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▼ 睡魔は強敵



名前から電話があって俺の様子を聞かれたと新八が言っていた。

スゲ―心配してたからな、具合なんざ全く悪くねぇのに。
思わずまた手が出そうになったけど今度はちゃんと耐えた。噛んでない。
心配させるのは悪いと思うが勘違いしてるなら好都合だ。

読んでもいないジャンプを眺めて迎えの時間まで過ごした







少し早かったか
門の前まで着いたが名前はまだ来ていない

何をするわけでもなく過ごしていると遠くから声が聞こえてきた


(さっき土方さんに何か貰ってやした?)
(飴貰ったの、食べる?)
(何味)
(ん−イチゴは銀さんにあげたいから、桃かぶとう)
(アンタの好きな方選びなせェ)
(じゃ私ぶとうにする、沖田くん桃で良い?)
(何でも良いでさァ)
(はい、桃。沖田くんが桃って可愛いよね。)
(……そんな理由でぶとう選んだんで?)
(うん。)



何だこの会話。どこのカップル。
いや一瞬ね、俺にイチゴあげたいとか言い出した辺りは甘酸っぱい感情も芽生えたさ。でも続く会話から甘みは消えた。
やっと門から姿が出て来たと思ったら、手ェ繋いでやがるし。
もしかしなくてもさっきの会話手繋ぎながらしてた? 実は付き合ってんの?


「あっ銀さん!」

俺を見るなり笑って手を振って近付いてくる。手ェ繋いだままな。


「お−、お疲れさん。」

「お迎えありがとう!具合大丈夫なの?」

「大丈夫大丈夫。大したことねーから。」


だって悪くねぇもん。


「……そっか−、今日は早寝しなね。これ貰ったの、お裾分け。」


そう言いながら飴を渡してきた。
さっきの会話で出たイチゴの飴だ。


「お−、サンキュー。」


貰った相手は正直気に食わねぇが糖分に罪はない。
袋を破り口に放り込んで、さっきからずっと黙ってこっちを見ているヤツに目を向けた。


「随分熱い視線くれんじゃねぇの」

「まだ具合悪いなら俺が送ろうかと思いやして」

「ピンピンしてるっつの」

「そっちの具合じゃねぇでさァ。 名前さん約束忘れんじゃねぇですぜ。」

「うん、ありがとう!沖田くんもだからね。」


また明日ね、と手を振られながら戻って行ったアイツは気付いてる。

つか今の会話なに? 意味ありげじゃね?



「なに、約束って」

「え? あぁ、お互い頼るって約束したの。」

「ふーん」


頼る、ね。


「けーるぞ。乗れ」

「うん、」


後ろに乗ったこいつは腰の着物を握る感じで掴まってくる。


「……ちゃんと掴まれ。降り落ちんぞ。」

「掴まってるよ」

「もう噛まねぇって、悪かったよ。好きなだけ抱き付いて良いから、だからちゃんと掴まれ。」


言うと腕が前に回り朝のようにしっかり抱き付いてきた。


ちらっと腹にある腕を見てから前を見据えて息を吐き、スクーターを発進させた。








夕食を食べながらうつらうつらと名前は今にも眠そうだ。


「名前眠いアルか?」

「うーん、今日、昨日の分までお掃除してきたから、ちょっと疲れたかな。」

「片付けは僕がするんでお風呂入って寝ちゃって良いですよ。」

「ありがとー、新八くん。」


喋り方もゆっくりで目が半分くらいしか開いてない。



……んん?
ちょっと待て、泣き跡? 泣き跡かこれは。


「なァ、お前、」


って寝てる。飯食いながら寝てる。


「ご飯食べないアルか?」

「っ、……たべる。」


子供か。


その後もゆっくり飯を口に運びゆっくり噛んで飲み込み、途中で止まってまた口に運びを繰り返して、結局神楽が風呂に入り上がるまで繰り返された。


何で知ってるかって?んなもん見てたからに決まってんだろ。途中いつまで見てるんだと神楽と新八に冷たい目で見られたが、だって珍しいぞこんなの。
それに泣き跡が気になって仕方無い。




俺が風呂から上がると名前は髪の毛を濡らしたままドライヤー片手に項垂れていた。と言うか寝てんな。


「おい、ちゃんと髪乾かせ。」

「、……うん。」


あ−もう、俺がやった方が早いか。

無言でドライヤーを奪い頭に温風を当てる。
風になびく髪からシャンプーの匂い。同じ物を使っている筈なのに俺とは違う匂い、体臭に混じって変わるんか。甘い匂いがいちいち手を止めさせる。


片付けを終えて戻って来てもこいつはさっきと同じ場所から動いてない。
どんだけ眠いんだよ。もう聞くのは無理か。
抱き上げて顔を見るとさっきより薄くなってはいるが確かに跡がある。


何で泣いた? 泣かされた?
布団に下ろしながら考えるも分かる筈もない。

気になって眠れねぇんだけど。
……起こしていいかな?怒る?起こしたら怒る?

