今日はお仕事お休みだし、神楽ちゃんの帰宅はお昼頃で新八くんもそれに合わせると言われて何だか気を使われた感があったけど、取り敢えず二人分ならもうちょっと後からご飯作っても良いのかな。 頭の上から聞こえる寝息に見上げると、口を少し開けてすぅすぅ気持ち良さそうに眠ってる寝顔。じっと見つめても変わらないから、温もりを堪能しようと軽く抱き付いたら思いっきり腰を引き寄せられた。 「……起きてたの」 「んー? はよ。」 「……おはよ」 さっさと起き上がれば良かった、きっと今から起きると言ってももう遅い。自分から抱き付いた訳だから下手に抵抗すれば からかわれるだけ、ここは大人しくしてるに限る。 「ひっ!? やっ、……!」 大人しくなんか出来なかった! この人変態だった、大人しくしてたらどんどん進む、脚絡ませて来たの放って置いたらお腹捲って押し付けて来たよ普通こんな事する!? 「うぅ! やだ、も、変態っ!」 「朝だから、仕方ねーの。」 「それ前も聞いた!! 押し付ける必要は無いでしょ!!」 「昨日自分で触ってたじゃん。」 「っ!……っ、……っ!」 「そんな照れんでも。もっかい触る?」 「うぇ、変態ぃ、朝から何言ってるのっ!」 「え、朝じゃ無かったら良いの?」 もうやだこの人、嘆いて無いで自力で逃げなきゃ。神楽ちゃんも居ないし暫く人すら来ないんだ。 何とか暴れて方向転換するだけで体力の消耗が酷い、朝だから力入らないし背中向けてもお腹に腕回されて離してくれる気配が無い。 「は、も、…い、加減離してよ、」 「もっかい頑張れ」 「ふぬっ、…、んっ!ぁ、も、むりっ、…っは、」 「もっかい」 何なの、何回やっても出れないよ。これは何? 特訓なの? 何も朝じゃなくて良いじゃない、力入らないのに。 「んーっ!……っ、う、はぁ、はぁ、」 「もっかい」 「いや、っ、何回やらせんの、も、出来ないよ、」 ぐっとお腹に回った腕に力が入り何度目かも分からない、もう一回。 全然抜けれない、この腕一本から全く抜けれる気がしない。 「早く、もっかいやって。」 「うっ、ぁ、くるし、っ」 「…あー、……今のもっかい」 「……」 待っておかしい、今のもう一回って何? 私まだ何もしてなかったよね、脱出試みてなかったよ、腕の力強すぎて苦しいって言っただけだよね。 「……私今何してるの?」 「逃げようとしてる」 「銀さんは?」 「楽しんでる」 「……何を?」 「苦しんでる声?」 いや意味が分からない、 何してんだこの人は。 人が必死に抜けようとしてるのに苦しませて楽しんでるの? なんて非道なの。 「朝から余計な体力使った、離して。」 「ちょっと脚貸してくんねぇ?」 「はい? もうさっきから意味が分からない、銀さんは一体何をっ、!? 」 「ごめん結構キてる、もう離せそうも無ェから、ちょっとだけ我慢して。」 …………何が起きてこんな事になってるんだろう。 さっきと違うって事は分かる、朝だからじゃない。 背中に感じる発熱凄いしお腹にある腕まで熱くなってる、うなじに掛かる息も何もかもが熱いよ。 「……は、……こっち、向ける、?」 ……え、こっち、とは、向かい合う感じですか。向かい合って何するの? 返事してないのにお腹にあった手で肩を引かれて上を向かされた、抵抗しないんじゃ無くて出来ないんだからね? 明らかにじゃれてる感じじゃないし怪しい空気が口さえも閉ざしてくる。 そろっと目だけゆっくり動かして上を向くと、思ったのとは違う顔だった。 もっとおっかない顔してるのかと思った、いつもみたいに捕食者並みにギラついた目をしてるのかと思ってたら、軽く額に汗をかいて すがるような顔。 