トリップ 番外編@ | ナノ
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▼ 57話番外



57話温泉での銀さん視点のお話。


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招待券を貰ったと言って訪れた宿は、いつかのスタンドの住み家とは違い清潔感溢れる温泉宿で、心の中でホッと息を吐いた、マジで良かった。

朝からウキウキと神楽とパンフレットを覗き込み、はしゃぐ姿はいつもより少し幼げだ。バイキングにケーキあるよ、と言われた瞬間俺の心もかなりウキウキになったけどな。だって食い放題だぞ。

そのバイキングで、まぁ予想はしてたがまさか拍手喝采されるとは流石に思わなかった。店員処か客にまでされてたからな、追い出されなくて助かったけど。

洋食も和食も兼ね備えてあって豪華なバイキングで何よりデザートエリアが凄い。一口サイズのケーキの種類がざっと10はあった、その他にもゼリーやらプリンやら全部俺には小せぇサイズだが数食べるには丁度良んだろうな、名前は喜んで全種類一つずつ皿に乗せていた。後半眉間に皺を寄せながら食っていたけどそれでも完食しててスゲェなとは感心する。

料理を盛ってる最中に、好きであろうグラタンを取らない事に疑問を抱き聞けば、「銀さんのグラタンが良いから」とサラッと言いながら隣のクリームコロッケをトングて挟み俺にも要るかと見上げる顔に何度ちゅーしてやろうかと思った事か。


そして温泉から帰って来た名前は浴衣姿を身に纏っていた。そりゃそうだ、ここは温泉、備え付きの浴衣があるわけで。いやね、いつもパジャマだから、それが駄目って言ってんじゃ無ぇよ? 浴衣が新鮮だって話。最初の頃俺の寝間着着せた事はあったが浴衣は無ぇよな。


「新八も行くぞ」

「えっ、銀さん本当に行くんですか?」

「あいつ、多分皆で入りてぇんだよ。」


俺に照れる照れないは別として、あんなアッサリ一緒に風呂入るなんざ言うとは思えない。自分で照れ屋だと言うだけあって恥ずかしがる場面は見てる、タオル巻くと言えど、そこに何も思わない訳は無いだろう。それでも頷いたのは皆で一緒に入りたいってのと、俺が入りたいって言ったから妥協案も入ってんだろうな。


ノックをすれば楽しそうに声色を高くした返事が聞こえ思わず口許が緩んだ。


「なになに、俺が入って来んのそんな嬉しい?」


一層可笑しそうに笑いながら新八を見た瞬間嬉しそうに微笑み、やっぱり皆で入りたかったらしい。なのに何故かまだ遠慮が見え隠れするな。

軽口を言いながら近付けば笑いながら今後妥協無し宣言。
それは困る、こいつの妥協案はかなりギリギリの所まで頑張ってくれてるし俺的にも有り難い。


「……妥協要るわ」

「要るんだ」


これからもお願いしますと言いたい位必要だから、ここでバカな事は止めておこうと思う。


・・・


ふと目を覚まし隣の布団に目をやると、そこはもぬけの殻だった。手を伸ばして布団に触れば温もりも薄い、抜け出してから少し時間が立っている。

顔だけ起こし見渡してもトイレや洗面所に明かりがついていないし本人も見当たらない。
となると、温泉か?
時計を見れば時刻3時前。なんでこんな時間に、寝れなくなったんか。

そっと隣の部屋に聞き耳立てても人の気配は無かったからゆっくり開けた、案の定名前は居ない代わりに端に浴衣が置いてある。

驚かせても困るから軽めにノックをすれば小さく疑問系で返事が聞こえた。顔だけ覗かせるように中を伺うとキョトンとしながらこちらを見てる目と合わさる。

タオルは巻いてるみたいだしそのまま中に入って側に行きしゃがみ込むと、バスタオル1枚に身を包み下から見上げて来るアングルが何ともまぁ、ギリギリで。少し汗ばんで火照ってる顔、水分の弾いてる肩、無闇に触れば取り返しのつかない事になりそうで、それでも折角の機会だし?