体重をかけないように身体を跨ぎ顔の横に手を置き上から見下ろす。

ダメだ。これ結構泣いたんじゃね?目の下とか擦った跡あんじゃん。



「……名前、」


悪いとは思いつつ肩に軽く手を置き声をかけた。
でも起きねぇ。全然ピクリとも動きやしねぇ。


……

「名前、名前−。名前ちゃーん?」

少し強めに肩を揺すると身動きをした。


「っんぁ、っ、ぁ? あれ、ねてた……?」



オィィィィィィィィィ!!!!
何っつー声出してんだコイツ!!
危なく起きる所だったわ!俺が!!



「お、おー悪ィな。ちょっと聞きてぇ事あって、お前今日泣いたの?」

「んえ? 」

「……泣き跡付いてるから気になってよ。」

「つ、てない。あら、た」


は?……って寝てる!? 寝たの!?
つてない、あらた? なにそれ。……洗った?
え、洗ったから泣き跡付いて無いって?
いやいや、洗う前はあったんか?
つーか残ってんだよ!



「名前、悪い、眠いのは分かってる。答えたら寝て良いから。な、名前。」


もう一度肩を揺すって声を掛けると眉間に皺を寄せられた。


「んっ、ゃだ、ねむい。」


もうホントそれやめて!!!! 起こしてんの俺だけど!


肩に置く俺の手を煩わしそうに避け体ごと横を向き拒絶している。おまけに手で耳まで塞いできた。


俺スゲェ酷い事してるみてぇだこれ。
こんな横向いて拒絶してるヤツの上に乗っかって無理矢理起こしてる。


上になってる手首を掴み耳から離し、ついでに布団に埋めるようにしている顔の下に手を入れて頬を軽く掴んで上を向かせた。


耳元に口を近付け声をかける

「悪い、起きて。」

「んっ、? ぎん、さん?」

「お−。悪いな、起きてくれるか」

「な、にしてるの、いっしょに、ねたいの? 」


は?いやちげーから。違うこともないけど。
でも今はちげぇから

目は殆ど開いていない。眉間に皺を寄せたまま面倒くさそうに俺を押し退けさせると毛布を手繰り寄せて寝る気満々だ。


「……でんき」


消せってか。
しゃーねぇ諦めるか。
明日聞いてもしらばっくれそうなんだよなぁ。
立ち上がりながら考え電気を消し終えると、「ん、」と言いながら片手を差し出してきた。


え、え? なに?一緒に寝るの? 来て良いよってお誘いなの?


ゆっくり近付いて膝を付くと首に腕を回された。
マジか。眠たすぎておかしくなった?
でも折角だし遠慮なく布団に入ると目の前に来る泣き跡。
軽く指で触れると、今土方さんっつった?
コイツ今、土方さんっつったよな?小せェ声でも聞こえたぞ、ぜってぇ土方さんっつったろ。
つか何回アイツの名前呼ばすんだ。


「起きろ。」

片手で両頬ごと顎を掴み揺すった。力を入れて掴んだせいか俺の手首を掴んで抵抗してくるが全く力が入ってない。

「起きろって」

「っ、いたい、」

「目ェ開けろ」

言うとゆっくり目が開きよくやく目が合った。


「……銀さん?」

「そう、銀さん。誰と間違ってんの。つーかアイツに泣かされたワケ?」

「え?誰? 」


顎から手を離しもう一度涙の跡を撫でる。


「あ、赤くなってる? 今日ブレーカー落ちて暗くなっちゃったんだよね。沖田くんと土方さんが探しに来てくれたから助かったけど、みっともなく泣いちゃって。銀さんが後ろに居るって思い込もうとしたんだけど駄目だった。温もりがないんだもん難しいよね。」


目が覚めたのかハッキリした口調で説明された。

泣かされたワケじゃねぇのか。
にしても沖田クンはまだしも何でニコチン野郎まで探しに来た?
しかも今俺と間違えたっつー事はアイツも触ってきたワケだろ。
昨日も思ったけど、いつの間に仲良くなったんだコイツは。


「ね、もう寝よう? 」

「……あぁ。」

やっと寝られる事がそんなに嬉しいのか、ふわっと笑顔を向けてからすり寄ってきた。
やっぱまだ寝ぼけてんのか。


暗闇で泣きながら俺の事を考えたのか?
傍に居てやれりゃ良かったんだがな。


ぐっと抱き締める腕に力を入れて目を瞑った。


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