重なった視線を外し言われた通り向かい合う体勢になる為に自分で銀さんの方を向いて転がると、熱い手が背中に触れそのままゆっくり下りて太股の裏で止まる。 ぐっと引き寄せられた片足が銀さんの脚の間に入り太股に熱いものが押し付けられた。 何をしてあげれば良いのか私には分からなくて大人しくしてる他無かったけど、反対の手で後頭部をゆっくり押されて丁度寝間着の合わせ目に顔が当たり、触れて欲しいのかと思って唇を付けたら軽く髪の毛を握られた。 あってるのか間違ってるのかも分からない、唇より遥かに高い体温に大丈夫なのかと心配になるけれど、頭の上から聞こえる荒い呼吸の方が大丈夫じゃ無さそう。 「……っ!……はー、……わり、大丈夫か?」 「ん、」 後頭部にあった手に力が入り思いっきり唇を押し付けてしまって、若干濡れた肌を焦って袖で拭いた。 足は途中で離されたけど、終わったと言う事なのだろう。多分。 「脚気持ち悪ィだろ、ごめんな。」 さっきまで押し付けるようにされてた太股を今度は大きな手が優しく撫でてくれてる。 「大丈夫、気持ち悪くない。」 「……そーゆうのは付け上がらせるだけだかんな。」 「嘘じゃないよ。」 銀さんの熱が移ったのか私自身が火照って来てるのか熱くなってる自分の頬を手で冷ましてると、額に唇が触れ緩く抱き締めるように腕を回された。 「落ち着いたの?」 「うん」 「いきなりどうしたの、脚貸して欲しかったから離してくれなかったの?」 「んや、お前の声が思った以上にエロくて。」 「は?」 「やっぱ想像と実際聞くのとは違ェわ、暫くアレでしとく。」 「いや何言ってるのか全然分からないんだけど。」 何の話してるの? 私一言も声出さなかったよね? 訳が分からずに見つめてた銀さんの顔がゆっくり近付いてきたけど、触れる寸前に手を挟んで止めた。 高ぶったのが最初じゃない? なら直前にしていた事で私の声って、…… 「……馬鹿じゃないの……」 「そんな引きつった顔しないで。」 お陰で火照った体温が下がったけど、まだ朝なのに凄く疲れた。 「……ねぇ、それってさ、私以外でもそんななるよね? 」 「なるワケねェだろ。」 「どうして? 私だけに反応するって事は無いでしょ? 朝だから仕方無い、のと同じ感じで勝手に反応したりするよね?」 「しねーわ。」 「だって銀さんがいくら私を想ってくれてても身体はまた別でしょ? そうゆうもの何じゃないの? 」 「そんなに言うなら試してみる?」 「えっ、駄目、違うよ、他の人でして欲しかったんじゃなくて、銀さんヒョイヒョイ高ぶるからどうなってるのかと思って気になっただけなの。」 「お前いつも上げてから落としてくるよな。」 何故か残念そうな顔をして見られた。 「取り敢えず風呂行くわ」 「お風呂入るの?」 「そー、俺が今何したか、良く考えてみ」 ポンポンと頭に手を置いて寝室を出て行った銀さん、いつも私が先に起きるから1人布団に残されると若干の もの寂しさを感じる。 布団に入ったまま残った温もりに手を当て銀さんが言い残した事を考える、そして分かった瞬間飛び起きた。 あまり深く考えてなかった、高ぶったんだろうなって、治める方法ってそうゆう事なの?抑える事は出来ないの? てか待って、私の脚必要だった? 自分で出来るんだよね? 変態だから? いやそもそも私の脚で何したの? 何かグリグリして………… ……まぁ、良いや。止めよう、私には到底分からない事情だ。 取り敢えず私、熱を下げた方が良い、何も考えるな、忘れよう、そしてご飯作ろう、 「まだここに居たの?」 「ひぇ!? 」 「え、何それ。」 もう戻って来たの!? お風呂早いね!! 「は? あー、なに、理解出来たの?」 真っ赤になってるであろう頬を人差し指でスルっと撫でられて、どうにも銀さんの顔が見れない。 