トリップ続編 | ナノ
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「沖田くん!」

「お疲れ、配達行きやす?」

「うん! お帰りっ!」

「ただいま。」


お昼頃迎えに来てくれた沖田くん、大丈夫だと思っていても顔を見てようやく安心出来、少し笑って言ってくれる「ただいま」は、いつ聞いてもホッとする。


「怪我は無い?」

「ありやせんよ、割りと早く終わりやしたし。」

「そっかぁ、良かったー。」

「昨日斬ってる時に思い出しやしたが、何で乗って来たんで?」

「斬ってる時に何でそんな事思い出せるの……、雑誌にね、ドSがされて嫌がる事ランキング載ってて背中に座るがあったから気になって座ったの、ごめんね。」

「ただの素朴な疑問でィ。ふーん、まぁ、確かに。けど相手によりやすね。」

「それ銀さんも言ってた。私、許されるの?」

「別に何とも思わなかった。」

「許された。 ドSだからって一概には言えないんだね。」

「んー、アンタにされて嫌な事ってんならありやすけど。」

「えっ!? なに?」

「触るなって言われんのは堪えやすね。」

「それは無いから大丈夫だよ。」

「他は無ェな。」

「え? そんな事無いでしょ、されて嫌な事ないの?」

「アンタ限定って意味では特に無ぇでさァ。 あぁ自分の身ィ犠牲にしようとしたらそれなりにしやすけど、されて嫌な事は思い付きやせんよ。」

「ん、?……何だろ、それなりに、何だろ。何するんだろう。」

「何でしょーね。」

「……気を付けよ。」

「そうして下せェ。」


笑顔が怪しいよ沖田くん。




配達を済ませ目的の場所に付くと丁度プラネタリウムの上映時間でタイミングが良かった。
全然ミニでは無くずっとやってたら良いのにって思うくらい綺麗で、銀さんと見た星を思い出した、また行きたいって言ったら連れて行ってくれるかな。


「これ金平糖だね」

「小せェし星に見立ててるんでしょーね」


雑誌で見た流星ソフトは小さい金平糖が散りばめられて沖田くんの言う通り星に見立ててるんだと思う。


「お土産これにしようかな、金平糖。」

「売店見に行きやすか。」

「うん、そう言えば神楽ちゃん明日お姫様の所行くって言ってたし多めに買って持ってって貰おうかなー。」

「げ、マジか。チャイナ来るんで?」

「あっ、沖田くん警備なの?」

「そうでさァ、将軍様の方だけど。アイツ来ると騒がしくなるから面倒くせェ。」

「でも楽しいでしょ?」

「骨折レベルでやられやすよ。」

「お、おぉ、ハードだ……」


じゃれあうにも程度が必要だよね、骨折は困る……




一周回って休憩スペースに戻って来た。
何と休憩スペースまで凝っていて、プラネタリウム程じゃないけれど薄暗い中、天井に沢山の星が光っている。それを見上げて休めるように設置されている椅子は少し後ろに倒れる仕組みらしい。


「こんな休憩スペース近くに出来ないかな。」


あの時見た夜空には負けるけど、それでも綺麗。
静かだしこうゆう空間なら天気悪くてもお手軽に来れるし良いと思うんだけどな。


「すみません、次回考案の為に写真撮影をしてるんですがご協力お願い出来ませんでしょうか?」

「えっ、写真ですか、どうする?」

「俺はどっちでも良いですぜ」

「あ、じゃあ、はい。また開催されるかもしれないって事ですよね?」

「ありがとうございます!評判が良ければ次回の開催に繋がりましてその資料になります、写真を使わせて頂く事がありますので、お顔を隠したシルエットを撮りたいのですが、先程の様に寄って頂いても宜しいですか?」

「寄る?」

「恋人をターゲットに呼び掛けようと考案資料を作りますので。」


そう言って離れて行った女性に困惑を隠せない。


「えっ待って分からない、どうすれば良いの? 先程って何してた?」

「分かんねー。あっちでガッツリちゅーしてる奴らは居やすけど。」

「これ人違いされたんじゃない? 」

「放って置きやすか、あっちが勝手に頼んで来ただけだし。」

「恋人だと思われたのかな、手繋いでるもんね。私言って来、」

「ありがとうございました! 折角ですので記念にお写真現像して参りますので少々お待ち願えますか?」

「へ? あ、はい。」


え、終わったの? いつの間に写真撮ったの?


