで終わったら手伝わされてるわけだから本当賢いと思う。ズル賢いと言う意味で。


「っ、よし終わったぁ!」

「俺も終わった」

「早っ! でも助かったー!ありがとうっ、今日は私が奢るね!」


お会計は最初沖田くんが適当に私にお札を渡すから割り勘になるように払って残り返してたけど、途中から面倒くせェと言われ残ったの次にでも回せと受け取ってくれなくなった。そして次もまた渡してくるから所持してる沖田くんのお金がどんどん増えてきて効率が悪く、以前ネットで見た第3のお財布を用意してお互い同じ額入れて使うって言うのをやってみたら滅茶苦茶便利だったんだよ。
沖田くんから渡させる額と同じ分だけ私も入れれば良いだけだし、多くなったら入れるの一回ストップすれば良いから管理もラクでお互い負担掛からなくて気兼ね無く飲める。

そしてこうやって奢りの日は第3のお財布の出番は無しで自分のお財布から払えば良いから、考えた人本当凄いと思う。


「いちいち割り勘しねぇで差額だけ払っちまえば良いのに、クソ真面目過ぎて損してんぜお前。」

「何で損してるの? 別に食べてる量も飲んでる量も私が明らかに少ないとかないじゃん、しかもこれ凄く便利だよ、貯金箱みたいに少しずつ貯まっていくの、そのお金でコーヒー店行ったら自分のお財布から出さない分、得した気分にならない?」

「まーな」

「便利だよねー、時と場合と相手にも寄るけど私達にはピッタリだった」

「ただ財布が邪魔だろ、それいちいち持ち歩いてんだろィ?」

「小さいの選んだから大丈夫ー」


平日でも結構人が居るのは平日限定メニューが多いから、串ものも勿論美味しいけどそれ以外も文句無しで美味しい


「だし巻き旨ーい」

「高確率で食ってんな」

「だってふっくらしてて美味しいじゃん」

「つーか、彼氏束縛強い系?」

「ん? なに突然」

「最近やたらとアクセサリー付けてんだろ、それ買って貰ったモンじゃねーんで?」

「あー、そうね、確かに今まで全然付けてなかったわ。これ束縛なのかな。」


好きなの選んで良いって言うから選んでるの私だし、ただ職場にも付けて行って欲しいとは言われてるから出来るだけシンプルなのを選んでる。
特にアクセサリー禁止の職場じゃないし、他の人達は結構付けてるからピアスしか付けてなかった私が寧ろ浮いてたくらい。だからたまには良いかなって付けてる。

ピアスも買ったのを付けてと言われ、ブレスレット、ネックレス、髪のバレッタもそう。指輪も付けてと言われたからピンキーリングを選んだ。


「腰に手痕すげェけど」

「え!? 」

「やっぱ? そこまでガチガチに自分押し付けて来る奴ァ大抵夜も自己主張が強ェって決まってんでィ」


カマ掛けられた、そしてまんまとハマった。その辺はあまり聞かれたくないよ、当人同士の問題だし。


「隈、それ仕事じゃねーだろ」

「……その辺は、アレだよ、デリケートな所だからさ、そっとしといて下さいな」

「束縛アイテム増えるくれェならどうでも良かったけど、隈出来てんなら流石に気になるんでィ。仕事みてェに何でも受け入れてんの?」

「いやぁ、……うーん、…………嫌だとは、言ってる…………けど、んー、やっぱ当人同士の問題だよこれ、もうちょい様子みる。その内落ち着くかも知れないし」

「ふーん、精神までやられんじゃねーぜ」

「ははっ、流石に大丈夫、ありがとうね。」












休みの前日は泊まりに行く事が多かったけど、段々と行きたくなくなって休みに近付くにつれて無意識に溜め息が漏れるようになったのを、沖田くんに指摘されてから1ヶ月は経った。
付き合ってだいたい半年 ……いや8ヶ月くらいかな、落ち着く処か悪化する一方で流石に耐えられなくなってきた。本当は今日は1日一緒に居る筈だったけど、ちょっと無理で起きて早々適当に理由付けて帰って来ちゃった。

大丈夫かと凄く心配してくれて笑って"またね"って言って来たけど、もう"また"なんて要らない。もっと嫌な人だったら、暴力でもふるって来るんだったらこんなにも悩む事は無く別れると言う選択肢を選べたのに、優しいからもうどうして良いか分からず身も心も疲労が溜まって来てる。

特別それ以外に不満は無いし、私に優しくしてくれるのも変わらない。アクセサリーが束縛アイテムなのだとしても、私に選ばせてくれて、うっかり付けるの忘れちゃったからって怒ったりもしない。
何よりお金を全部払ってくれてるんだよね、アクセサリーだけじゃない、服も鞄も食事も何もかも、私に凄くお金を費やしてる、だったら私だって何かしないと不平等だよね。


「……名前? …………何してんでさァ、だから言ったろーが、精神ぶっ壊れるまで我慢すんじゃねェや」

「……………つかれた、」

「バーカ」


家に帰ろうと思ったけど歩くのも疲れて公園のベンチで休んでる所に沖田くんが現れた、休日に会うの珍しいな。

乱暴に頭をぐしゃぐしゃに回されて下を向いた瞬間ボタボタとスカートに落ちた涙が染みを作るのをただ眺めた、小さい跡から大きな跡までどんどん増えて、それを見てるだけでも具合が悪く、