「んな真っ赤なっちゃって、なに想像したワケ? 」 「な!…にも、してない、」 「お前分かってるようで分かって無ェ所あるよな、俺が何してたか本当に分かったの?」 「え、……た、多分、?」 「ふーん? 」 畳に座り込んでいる私の前にしゃがみ両手を広げ「おいで」と言われたら行くしかなかったけど、いつもの体温で私の身体をすっぽり収めるような心地好いハグにぎゅっと抱き付けばトクントクンと安定した心音まで聞こえ、より安心感が得られた。 段々と熱が落ち着き温かなこの腕の中にいつまでも収まってたいと思ったのに、 「俺がAV観んの平気?」 心地好さが一気に消えた寧ろ体温が下がった気がする。 こんな一瞬で離れたい気分になるんだ、気が変わるのって一瞬なんだな。 「気分なんてそんなものか、所詮心の持ち方次第。」 「おいどうした、何で溜め息ついた。」 腕を押し離れると直ぐ様掴んで引き止めてくるの何で。 「離して下さい」 「待て待て別に観てぇワケじゃねんだって」 「観るのは良いよ、私と神楽ちゃんの知らない所で観てくれたらそれで。私は今、幸せな気分が一瞬で消え去った事に悲しみ嘆いているの。」 「おお、スゲェ冷めた目、そんな目で俺を見るな。」 「暫く触らないでね」 「何で!? 待って待って違うって! 観てぇワケじゃねんだって!」 「だから観るのは良いってば。 」 「それもおかしいだろ!? 何で良いんだよ! つかじゃあ何に冷めたの!?」 「私を抱き締めながら他の人の事考えたんでしょ。」 「んな!? 違うってェェェ!! そうじゃねぇ!! そうじゃねぇからァァァ!!!!」 ・ ・ 全力でひたすら懇願したら話を聞いてくれた。今ようやく冷ややかな目から通常に戻って、作ってくれた温かい卵焼きを食した後、淹れてくれた温かいお茶を飲んでいる。 「別に証明とかしてくれなくて良いよ、只の素朴な疑問だっただけだから気にしないで?」 「んー、いやどっちかと言うと俺が知ってて欲しいってだけ。」 「何を?」 「お前以外じゃ勃たねぇって。」 「こっちの人達って皆普通に下ネタ言うよね?」 「もっと他に視点向ける所あったろ。」 ダメだ、やっぱ何かズレてるよこの子。 さっきの発言と良い、俺の事を変態だと言う割には自分にだけだと思って無ェからまだヌル過ぎんだと思う。 俺が自分だけを求めてんだと分からせる必要がある、疑ってるワケではねぇだろうが自分が居ないと俺が生きて行け無ェと思う程、俺の中に自分が居るって事を植え付けるにはまだ全然足りて無ェらしい。 最初は逆だったんだけどな、俺無しじゃ生きれねぇように依存させてェと思ったが、俺が突き放すと思い込むくれェなら逆だ。だが突き放される事を受け入れようとしてるんだから結局そっちも足りねぇのか。 たまには刺激を与え無ェと、さっきの発言は頂け無ェわ。 お前以外に欲情すると本気で思うのか、俺はもうオメー以外に興味無んだよ。 「今日借りて来るから。」 「ん?」 「前に観た事あるやつ借りてくる、お前が来る前に観たやつ。それで抜いた事あるから。」 「いや、あの、別に報告してくれなくて大丈夫だよ? 寧ろ知らない所でやって欲しいんだけど。」 「だから観てぇんじゃねぇっての。 つか俺が他の女見ても何とも思わねぇの?」 「前言ったでしょ、好みの写真とか映像も見たい物じゃないの? 目の保養的に。ただ、私に触りながら他の人の事を考えるのは止めて。そんな事するなら触らないで。」 「全然足ん無ェ。目の保養? 何でお前居んのに他で保養なると思うんだよ。んなモン見んならお前の想像した方がよっぽどイけるっつの。 お前触りながら他なんぞ考えてる余裕無ェのも分かって無ぇし、お前に触れ無ェとか状況にも寄るだろうが、場合によっちゃァ俺何するか分かんねぇぞ?」 