「俺も入っていー?」

「……うん。」


今ちょっと間があった。やっぱ神楽達居ないと少しは違ェのかな。
一瞬不安そうにした顔を指だけで頬を撫でればいつもより高い体温と、しっとりした肌。
外れた目線が再び戻ってきて重なり、笑って見せれば少し困ったような感じではあったが、笑い返されたから浴衣を脱ぐべく一度部屋を出た。


タオルを巻き部屋に戻れば、ボーと夜空を眺めてる姿が目に入る。さっきより星が増え森の中ってせいもあってかここにある小さな電気以外灯りは無い。

一人分のスペースを空けて横に並ぶように縁に寄り掛かれば、チラリと目線が交わり口元笑いながら逸らされた。なんだこいつ、何か試してんの? こちとら自分を抑え込んでここに居んだけどその辺分かってんのかね、入って来たのは俺だけどよ。


前に来ないかと聞けば当然断られた。
こうして一緒に入ってる事に平気だろうとは思ってない、びっくりした顔されたが、分かってんだよそれくらい。どんだけ見てると思ってんだよ。

だからそこまで嫌がってはいないのも分かる。
指で肩を突つけば少しムッとした声で返ってくるが、それでも嫌だとは言って来ない。

すげぇスベスベしてるし、身体も少し赤くなってきてる。髪を束ねてるせいでうなじから肩までのラインが晒され余り見る事がないそこについ目が行ってしまうのは仕方がないよな。

どうしようか考えてるであろう横顔も、悩むって事は妥協の余地有りって事だろ? 戻って来た目線が呆れた顔に変わったが俺の顔緩みまくってかもしんねぇ。まぁまぁ自覚はある。

お湯の中から出てきた手が俺の手首に触れただけで上がってる体温も加わってドクンと大きく心臓が跳ねたが、動かすなと言われて逆に助かった、こいつが動かすなと言うのなら俺は意地でも動かさない。だから自分の欲を無理矢理でも抑え込めると思う。

ゆっくりと地面に膝をついて向かい合うように正面まで来た身体は分かっちゃいるがバスタオル1枚な訳で、太腿半分しか隠れてない。それで俺の脚跨いでくんねぇかなと心底思った、その場合制御不可能になるだろうからそれはそれで困るけどもだ。


後ろ向きでゆっくり近付いて来る身体は手で支えたくなる程に頼り無くふらついている。つか怖ェよ脚見えてんのか?いや見てねぇか、下ばっか向いてるもんな。タオル捲れかけてんだっつの、ヒヤヒヤしながらも捲れかけてる太腿を見ていたら目の前にあった頭がぐらりと揺れて焦って足で挟むようにして止めた。腹辺りを支える筈が上げ過ぎて膝に柔らかな感触が押し当てられる、本人は差して気にしてないらしく俺の足を支えにするように手を乗せ体勢を整えているが俺の口からは焦りすぎて どもった言葉が出た。


「ん、しょ。はぁ、疲れた。」


俺も疲れた。
ようやく足の間に収まるように座って落ち着いたらしいが、もうちょい頑張ってくれ、これじゃ何処も触れてない。
寄り掛かるように言えばゆっくり重みが来る、と思いきや殆ど来なかった。これで良い?って何も良くねぇよ、申し訳無い程度に触れてるだけだ。足をしっかり地面につけてる所を見ると滑るのか、支え無ェもんな。


「滑るんだろ?腕で支えさせて。腕回すだけで触わんねぇから、なんなら拳握っとくし。」


頑張ってくれてる事は充分に分かってる、その頑張りを無下にはしねぇよ。


ぐっと拳を握り縁から下ろした腕をお湯に入れゆっくり腹に回すように抱き寄せれば背中がぴったり密着する、いつもならこれで体重預けて頭も倒してくんのにそれがない、その上肩に力が入ってるのが見て分かる。

固ェな、そのまま言葉にすれば見たがってた照れじゃないかと。
だったら俺がここに来た時点で何かしらあんだろ、違ぇんだよ、もう只照れてる所が見たいんじゃない。俺に心臓高鳴らせて照れてる所が見てぇんだよ。今は男と風呂入ってんのが照れんだろ、そりゃ普通に抵抗あんだろうよ、バスタオル1枚だからな。全く平気と言われる方が驚くわ。


こいつはずっと同じ鎖で繋がれ続けている。俺が何を言おうと解放されない、自分の中で変わる切っ掛けが無い限りその前提がいつまでも首に巻き付き思考まで動けなくさせてる。
だけどそんなのは最初から分かってる、一瞬だろうが何だろうが言葉で安心出来んなら何度だって言ってやらァ。

分かって無ぇんだよお前は、俺が半端な覚悟で手に入れたいと思うわけねぇだろ。


「俺は手離さ無ェよ。何があっても、絶対に。」


俺の幸せって何だろうな、考えた事も無ぇよ。
ただ、今の環境は落ち着く。それが良いのかは分からねぇが、アイツらが、そして今はこいつも居る。
それが温かい環境だってんなら、そうなんじゃねぇの? なのにそんな泣きそうな面してお前は何を願ってんだ。


