トリップ続編 | ナノ
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「名前さん朝から凄く機嫌良いですよね。」

「そーね」

「渡せて良かったですね。」

「……」


まぁ、現場に居たもんな、先帰らせたけど名前の耳に付いてるモン見りゃ気付くわな。


髪を留めてるせいで良く見える。一輪耳に付いてる程度だから髪を下ろせば目立たねぇと思ったけど、まさかのタイミングで髪飾りなんぞ貰って来るから良く見える。小っ恥ずかしい気もするが、あんな喜んでくれてんだ、嬉しく無ぇワケがない。


「花アルか?」

「お花だねー」

「何の花アルか?」

「何だろー?」


いや気付いてるよね、お前それ気付いてんだろ。


「それに似た花をパピーも地球から持って来た事あったネ。」

「お母さんに渡してたの?」

「そうアル!」

「お父さんは沢山の大好きを込めて渡したんだと思うよ。」

「マミー喜んでたネ! 部屋に飾ってあったヨ!」

「ふふっ」

「銀ちゃんも沢山の大好きを込めて渡したアルか?」

「……」

「寝たフリしてんじゃねーヨ。」

「ふふっ、お散歩行こう?」


慣れねんだよ察しろ、大人をからかうんじゃない。


「沖田さんのプレゼントにも何か意味があるんですかね?」

「薔薇だそうだ、ピンクの薔薇5輪乗ってるんだと。」

「どんな意味ですか?」

「出会えて心から喜んでる的な意味だってよ。色に愛情も詰め込んで抜かりねぇよな。」

「銀さんもピンクですよね。」

「……」


慣れねぇ事をするモンじゃねぇな。






「お祭りやってるアルー!!」

「んぁ、……なんだ?」


寝てた。そして騒々しく帰宅した神楽に一気に現実に戻された。


「小さいお祭りが河川敷でやってたの。」

「行きたいヨ! ねぇ銀ちゃん行きたいアルよー!」

「行ってくりゃ良いだろ」

「皆で行きたいネ!」

「あー」

「新八探して来るアル!」


まだ返事してねぇのに走って行きやがった。
まぁもう夕方近いし晩飯そこで食や良いか、つかこれでまた依頼の金無くなんな。


「買い物して帰ろうと思ってたけどやめて来たよ。」

「そうだな、適当に屋台で食わせりゃ良いから今日は晩飯要らねーわ。」


ソファーで転がってる俺の元まで来た名前に手を伸ばし引かれるまま起き上がって座る、繋いでた手を軽く引くとすんなり脚の間に収まった。


「……お前これ、ホントは意味分かってんだろ。」

「さぁ」

「最初から分かってた?」

「さぁ?」


狡ィやつだな、振り向いた顔は楽しそうに笑ってやがる。


「うっ、くすぐったいのでやめて下さい。」

「前に良さそうにしてたじゃん」

「……してないもん」


後ろから耳の裏に唇を当て熱い息を吹き掛けながら吸い付こうと舐めたら、首に回してた片腕を叩いて待ったを掛けられて止められた。


「も、おわり。」

「まだ付けてねぇけど」

「見えちゃうからダメ。」

「じゃあ舐めるだけにするわ」

「ひっ、手ぇ動いてますが!?」


服の上から太腿撫でてるだけだろ。


「……っ、ね、銀さん、」

「んー?」

「……いい加減にしろよ、とか、思わないの?」

「……ん? 何が?」


一瞬俺が言われたのかと思った、俺が言う側なの?


「ふっ、ちょっ、あの、話はっ、」

「良いよ、続けて。」


首に腕回したままだから逃げるにも限度がある、往生際悪く足掻くモンだから腹にまで腕回されて、しかも腕ごと抱えられてっから身動き取れなくなってやんの。やってんの俺だけど。


「ちょ、とぉ!? ね、横腹触ってるよ! 手ぇ入ってるよ!」

「えー? マジ? あ、ホントだー。」

「白々しい!! そして動けない!! 足までも拘束されてる! ……っ、何これ、ぜんっぜん、動けないっ!?」

「俺から逃げられるとでも思ってんの?」

「何で服捲れんの!? 器用だね!? でも待って待って!拘束凄すぎてっ、!」


後ろから羽交い締めにされる特訓はしてねぇのな、背後取られたらどうすんだ。

得意の足も俺に足で押さえられちゃ動かせねぇし、そもそも背後から拘束されりゃ使えねぇ。こんな細ェ身体じゃ両腕ごど片腕で抱き寄せて封じれる、首に回してる腕なんざただの飾りなんだから服引っ張って捲るくれぇ出来んだよ。