「……何で私説教されてるの?」 嫉妬心があるのか無ェのか良く分からねぇが全然足りねぇよ。 「俺が重すぎんの?」 「全然。そうやって私に不安を与えないようにって思ってくれてる所も大好き。」 「ふぅん? 束縛イケんのね。」 「束縛? そんな甘い束縛なんてあるんだ?」 「……へぇ?」 言ってくれんじゃん。なら遠慮無く身体に叩き込んでやるよ。 ・ ・ ・ 夜になり、さぁ寝ようと布団を敷いていたら銀さんがパソコン型のDVDプレーヤーを持って来た。 そんな物あったんだと聞けば借りてきたんだとか、しかも恐らく昼間言っていたDVDも一緒に。 「……ここで観るつもりなの?」 「うん」 私の知らない所で観てって言ったのに……、でも日中は神楽ちゃん居るし夜は私も居るし他に観る時間無いのか。 居間で観て万が一にも神楽ちゃん起きて来たら困るし。 ヘッドホンもあるみたいだからまぁ良いか。 「それ観て私に触ったら蹴っ飛ばすからね。」 「おい何寝ようとしてんだ。」 「はい? 」 「何回言わすんだよ、観てぇワケじゃねんだって。これ観ても反応しねぇってのを分からせる為だっつの。」 「それ本気で言ってたの? 」 「当たりめーだろ、じゃなかったら観ねぇよ。」 「……本気で言ってるなら多分意味無いよ? それって私のさじ加減でしょ? 高ぶんなかったって言われても気分乗らなかったんだなって思っちゃうよ?」 「これ観て反応しねぇけどお前相手なら一瞬で高ぶるってのを教えてやんよ。」 「私に何する気なの!? 」 朝から疲れてんのにまた何かする気なのこの人は。 「大丈夫だって、朝手伝ってくれたし今回は自分でヤるから。取り敢えず他じゃ無理ってのを知っとけ、それだけ。んじゃ観るからな。」 「……もう好きにしたら良いよ……、」 「だから布団入んなっつの」 「分かってるよ、終わったら起こしてくれて良いから。」 「バカか、俺見てろって。」 「は?」 え? 何を言っているの? びっくりし過ぎて口ポカンと開いちゃうくらい意味が分からない。 俺見てろとはどうゆう事なの、まさかそれ観てる銀さんを私に見てろって意味じゃ無いよね? 「反応しねぇの見てろよ」 「だから終わってからで良いでしょ」 「全く欠片も反応しねぇから終始見てろ」 「馬鹿は貴方でしょ。」 何が悲しくて他の人が致してるのを観てる銀さんを見続けなきゃならないの。私が観て良いって言ったからって何とも思わないとでも思っているの? 「あのね、私は別に観たいなら観ても構わないけどそれを観てる銀さんの姿見て何も思わない訳じゃ無いからね? 」 「……ちょっとは嫌って思うって?」 「ちょっと処じゃないよ、他の人が致してるのを観て楽しんでる姿を無関心に思える訳無いでしょ、だから私の知らない所でやってって言ってるの。水着の写真でも映像でもプロの方々だし観て楽しいのは分かるよ、だからどうぞって言ってるだけで他の人の事を見て欲しい訳じゃ無い。」 「……観ても、楽しくねんだよ、もうお前以外関心無ェの、俺が観てぇと思ってるその考えを消してェんだわ。」 「男の人って観たい物なんじゃないの、だから、」 「他の男と同列に見んじゃ無ェよ。俺はお前しか要らねぇの、プロだろうがアマチュアだろうが触りてェなんざもう思わねんだわ。お前が居ればそれで良い。」 「……」 「まぁ、俺が他の奴見んのに抵抗あんのは知れて良かったわ。だけど安心しろよ興味無ェから、観んのもこれが最後、もう観ねぇだろうよ。」 ……だって、どうして、私だけで満足出来ると思えるの、プロの方が楽しいに決まってる。 それでも銀さんが私を大事にしてくれてるのは分かってるし私も大事に思ってる。 だけど、私はそこまで銀さんに想われる程、自分に自信が持てない。 