「……何だったの。」

「あ、天井変わった。」

「え! 本当だ!」


私だけ身体を起こして去った女性を呆然と見つめてたら、繋がったままだった手が引かれて倒れてるシートに背中が付き天井が見える。
さっきまでは良く見かける夜空のような星だったのに、今は所々に星が凝縮されてて星団になってる。肉眼でここまで鮮明に見える事は無いし本物の星みたい、画像では無く星の輝きも一つずつ変えてるみたいでとても綺麗。


「凄く綺麗」

「……今度、武州行きやすか。あっちの方が田舎だし、星も良く見えやしたよ。」

「沖田くんの故郷だっけ? 」

「そうでさァ」

「そっか。うん、行きたい、今度一緒に行こう。」


こてん、と私の肩に頭を置いていた沖田くんの顔が上がり困ったような顔をされた。
誘ってくれたのは沖田くんなのに、何でそんな顔をするのかと疑問を口にする前に話を変えられて聞きそびれてしまったけど、わざとな気がするから取り敢えず気にしないでおく事にする。

何気ない会話を続けながら変わる天井の星を眺めていると先程の女性が現像した写真を持って来てくれて、お礼の言葉と一緒に渡された。


確かに顔は上手い具合に隠れている。けど、


「……こんな近いの私達。」


二人掛けの椅子だから必然的に隣同士距離は近いし、天井が見れるように背もたれが倒れる。手を繋ぐなんて最早日常だし恋人繋ぎだけどそれも今更。
だけど、こんな顔近付けてた? お互い顔を横に倒して向き合って話してるから、前髪同士が触れるくらい近かったらしい、話してる時は気付かなかったけど改めて客観的に見ると近いわ。
しかも二枚目なんて沖田くん私の頬触ってように見える、正確には垂れた髪を避けてくれてただけなんだけど写真だとそんなの分からない。


「……これは、……近いね。」

「不満なんで?」

「そうじゃなくて、端から見たらこんな近いのかと今更気付いた。」

「顔上げて下せェ」

「え? 何?」


言われて写真から顔を上げても、じっと見つめられたまま沖田くんは何も言わない。
訳が分からなくて首を傾げたら目の前で揺れた顔がコツンと額にぶつかった。


「ん?」

「分かりやせん? 」

「………………近いね。」

「そう。どう思いやす?」

「どう、と言うのは?」

「俺はアンタが言って来ねぇ限り自分優先させやすから。」

「へ? 何の話?」


答えは返って来ず顔が離れて疑問でいっぱいな表情をしているであろう私は、繋いでる手に引かれるがまま足を動かして外に出た。




今日の沖田くんは何だかいつもと違ったけど何も分からないまま帰りに食材の買い物まで付き合ってくれた。

別れ際に離れる筈の手を握り止めると、「変な勘違いはしないで下せェよ」と言われたから何処かに行っちゃう訳では無いらしい。

何も無ェならそれで良いんでさァ、と最後まで意味が有りそうで分からない言葉を残し手を振り返すも疑問が残りモヤモヤする。


けど取り敢えず気持ちをリセットしよう、だって楽しかったもん。沖田くんは何か有れば言ってくれる、だからそこまで考えなくて大丈夫なんだと思う。
帰宅してお土産の金平糖を渡すと神楽ちゃんが思った以上に喜んでくれた。女の子だもんね、瓶に入った色とりどりの金平糖を眺めて凄く嬉しそう。


「こんぺーとー綺麗アル! そよちゃんの分までありがとうネ! 」

「そんなに喜んで貰えて良かった、明日の警備沖田くんらしいよ。 」

「げ、何でサドアルか。アイツ来ると煩いから嫌ヨ。」

「二人とも若いから元気有り余ってるんだろうね、骨折しないようにね。」

「いや喧嘩自体止めましょうよ、骨折って結構重症ですよね。」

「絶対痛いよね。」

「え、痛みの心配ですか?」

「想像を絶するよ、骨が折れる痛みって。」

「まぁ、そうですけど、……名前さん時々観点ズレてますよね。」

「えっ、」


哀しそうな顔をした新八くんにも金平糖を渡しジャンプ読んでる銀さんにも渡した。
その場で直ぐに食べ始めた銀さんが金平糖を指で摘まんで口に入れる姿が異様に可愛く見えたのと、瞬時にパー子ちゃんが思い浮かんで絶対金平糖似合うって思ったけど言わないで頭を撫でたら、若干引いた顔して見られた。私どんな顔してたんだろう。


「楽しかった?」

「うん! すっごく綺麗だった、でもやっぱり銀さんと見たあの星の方が圧倒的に感動した。プラネタリウム好きだけど、本物の星空には負けるよね。」

「ふぅん? また行く?」

「行きたいっ!」


お願いする前に言ってくれて思わず自分でも分かるくらい弾んだ声が出る。
隣に座って見上げると「本当狡ィ奴」と言いながら頬に触れた大きな手が親指で唇に触れた。その瞬間に気付いた、沖田くんの言わんとしていた事に。