「あっそう。なら居なくなったらお前オカズにガンガン1人でヤるわ。」


まぁあながち冗談でも無ぇけどな。


寄り掛かってた背中が少し離れて強張った肩がゆっくり動き顔が後ろを向いて目が合う。
眉を下げ怯えたような顔が可哀想なくらい歪んでいて思わず笑っちまったら、直ぐに目を細めて呆れた顔に変わり顔を逸らされた。
それさえにも笑ってたら握ってた拳に手が当たった、偶然触れたかと思いきや故意的に触れて来たらしく幾分肩の力も抜けたのか寄り掛かって倒れてきた頭が丁度顎の下に来たから乗せておく。


「せめて、何処かで繋がってたら良いのにな。」そう言いながら夜空に伸びる手。
俺が手を伸ばせば届くであろう距離、だけど俺は触れない。別に手を握っても何も言わないかもしれない、けどそれはこいつの出した妥協案に反する事になる。今現在この上なく俺を信用してくれている、だからこうやって風呂も入ってくれるんだ。決して俺を男として見てない訳では無い、だからを動かすなっつー妥協案を出した。例え只手を握るだけだとしてもその言い付けを破るのは信頼に関わる、それが積み重なって俺の言葉で安心出来なくなれば、きっとこいつは余計脆くなるだろう。安心して気の抜ける場所を壊したくは無い。
懇願するようにいつまでも伸ばす手を俺も見てる事しか出来なくて絡んでる指に力を入れても変わる事は無かった。

けど後ろから確かに物音と声が聞こえる、そして直ぐに扉が開き神楽が入ってきた。
助かった、スゲェ良いタイミングだわ。
気付いていないらしく手を伸ばしたままの名前に察した神楽がその手を握り、続いて入ってきた新八が瞬時に状況を理解したのか重ねて握る。そのまま動させねぇでいた縁に上げてある俺の手に置くように近付けてくれて、何て出来た奴らだと感心した、流石だわマジで。
有り難く乗せられた手を握っといた、逃げられたら追えないからちょい強めだけど、これは仕方ねぇから。

重なった手をじっと見つめた名前は柔らかく微笑み二人にも笑顔を向けた。

上の2つの手が消えた後、名前も同じように離れようとしたけど俺が握ってたからその手は止まった。
そして離せと言う、だけど二人が来ていつもの調子に戻ったらしい振り返り俺の目を見ながらの反抗だ。
シケた顔して無いでそうやって反抗して来いよ、その方が俺もやり易いからな。


ちょっと頬舐めただけで嫌がるように首を振って手の甲を頬に当て拭いながら眉間に皺を寄せている


「今更だろ。」

「何が!? そんな日常的に私舐められてないからね!? ね!」


二人に同意を求めて振り返り、思う返事が返って来なかったのか驚愕な顔に変わった横顔を眺めた。
こいつはホントに気付いてねぇの?
テーブル拭いてる後ろから手を伸ばしリモコン取るついでに仕掛けたりしてる、まァ頬にぶつかったフリしてるときもあるけどな。その度に一緒に片付けてる新八が顔を引き吊らせてたが最近じゃあ呆れた顔かスルーされる程だぞ?


「こわ!こわい! てか抵抗はするからね!? 今もしてる!」


何処が。んな口だけで嫌だ離せと言ったってお前は今、俺の腕ん中にバスタオル1枚で居んだぞ?
晒されてるその白い首筋狙ってるヤツが真後ろに居んだぞ、そんなに嫌ならもっと全力で逃げねぇと、なぁ?


「っひゃぁ!?…っ、っやめろ馬鹿!!!!」


顎下からアッパーを食らった。そこまで力強くも無ぇけど大人しく押されるがままの離れてやったら、
息切れが聞こえてきて笑いを誘う。
何笑ってんのかって?
お前が俺に反応してくれんのが堪んねぇんだよ、そこに高鳴りが無かろうと、そうやって全力で抵抗する度に俺の存在を身体で覚えて行くんだ。
そもそも、んな抵抗じゃァ拒絶になんざなんねぇよ。


「……そうだね、確かに口で言っても分からない人には態度で示さないと。銀さんもいつもそうやってたもんね。」


…………だけどやり過ぎはいけねぇよな、目ェ座ってるわ。反応が面白ぇとか思ったから?

二人を味方につけての仕返しは結構な勢いだった。顔を背ける時間はくれたんだろうが神楽が頭押さえんだもんよ。ま、楽しいみたいだし?こんぐれぇ受けてやんよ。



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