なのに銀さんは、そんな私だけで良いの? 本当に満足出来るの? つまんなくならない? 「理解出来無んだろ? お前は俺をナメ過ぎてる、そこが理解出来無ェから怯えやら不安やらが生まれんだ。俺にも原因があるのは認めるよ、だからお互い改めようや。俺はお前が理解出来るよう身体に叩き込む、お前は自分の中にあるその小せェ常識を消せ。そん中に、俺は入って無ェから。」 真剣な顔でそう言われた。私の常識が間違ってるの? でも多分私が一般的だと思う、そこに銀さんが当てはまらないの? 一緒に居る為には自分の知ってる常識から出て考えないといけないんだ。 「俺の束縛甘ェんだろ? 今更返品利か無ェかんな。」 「……返品なんてする訳無い、全部私のだもん、誰にもあげないよ。」 口端を吊り上げて笑う銀さんが差し出す片手を掴むと、胡座をかいた脚の上に横向きで乗せられる。 私が理解出来るよう身体に叩き込んでくれるらしい、…………具体的には何をするんだろう、叩き込む、と言う言葉は酷く物騒じゃ無いだろうか。 そんなに想われてるんだと嬉しい気持ちになったけれど、叩き込むって、只の表現だよね、実際するのは優しいやつだよね? 「優しいやつだよね、言葉が物騒なだけだよね?」 「一度受け入れたモン手離せると思うなよ。」 「えっ、優しいやつじゃないの? 痛いやつ? 」 「痛くはない。けど今日は優しいやつでは無ぇな。」 「え、」 ハッキリ優しいやつじゃ無いって言った、優しくないやつ? それ何? 「……え、優しくないやつ? ……何するの? こわいやつ? 」 「んー、ちょっとこわいやつ?」 「…………、…待って、泣きそう、銀さ、が、言うなら、ちょっとじゃ、な、よね、っ」 「目ェ潤んでんぞ。」 「い、いじわる、言ってるだけ? 」 「意地悪は言ってねぇな、よし、んじゃ観るかんな。」 片膝を立てて私の背中をその脚で支えながら準備を終わらせヘッドホンを装着した銀さんを下から眺めてるけど、その顔が霞んで来てるよ。 電気は消えててパソコンの光が顔を照らし、余計銀さんがこわく見えて来る。 「おい何すんだ、ヘッドホン返せ。」 「……っ、こわいやつ、?」 「泣いてんじゃねぇか。」 頬に伝う水分を拭ってくれてる銀さんはこれからこわい事するの? 「ね、やめよ、高ぶんないの、分かった、」 「まだ観て無ぇ。」 「……観ないでっ。」 「もう遅ェよ、元々お前の発言が招いた事なんだ、諦めろ。」 「……っ、う、こわいやつって、なに、」 「直ぐ終わるって、大丈夫。ほら貸せそろそろ始まる。」 「そんなの観てないで、慰めてよ。」 「どうせまた泣くだろ。」 …………絶対駄目なやつだ、もう駄目だこれ。 自衛しないと、泣いてたってどうにもならない。 「いっ!? ったい、! 叩いた!」 「バッカお前振り返んじゃねぇっての、もう始まってんだぞ。」 「だから何! 私布団行くから手退けてっ!」 脚から下りようとしたら一瞬視界に映像の光が入った瞬間に目を塞ぐように片手が飛んで来て遮られた。そしてまた横から抱き上げるように脚の上に戻され、腕で頭を抱き寄せるように回って来たかと思ったら、顎を掴み鎖骨辺りに頬を押し付けながら上を向かされる、反対の手も太股に置かれこっちも押さえられてるから動けなくなる。 「大人しく俺見てろって」 「やだ! ならもう一緒にDVD観る」 「ふざけんな観せるワケ無ぇだろ、男のモン出てんだぞ。」 「良いよ、知識乏しいし、いっそ勉強する」 「アホか、俺が一から教えんだから要らねぇよ。」 「こわい事するからやだ。」 「今映像観やがった明日仕事行けねぇくらい泣かすかんな。」 「理不尽!!」 ・ ・ 暴れる身体を無視して押さえ、上を向くように顔を固定したまま映像を観てたら暫くして静かになった。 