「こうなる前にせめて片腕は出しとか無きゃダメだ、密着されてんなら思いっきり肘打ちすりゃ隙間くらい出来るし、両手使えんなら反対の手の力も使ってやれ」


拘束を解き右腕を拳作らせ肘を曲げさせて、左手で拳を押すように肘を俺の腹に当てれば、多少だが隙間出来んだろ


「身体少し捩ってな、出来た隙間からそのまま抜けろ。」


腕からすり抜けた身体をそのまま解放すると立ち上がって直ぐに振り向き黙って見つめてくる。
武器とか持って無ェもんな、アイツから貰ってた短刀あるだろうけど普段持ち歩いては無ェだろうし。


「立ってんなら足思っきし踏んでやれ、さっきみたいに首に腕回されてんなら噛み付けば良いし、力で抜けようとしたって無駄だから隙を作る事を考えろよ。」

「はい。」

「そういや話なんだった?」

「……ううん、良い。杞憂な心配だったかも、ありがとう。」

「何だ、また要らん心配してんの? 」

「うん、今そうなんじゃないかって思った。」


何で今? そして何で抱き付いて来んの? いや嬉しいけどね、急なデレも大歓迎だけどね。


「どした?」

「……何か私としたい事ある?」

「なに?」

「何か、頑張れそうなやつ、私の思考じゃなくて銀さん思考であるかなって。」

「銀ちゃーん!新八見付けたアルよー!」

「あ、時間切れだ、行こっか。」

「え!? 待て待て待て保留にしよう? 考える時間頂戴!? 」

「時間掛けて考えると変な事思い付いちゃうから。」

「じゃ今日中で!祭り回りながら考える!」

「んー、分かった。」


危ね、折角の頑張ろうとした瞬間が消え去る所だった。どんな気まぐれか知らねぇけど、楽しみだなこりゃ。








「お前アイツらに金やったろ?」

「あれま、バレたか。」

「ったく、甘やかすんじゃねぇよ。」

「ちょっとだよ、細やかなお小遣い程度なの。ごめんねお父さん。」

「誰がお父さんだ。あんなでけぇガキなんぞ居てたまるか。」


こうやって甘やかすから直ぐこいつの肩を持つようになってくんだ、俺の悪戯止めんのにアイツら召喚して来やがるからな。

ウキウキと走り出した神楽を新八が追い掛けて、こいつも走り出そうとするから止めた。小さい祭りとは言え人混みだ、120%迷子に何だろコイツは。


「お祭りって久々に来る、ただの焼きそばなのに凄く美味しそうに見えるの何でだろう。絶対家で作った方が安いのにね。」

「現実的だな、祭りの醍醐味知らねぇのかお前。 」


言ってる事は分かる。けどそこは雰囲気にのまれて買っちまうモンだし、こうゆう場で食うからまた旨ェんだろうが。


「祭り好きじゃ無ェの?」

「好きでも嫌いでも無いかなぁ、人多くて歩きづらいし。なのに銀さんが隣に居ると楽しくなるのが不思議だよね。神楽ちゃん達も楽しそうだったし、好き嫌いって環境に左右されるのかな。」


……まぁ、それも分からんでも無いけどね。サラッと嬉しい事言ってくれちゃってるけど雰囲気に飲まれてんのか?


「何か食えば? もっと楽しさ分かるかもよ。」

「そうだね、お祭りでしか食べれない物が良いなぁ」

「んー、リンゴ飴とか? 苺もあるかも。」

「苺飴とかあるの!? それにしようかなー」

「……苺のチョコバナナとかもあると思うぞ」

「それも良いね、先に出会った方にするー」

「さっき通り過ぎたから戻ろうか、はいUターンしまーす。」

「えっ、」


飴は知らんがバナナは今さっき横切った、繋いでる手を引き方向転換すれば引かれるがまま足を動かしてついて来るコイツは、多分何も分かっちゃいない。


「あっ! 本当だ苺ある! 銀さんも食べる?」

「いや良い、食べ歩きは危ねぇから袋に入れて貰えよ。」

「うんっ」


恐らく忘れてんだろうな、じゃなかったら俺の前でそれは選ばねぇよ普通は。

危ねぇからと屋台が並ぶ道から離れ茂みに少し入った石段に座らせる、賑わいの音が多少聞こえはするが互いの会話が余裕で聞こえる位は落ち着いてる。人は居ェから薄暗くなって来たこの空間に二人きり、呑気に眺めるソレで俺が邪な事を考えてんのは想像もして無んだろう。