「ぐっぅ!? 」

「ぶっ細工なツラ、飲みモン買って来るから戻って来るまでに拭いとけよ」

「っ、……」

「返事しろィ」

「うぅっ!っ……っぁぃ、」


乱暴過ぎないかな、仮にも泣いてる女だよ私、思いっきり片手で両頬鷲塚んで顔上げさせられたし力強いから物凄く痛かった。涙引っ込んで違う涙出そうになるくらい痛かった。…って、戻ってくる、早く拭かないと。


隣に並んで座りペットボトルのお茶をくれた沖田くんは「で?」とやはり聞いてくるよねそりゃ。
だけどとても話づらい内容なんだよ。


「手首、痣んなってんぜ」

「っ、」

「……乱暴されてんの?」

「いや、ちっ、違う、ら、乱暴とか無いし普段は優しいの凄く」

「あぁ、激しいんで?」

「っ、………んと、……そ、れも、あるけど、…………何か、は、恥ずかしい事、してくる、……から、」

「……あー、まぁ、何と無く分かった。お前は嫌だって、ちゃんとしっかりハッキリ言ってんの?」

「……言ってる、つもりなんだけどね、……でも、私が良さそうにしてるって思ってる。気持ち良さそうだねって、言われるから。……そうなのかな? 私、そんな顔してるのかな? なら、何でこんな気持ちになるの? 何で、こんな虚しい、惨めな気持ちになるの? 嫌だって言って、何で喜んでるって思うの? 何で気持ち良すぎて泣いてるって、思うの……っ、やめてって、言っても、全然聞いてないし、手、っ縛って……っ、」

「別れない理由は?」

「っ、ふっ、……っ、だって、普段、優しくて、それだけなんだもん、私に、お金沢山掛けてくれてて、なのに私は何も我慢しないとか、おかしいじゃない、」

「お前ソイツに身体売ってんの?」

「は、……は?」


言われた言葉を理解するのに時間が掛かった、濡れたスカート握り締めて下向きながら喋ってたけど間抜けな顔して沖田くんを見たと思う。


「物買って貰って、その代わりに夜の相手してんだろ。お前今我慢しねェとっつったぜ、我慢してヤらせてんだろ? 欲しくも無ぇモン勝手に買い与えられて、それに勝手に罪悪感作って。部屋に行けばヤられんのは分かりきってんだ、しかもそこまでくりゃァ嫌な事やられんのも分かってんだろ? なのに行ってんなら嫌だも止めても只の口先だけでィ。」

「……普通にしてくれる事はないの、嫌がってるんだから、こう言うの嫌なのかって、ならないの?」

「甘ったれんな、普通でヤれんならとっくにやってんだろ。本気で泣いてるかくれェちゃんと見てれば分かるつーの、そうしねぇのは善がってると勘違いしてる馬鹿にその能力が無ェからでさァ。そんな奴に何期待したって甘ェんでィ、そろそろ薬盛られんぞ」

「……え?」

「お前の身体が勝手に善がるような薬ってのが世の中には存在する、お前ぶっ壊れんぞ。」

「……」


身体が震えた、怖い、そんな事しないなんて、とてもじゃないけど言えなかった。そんな薬があるなら……でも、そんな理由で別れる事出来る? だって私が良いと思ってるんだよ。


「取り敢えず、お前に別れる気があんなら今からカフェ行くから。どうすんで?」

「カフェに行く意味がちょっと分からないんだけど? 私顔ぐちゃぐちゃだし、化粧取れかけてるだろうし行きたくないよ。」

「ならぶっ壊されてオモチャみてぇになっても俺はもう知らねぇ、監禁でもされて朝から晩まで犯されてな。」

「こっ! 怖……っ、こわいっ、行く、カフェ行く。」

「んじゃ立ちなせェ」


カフェに行く意味は分からないけど立って直ぐ歩き出す沖田くんに慌ててついて行った、だって置いて行かれたらとんでもなく恐ろしい事になりそうで、否定出来ないから余計怖い。



サクサク歩いて近場のカフェに入り普通にケーキ頼んで食べてる沖田くんは謎過ぎてもう何も分からない。ケーキは美味しいけど。


「……はぁ、ケーキ物凄く美味しいね、もう何もかも忘れてケーキ食べ続けたい」

「豚になんぜ。」

「うん、まぁ、そうなんだけどね。只の現実逃避なんだからリアルな現実突き付けないで。」


しかもさっきからスマホ弄くって何なんだ、ケーキに失礼じゃんか、もっと良く見て味わって食べてよ。


「ねぇ気になるんだけど、スマホ置いてケーキ食べてよ」

「さっきまでピーピー泣いてた癖にもう元気になったんで? だからそんな長い事犯され続けたんだろィ」

「慰めてくれる気は無いのかな? 傷口抉ってるんですけど。」

「慰めて何になるんでィ」

「何にって、私が元気になるでしょうよ」


なんだよ、さっきまで心配してくれてたじゃないか、言い方はややキツかったけど沖田くんの優しさ何だとはちゃんと伝わって来てたのに今は全く分からない。


「そもそも何でカフェ来たの? ケーキ買ってくれる為? 嬉しいけど。」

「来た」

「はい? 来た? 誰?」

「約束ってソイツとだったんだね」

「っ!?」


え、……何で、ここに?