それ処か頭を押さえてた腕に重みが来て、まさかと思って下を向けば寝てるしよ。 信じらんねぇよ、何でこの状況で寝れんのコイツ。俺がこれ観んのに少なからず抵抗あったんじゃなかったのか、自分の男がAV観てる腕の中で寝るか普通。 つかこいつが俺の事見て無んじゃ俺がコレ観たって意味が無ェ。 「名前、終わった。起きて。」 「……ん、……、ねてた……」 薄く開いた目がボーっと宙を見て寝ていた事を理解したのか口に出したが、寝ぼけてるんだか首元にすり寄って来た。 さっきまで泣かされてたの忘れたのか、腕の中から逃げようとしてたろ。まぁそっちから来てくれんなら都合良いけどな。 一度抱き上げて俺の脚を跨がせ向かい合うよう座らせると、背中に腕を回して抱き付いてくる。そして聞こえる寝息、寝るのが速い。 ぐっと腰を引き寄せてから再び起こせば、頬を俺の胸元に付けたまま顔が上がりゆっくり目が開く。 「なぁ分かる? 今観たけど何も興奮しねぇの。」 「……ん、……あつく、ない、」 一応は伝わってるみたいで良かった、今にも寝そうなくらいゆっくりな瞬きをしながらも俺の言っている意味は分かるらしい。 「んじゃ次、お前の事考えるかんな。」 「…………ん、」 脳内で何度も想像してる、仕方無ェよな? ゆっくりお前に合わせてぇと思ってはいる、だからこれくらいは多目に見てくれや。 あまりデケェ声を出されても困るから首の後ろから腕を回し寝ている口を手で塞ぎ、腰に回してる腕で軽く身体を持ち上げ顔は向き合うよう上を向かせて固定する。 「名前、起きて、これ終わったら寝て良いから。」 「……ん、んっ?」 「、息吐いて。」 「……っ!? っんん!? ん!んっ……っ、っ!」 「大丈夫、落ち着け。これ以上はしない。」 「っん!……っっ、ん、っ、」 太股でも何処でもない、服の上からではあるがソコに当たるように腰を落として固定した。 ビクッと大きく揺れた身体を落ち着かせる為と動かないようにきつく抱き寄せて、目を見開いて涙の膜が出来始めてる顔に宥める言葉を掛け続ける。 「大丈夫、ゆっくり息吐いて、これで終わり。何もしないよ。」 「……んっ、、っ、っっ、」 痙攣なのか震えなのか小刻みに揺れる身体、口を塞いでた手を離すと短い呼吸を繰り返しながら、次々に涙が頬を伝って落ちてくる。 「これ、分かるか? さっきまで何とも無かったのに、お前の事考えてこんななったの。もう他の奴じゃなんねぇの。」 「っ、ふ、……っ、」 「怖いか?」 震えてる癖に首を横に振り、生理的に泣いてんのか全然涙も止まんねェな。 頬に触れただけで大袈裟に肩が跳ね、声を出さないようにしてるのか、口を固く閉ざしたまま怯えた顔をしながらも見上げてくる。 濡れてる頬を下から舐め上げると、いつもなら文句1つくらいは反抗してくるのに、ぎゅっと目を瞑るだけ。唇まで震えてるし喋れ無ェのか? 「少しは分かった? 」 「……っ、…か、った、」 「俺にこうゆう事されんの、イヤ?」 「、び、くい、……っ、した、け、」 「はは、そんな泣いてんのに?」 寝起きにいきなりコレは刺激が強すぎたか、けど可哀想なくらい頬を濡らしながらも見上げる顔に思わず笑いが込み上げる。 抱き締めながら布団に倒し毛布を掛けてから先に寝てろと伝えれば顔を隠すように丸まって頷く。その頭を撫でてから一人部屋を出た。 まぁ結構な無理矢理感はあるし、次は実際目の前で見たら流石に反応すんじゃねぇかとか思われそうだけど、それでもこれで暫くは言わねぇだろう。 納得つーより、怖いから言わないの方が正しいだろうがあんまナメて貰っちゃ困るんでね。 変態だろうがお好きにどーぞ prev / next [ 戻る ] |