「はい、お食べ?」


隣に座れば当たり前のように差し出された串を受け取り、笑って見上げる口元に向けたら小首を傾げ「嫌いなの?」と聞いてくる姿に多少罪悪感が生まれて来た、だけど頑張ってくれんなら試しにお願いしてみても良いんじゃねェかとも思う、だってここにチョコバナナが。


「咥えてくんねぇ?」

「咥える? このまま食べろって?」

「じゃなくて咥えて。覚えてねぇの? 俺の前でコレ食うなっつったの。」

「…………っ!? 」


ようやく思い出したらしい、目を見開き片手で口を覆って心底驚いてる。
そうだよな、バナナくらい普通に食わせてやれよって思うよ俺だって。


「なっ、何なの!? そ、その為にそれ買わせたの!?」

「うん」

「うん!?!? もっ!どんだけ変態なの!!」


いやホントな、否定はしない。


「もうっ、ほんっとに! 馬鹿じゃないの!?」

「イヤだ?」

「嫌に決まってる!!」

「頑張って欲しい事これっつったら?」

「はぁ!? ……っ、………………いや、……別にそれは嫌な訳じゃないよ」


何だ突然。今嫌に決まってるって言わなかったか、すげぇ嫌がってたじゃん急にどうした。


「あ、……えと、家帰ったら、する、」

「え?これ持って帰んの?」

「いやそれは食べる」

「家にバナナなんてあったっけ?」

「バナナ? ……え? して、欲しいん、ですよね? 」

「は?…………は!? いや違ェわ!そうじゃねぇよ!つかお前何言ってんの!? 」

「え、だって頑張って欲しい事それにするって、……大丈夫だよ? 嫌ではないし、やり方分かんないけど、」

「待て待て待て待てお前バカか!? 突然咥えろ言われて大人しく受け入れんなよ!! 何でそこは従順なの!? 普段反抗して来るし変態だと引いた顔して言って来る癖に何で!?」

「喧嘩売ってるの?」


売ってねェよ!ビビってんだよ心底!ただコレ咥えてんの見てェつっただけなのに何でマジな方!? しかも何、嫌では無いって、そりゃ嫌がられても傷付くけど、でもちょっと嬉しいとか思っちゃったじゃねェか。


「そうじゃなくて、ただコレ咥え欲しかっただけ。」

「んー、あのね、銀さんがゆっくりやってくれてるの私ちゃんと分かってるし、嫌々言ってるんじゃ無いからね? 教えてくれればちゃんとするよ、本当に銀さんなら私、」

「やめろってェェェ!! マジで違う、思ってねんだって、やって欲しいなんざ望んで無ェから!」

「……どしてそうやって遠慮するの? 嫌がってるように見える? 」

「ちっげェっての!!!! いきなり過ぎたなホントごめんな!違ェんだよマジで! いや嬉しいよ? そうやって受け入れてくれんのはマジで嬉しいよありがとうな、だけど俺お前にそれをさせるつもり一生無ェから。」

「一生? 一生って、え? そんな嫌なの?」


ようやく理解してきたか、良かった、マジで焦った。


「嫌っつーか、お前の口にんなグロテスクなモン入れれねんだわ。」

「へ? グロテスク? なに?」

「それは今度な。兎に角、させるつもりは無ェから心配すんなって事。」

「心配? 別に心配なんてしてないけど、てか何で嫌? 私が出来るご奉仕じゃないの?」

「ねぇ何でその辺は知識あんの!?!? おぼこいの癖に何処で知識植え付けやがったよ!!」

「えぇ、何で怒ってるの?」


全くの想定外だ、何故やらなくて良いと言ってるのに安心しない処か疑問を抱く? そう言や依頼でも平気で顔寄せて来たな、ご奉仕だと思ってるからダメなのか。このまま流しても後々厄介だしコイツが納得し金輪際二度と考えねェくらいの何か。何か無ェか。


「……俺は、本気でお前が望む事は止めないつもり、だから俺は嫌だけどそれでもお前がやりてぇつーならお願いするけど?」

「……え、いや銀さんがそんなに嫌がってるのに私がやる意味って……」

「つまり、お前自身がやりてぇワケではねんだろ?」

「えぇ、…… 私は、……銀さんに、喜んで、貰えたらなって、……思っただけで……」

「分かってるよ、俺の為にしてくれようとしたのは分かってるしそれはすっげぇ嬉しいよ。けど、俺が嫌ならお前はしたく無ェだろ? お前は、俺の喜ぶ事がしてェんだもんな?」