さっきまで一緒には居た、この人が、何でここに


「仲良いって言ってたもんね、二人で飲みに行ったりもするって。俺があの時許可しなければ、きっと二人で会う事もしなかったんだろうね。名前は優しいから。」

「……」

「俺さ、考えたんだけど養うくらいの収入は十分あるし、まだ付き合って8ヶ月と3日なんだけど、俺と結婚しよ? 専業主婦になって、ずっと俺の傍に居て欲しい。子供も作ってさ、温かい家庭作ろ?」


………………何が起きてるの? こんな不快なプロポーズってある? こっちの意見とか何も聞かないで凄い押し付けて来る、専業主婦限定で傍に居るの? 子供って、貴方との子供? ごめんなさい、いらないわ。温かい家庭なんて作れる筈ない、息が詰まって窒息死しちゃう。……あ、私この人の事好きじゃないんだ、ずっと傍に居ると窒息死するとか流れるように思った。

そう言えばさっき沖田くんに身体売ってるのかって言われて、あれホントだとか納得しちゃったし、もう駄目だこれ。


「……しません。」

「えっ、なんで?」

「ごめんなさい、私仕事辞めたくないし専業主婦になる気もないし、……ずっと思ってたんですけど、私、あの、するの好きじゃないんです……」

「未だに恥ずかしがる所とか俺好きだよ」


やっぱり、私の嫌なんて何も届いて無かったんだな。
恥ずかしがってるんじゃない、嫌なんだよ、したくないし、そもそも触られたくないんだよ。


「独り善がりならダッチワイフでヤってれば良いんじゃねぇんで?」

「あ? テメェに話してねぇよ」

「……ん? 」


なんだ今の、誰? 誰が喋ったの? そんな低い声出せたの? 突然豹変したよ、怖い顔して沖田くんを睨んでるこの人、え? 誰??


「大体テメェが吹き込んだんだろ? 今まで問題なく来てたのにいきなりこんな事言い出すのも余計な事吹き込んだからだろ。」

「え、いや、あの、沖田くんは何も関係ないですよ、しかも問題は、さっきも言ったんですけど前からずっと思ってたんです」

「大丈夫だよ、もっと良くしてあげられるから。」

「……いや、……私、もう出来ない、……別れて下さい、私、耐えられないんです」

「大丈夫だって、オモチャとか買ったからさ、きっと好きだと思うよ。」

「……、わた、し、……」

「アンタ、元妻居やすよね。」


息が苦しくなって、胃から込み上げてくる吐き気を何とか浅い呼吸を繰り返して気を紛らわせてたら沖田くんの声が聞こえ、顔を上げると見た事無いくらい怖い顔して側に居るこの人に視線を向けていた

バツイチだったんだ、知らなかったな。


「子供2人連れて逃げられたそうじゃねェですかィ、その元妻が随分とコイツに似てるみてェで。コイツの事ちゃんと見てやした? 犯しながら誰の事考えてたんで? 目の前のコイツ泣いてんの気付いてやした?」

「……」

「見なせェこのツラ。オモチャに喜んでるってツラに見えるんで?」


沖田くんが私の顎を掴んで勝手に動かすから目が合った、そう言えば久しぶりだ、私、全然見れなかったから目なんて合わなかったもの。

だけど目が合った瞬間、悲しそうな顔をしてこの人が下を向く事で視線が直ぐに途絶える


「……ごめん、」

「え、」

「君を傷付けたね、……全然似てないよ、君は君だ。傷付けた分、これから取り戻せたらと思うけど、もう無理かな」

「ごめんなさい無理です」

「そっか、分かった。ありがとうね……、もし考えて気が変わったらいつでも連絡してね。」


気が変わるなんて何があっても無いよ。

……何だか思ってもみない展開で、驚いた。もう私ダメだと思ったのに、逃げれないんだと絶望すらした。


「……ありがとう沖田くん、調べてくれてたんだね。どうやって調べたのかとても気になるけど本当にありがとう。」

「元妻が逃げたのも同じ理由でさァ。」

「学習能力無いのかな、でも子供も居たんだね」

「わざとゴム破いて装着したらしい、計画的に無理矢理妊娠させて結婚し子供人質にして離婚させなかったんだと。」

「……」



吐き気に襲われ、その後暫く続いたから、まさかと思っても調べたけど違った。一応病院にも言ったけど精神的なモノだと、妊娠とかそう言うのでは無かった事に安心して1人で泣いた。

沖田くんが居なかったらと思うと、私はどうなって居たのか分からない。でも記憶から抜けてはくれないらしく、吐き気は数ヶ月続いたし、時々思い出しては震えた。

それが落ち着いたのは、やっぱり沖田くんのお陰だった。





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