「どうした? 」

「ううん、何でもなーい、ご飯作って来るね。」


こればかりは私は狡い女で居るしか無い、……いや私ずっと狡いよ。今までもずっと銀さんの気持ちに応え無い癖に傍に居る狡い環境に身を置いてたんだ。

私最低だな。なのに何で皆私の傍に居てくれるんだろう。




新八くんが帰るのを見送り今日はスナックの手伝いに行った。
先に寝ててと銀さんに言いはしたけど、きっと迎えに来るだろうなと思ったら案の定来てくれた。
いつものようにシャワーを浴びて多分まだ起きてるんだろう銀さんは、どう思ってるのかなんて絶対聞かないけど沖田くんが恐らく気にしてるからそっちは何とかしないと。

髪を乾かすのが面倒で脱衣場で座り込みボーっと考えてたら扉が開いて見下ろされた。


「何してんの。」

「……休憩?」


入って来るとは想定してなかったから間抜けな顔して銀さんの顔見てたと思う。

無遠慮に入って来て何をするのかと思ったら、徐にドライヤーを持ち私の後ろにしゃがみ込んで熱風を掛けてくれた。


もしかして、私はまた同じ事をしているのだろうか。与えられる温もりに甘えてるんじゃないの?
ちゃんと返せてる?


「おら終わったぞ。」

「ありがとうございます。」

「別にそこまで気にして無ェから余計な事考えんな。」

「……え?」


顔を上げれば横にしゃがみ込んで自分の膝に肘を付け頬杖してる銀さんと目が合った。


「……な、にが?」

「言わねー。もう寝んぞ」


腕を引かれ電気も消されたので黙ってついて行くしか出来なかった。

今のはどうゆう意味だろう、まさか私の思考を読んだ訳じゃないよね、……それだと都合良すぎる内容か。


銀さんの布団はもう敷いてあり腕を引かれるがまま私もそこに収まる。
いつものように抱き締めてくれる、私が何処に行ったか知ってるのに……止めよう。今は考えるの止めよう。その時になったら考えよう、だって今の私には解決方法は無いし、改善しようとも思って無い。ならいつまでも考えたって、その違和感に気付いたどちらかが私の為に何かを起こす。そんなの嫌だ。


「あーもー、しゃーねぇ奴だなホントに。」

「……え? なに?」

「何じゃねぇよ。」


突然溜め息と共に声が聞こえ、驚いて見上げるとまた溜め息を吐かれた。
意味が分からずそのまま見上げてると上半身だけで覆い被さるように乗り上げて来て更に驚く、天井にある豆電球が銀さんによって遮られ横に並んでる時より影になり表情が良く見えない。


「オメーはあれこれグダグダ考え過ぎなんだよ。可愛くお願いでもしてみれば? 俺甘ェらしいしィ? 聞いて貰えるかもしんねーぞ。」

「……そんな、狡い事、出来ない。」

「それを決めるのは俺だろ、お前じゃ無ェ。それに聞いてやるとも言ってねぇしな?」


私の顔の横に腕を付き間近に見える意地悪そうな顔。だけど言ってる事は優しいものだ。何で、こんなに良くしてくれるの。


「……」

「なに、言わねーの? 」

「……」

「あっそ? なら、俺も言わねぇかんな。自分でちゃんとお願い出来たら教えてやんよ。」


はむ、とやんわり唇を挟まれ一瞬遅れて耳に熱が上がったのが分かる。

聞くなんて出来ない、もしやめろと言われても私は改善する気は無いから。だから聞かない。
でも、きっと銀さんは受け入れようとしてるんだ。

私に何が出来る? そんな銀さんに、私は何をしてあげられるの?


目の前で見下ろす顔を両手で掴み、自ら引き寄せ今された事と同じように薄い唇をカプっと自分の唇で覆ったら、軽く浮かせてた頭がぐっと布団に押し付けられ私が噛み付いてた筈なのに一瞬で噛み付き返された。

まるで唇全体が食べられてるみたいな感覚に心臓がバクハグ鳴り出したけど、落ち着けと自分で何度も心の中で唱えて熱い息が唇に掛かりながら離れた隙間を、また口を開けて自分から追った。
上手く出来なくて下唇ちょっとした覆えなかったし、また銀さんの方が口大きくて食べられるし、これ私はどうやってやれば良いんだと考えた瞬間にぬるっと唇に触れた温かいものに一気に頭が真っ白になる。


「っ、……、」

「くくっ、あれ、終わり? 」

「は、ぁ、……うぅ、」


私なんか心臓叩かれてるみたいにドクドクしてるのに銀さんは自分の唇を舐めながらとっても余裕そうだ。


「いーぜ。じゃ、今頑張った分な。」


何故か楽しそうに笑いながらぐったり寝転んでいる私の耳元に唇を寄せ囁かれた台詞に、さっきまでウダウダ考えていた事全て吹き飛んで、多分泣きそうな顔して抱き付いたと思うけどそれでも笑い声が頭の上から聞こえた。

気にして無かった訳ではない、だけど、どうしても手を離すなんて出来ない。銀さんとはまた違う、特別な人なの。







許可してやるよ



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