「え? そうだけど、何の確認してるの?」

「金輪際やろうと思わせねェ確認。 お前は自分がしたいワケじゃなくて俺の為にやってくれようとした、だから俺が嫌ならしねェ。良いな?」

「え、う、うん。」

「口で言って。絶対ェしねぇって約束。」

「そんなに? え、そんな私にされるの嫌なの?」

「だからそうじゃねぇって、このお口に入れんのが無理なの。下には入れっから大丈夫。」

「今の何? ギャグ? 」

「流せ。はい、約束。言って。」

「…………絶対しません。」

「よし、約束だかんな? 破ったら容赦なく噛むかんな。」

「いや何で、噛まれてまでやんないよ。そんな嫌がられると思わなかったんだけど、寧ろ喜ぶ事なのかと思ったのに。」

「どーもダメなんだよ、お前の口には入れれねぇわ。」

「……ふーん」

「え? 何で今トーンダウンした? 」

「別にー。……それは、キスするのが嫌になるからとかそんな感じなの?」

「いやそうじゃ無くて、何か、……可哀想じゃん。」

「可哀想?」

「苦しんだぞ、不味いだろうし、しかもグロい。お前はケーキとかプリンとかアイスとか、そーゆうの食ってりゃいんだよ。」

「…………なにそれ、……馬鹿じゃないの」


最近その "馬鹿じゃないの" に引いた呆れじゃなく素直じゃねェ照れ隠しがちょいちょい混じってる時がある。そしてその時の顔が中々に良い。嬉しそうに笑うんでも無く、照れを隠すみてェに悪態付きながらも口元ちょっと笑って目尻下げながらこっちを見て言った後に、フイっと顔を逸らす。

隣に座ってんだから顔を背けても笑ってんのなんて分かるし、それ見て釣られねェなんて出来ねェから俺まで笑っちまう。


けど、これで納得しただろうし約束もした。
コイツお得意の言葉選びを真似させて貰って逆手に取られない言葉を上手い具合に並べてな。もし次言って来ようが黙らせる事が出来るように。


「私も銀さん大好きだよ」

「こっち見て言えよ、ツンデレか?」

「違いますー、チョコ溶けたかな? 食べる、頂戴。」

「ダメだって、咥えてっつってんじゃん」

「はぁ? 今までの話は何だったの?」


眉間の皺凄いな、笑ってた顔が一瞬で消えちゃったよ。


「だから、突っ込むのは無理だけど咥えてんのは見てぇの。だからほら、代わり」

「ほらじゃないよ、何なの? 馬鹿じゃないの?」


今の "馬鹿じゃないの" は引き気味の心底変態だと思われながらの呆れたヤツ。でもだから俺もやり易いんだよなぁこれが。
ここで悲しそうに嫌がりでもすりゃァ俺だって引くさ、けどそんな反抗してくれちゃってため息まで吐かれりゃ益々させたくなる。


「まぁそう言うなって。お前にとっちゃただのバナナだろ? 噛まねぇで、ちょーっと舐めたり吸ったりしてくれりゃ良いだけよ? 」

「待ってやだ気持ち悪い。何処まで変態なの? こわいんだけど」

「んな事言っちゃってもお前、俺のしてくれようとしてたじゃん。舐めてくれようとしたんだろ? 喉まで咥えようと、」

「やめい!!!! このっ、ド変態が!!!! 」

「くくくっ」


そんな立ち上がって吠えても顔真っ赤。想像とかしねェで言ったんだろうな、俺のなら良いって受け入れようとしてくれたのも、本気でやってくれようとしたのも分かってる。


「人の頑張り何だと思ってんの!?」

「ごめんごめん、頑張りは本気で喜んでるよ。ただ見てぇつーのもマジ、まぁチャンス有ればどっかでやってくんねぇかなって思ってた程度だけどな。本気で嫌なら勿論やめる。」

「…………それが、……頑張って欲しい事なの」

「うん、お前思考じゃなく俺思考のヤツな。」

「………確かにそんな変態的な発想無かった。……、もう良いよ分かった。」

「えっマジ? すんの? これバナナだけどしゃぶってるように見るかんな?」

「何でそんな事言うの? わざとだよね?」

「うん」


すげぇ睨んでる。だけど笑わせる方法あんだよ、こっちは切り札抱えてるから。


「ピアス、似合ってるよ」

「……………もう、ほんと狡いよね、何なの。」


ほら、ちょっとムッとはしてるけど手が耳に触れて表情が和らいだ。喜んでくれてたの知ってるし? 普段お前の方が狡ィ事ばっかしてくんだからこれくらい許されんだろ。


「……舐めれば良いの?」

「んー、俺の膝乗って。こっち向いて座ってな。」

「要求が容赦ないね。」


いやだって正面から見てぇじゃん折角ならさぁ。次があるとも限らねぇし。


手を伸ばしたらゆっくり重ねて来たから諦めてくれたらしい。

向かい合うように脚を跨がせ、口元まで持って行かず髪垂れるよう少し下で持って待ってると、じっとチョコ見つめた後、俺に視線を送って来た。


「じゃ、上の方からちょっとずつ舐める所から始めよーか。」



・・・



舐めろと言われたから銀さんの手首に自分の手を添えて上だけそっと舐めたら甘かった。当たり前だよこれチョコだもん、苺チョコだよ、普通に美味しい。


「まだ咥えない、舐めるだけ。軽くな、優しく舐めて。」


お預けされてる犬みたいだ。何故チョコの部分だけ舐めさせられてるの、バナナと一緒に食べるから美味しいんじゃん。しかもちょっと口に含んだだけで離れてったし。仕方無いからチョコが溶けるようにゆっくり舐めて唇で掬ってを繰り返した、上手って誉められたけど、何が?


「次、ちょっと上だけ咥えて、絶対噛むなよ、唇で優しく沿わせるように動かして。」


指示がとても細かいのだけれども、銀さんには本当にこれがバナナに見えないの? 私本物見たこと無いから頑張ってもバナナにしか見えない、だから、多分足りないよね、照れと言うか表情的な何かが。


そんなにやって欲しいなら別にやっても良い。
しかも、しなくて良いって言った理由は私の事を大事にしてくれてる内容だったから、バナナ咥えてって言われた時はどんだけ変態だよって思ったけど、最終的には まぁ良いやって思えた。

だから銀さんが楽しめるなら頑張りたいとは少なからず思うけれども、何をどうしたら良いのか分からない。こんなバナナ、いやチョコ舐めてるだけ。今咥えてるけど。


さっきからチョコ凄い垂れるし、銀さんの手に落ちないようには気を付けてるけど唇には付く。それも舐め取ってからまたピンクの部分を舐める。多分チョコ無くなるまで終わんなそうだから下から舐め上げて、吸ったりとか言ってた事を思い出して軽く咥えて吸って、また舐め上げてを繰り返してたらどんどんチョコ無くなるし、いつまでやるのかと見上げたら目が合った。

凄い見られてた、目ぇ細めてじっと見て来てるよ、こわい。


「次もうちょい深くまでイケる?」


まだ終わりじゃないんだ、こんなの見てて楽しいの? 脳内で連想してるの? ……連想は良いの? 線引きが良く分からないな。


「っ、……」


震える、垂れた髪を耳に掛けてくれただけなのに、身体が勝手に震えた、だってわざとなのか耳のラインを撫でるように触れて離れて行ったんだもん。


「……イイな、その顔。」


いや、もう、動けないんですけど、頑張って深く咥えたまま動けなくなった。
下から顎に触れた指がゆっくり持ち上げてきて口からバナナ離れたけど、垂れるチョコを拭う為に手を持ち上げる事も出来ない。聞こえたいつもより低い声が、背筋をぞくりと凍らせて、こわくなった。

でも恐る恐る視線を合わせたら、別にこわい顔して無くて薄く笑った口元は怪しげだけど目はそこまでじゃない。


「ちゃんとバナナ咥えてるように見えたわ。」


何それ、どうゆう意味? 口の端から垂れたチョコを指で拭って、自分の口に運び舌を出して舐めながら安心したように笑ってる。


「……どうゆう意味?」

「いやぁ、本能的に? 想像して興奮しちゃったりすんのかなぁと、思ったりもしたワケよ。でも大丈夫だった。想像しねぇわ、お前の口に入ってたのは紛れもなくバナナだった。」

「……そうなんだ、」


最初からバナナなんだけどね。


「でもかなりイイな。舐めてる顔ってやっぱエロく見えんのはしゃーねぇよな、指舐められんのもスゲェ興奮するし。今度俺の舌も今みてぇに舐めてみてくんね?」

「…………ド変態め」

「どーも。」


当分バナナ食べられないじゃん。







どうしてくれんの



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