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▼ 心配も程々でお願いしたい



手当てするから待ってろ。と言葉を残し銀さんは離れて行った。

体温の下がった自分の手を擦り合わせて震えを止める。

前怒ってた時の顔と違ったけど、……怒ってたんだ。
だよね、こわかったもん。銀さん怒るとやっぱりこわい。


大人しくソファーで待ってると救急箱と濡れたタオルを持って銀さんが戻ってきて隣に座った。


「拭くから上向いて。」



……もう怒ってないのかな、さっきより穏やかな空気だけども。

上を向き天井を見ながらさっきまでの事を考えた。


結局何に対して怒ってたんだろう。この服?でもこれは長官命令だし好きで着たわけじゃない。身代わりの事も言ってたけど、あれも仕方無いよね。断って人質の人に何かあっても困るし、しかも真選組で働いてる最中なら尚更。じゃあ、どうしたら良かったの……。





「安心するなっつったろ。」



え?

天井を見ながら考えていたら銀さんが答えてくれた。頭で考えてたのに。



「顔に出てんだよ。オメー安心したろ、身代わりになった時。真選組の奴らが居るから大丈夫だろう、相手も油断してるし大丈夫だろうって。」


……した。それは確かにした。


「お前は首元に刀向けられてたんだぞ。アイツらが居たって刀引くくらい容易い。油断してるならチャンスかもしんねぇけど、お前も油断してどうすんだよ。そんな甘い考えだとここじゃ生きていけねぇよ。」



銀さんが怒るときは、いつも私の為だ。


「……ごめん、本当にそうだね。確かに私甘く考えてた。」

「殺すつもりでやれ。それでも本当に死ぬなんざしねぇだろうよ、例えしても正当防衛だ。」

「わ、かった。気を付ける。」


手当てを終えた銀さんは救急箱を閉めテーブルに置いた。


「……ありがとう。」

「おー、」

「…………銀さん、ここの世界は生きるだけで大変そうだけど、私頑張るし。だからそんなに心配しなくて大丈夫だよ。心配してくれるの嬉しいけど、でもそんなにしてたら銀さんが疲れ、「次はここにするわ。」え?なに?」


思いっきり言葉を遮られた。

ここにすると意味の分からないことを言いながら、私の鎖骨辺りを服の上から人差し指で触れてくる。


「な、なにが?」

「次、噛むところ。」




…………え? なに?待って、なに、怒ったの?今怒ってるの?


「……お、こってる、の……?」

「お前は気付いてねぇのかもしんねぇけど、首、結構アザになってっから。今回は仕方ねぇ事だと配慮して噛んではいねぇけど、痕は残した。」

「え、え? アザ?」

「次は、ここな。さっき忠告はした。もう仕方ねぇは通用しねぇから。歯形覚悟しとけよ。」

「はが、え? あ、の心配……は、そんな、つ、疲れちゃうよ……?」

「なに、今付けられてぇの?」

「っ、い、いい、大丈夫、です。」

「痛いのイヤ?」

「ぅえ? 嫌じゃ無い人、いる?」

「居るだろうな。なら思いっきり噛むわ、容赦なく。嫌なら言うこと聞いとけ。」

「……それって、」


結局は心配してくれてる。それを気にする私に無理矢理気にさせないように、だよね。



「……結局はやっぱり甘いね、銀さん。」

「オメー程じゃねぇだろ。」


ふっと笑うと銀さんも笑ってくれた。


着替えて来いと言う銀さんの言葉に立ち上がり寝室に向かう。

これ返さないと。ここで洗濯して返そうかな。


居間に戻ると銀さんがアイスをくれた。


「アイス? 」

「午前中人来て置いてった。それお前の分な。」

「依頼来たの?」

「いんや、……テロリスト。」

「え!? テロリスト来たの!?」

アイス持って!?

手元のアイスを凝視する私に、大丈夫だと頭に手を置かれた。


何が大丈夫なんだろう。良く分からないけど銀さんが大丈夫だと言うのなら大丈夫なのかな。


「あ、イチゴだ。」

カップに入ったイチゴのアイス。しかも果肉入りだ、高そう。


「ん、美味しっ。高そうなアイスだね。」

「かもなァ。」

「銀さんも一緒に食べよう? スプーンもう1つ持ってくる!」

「あー? いやいらねぇよ、つーかくれるっつーならそのスプーンでくれりゃいいじゃん。」

「だって舐めちゃったもん私。」

「どうせ照れねぇだろが。」

「え?……あぁ、間接キスって事? そうじゃなくて普通に私舐めたスプーン使うの嫌かなって思って。」

「全く気にもしねぇのかよ……。まぁ良いわ、気にしねぇよ俺。」

「そー?なら 、はい。」

「食わして」

「なんで?自分で食べてよ、手あるでしょ?」

「あ、」


……なんで、でも溶けても嫌だから食べさせてあげた。


「ん、イチゴうめぇな。」

「ね、美味しい。」



……何だろう、何か一瞬違和感があった。

アイスを食べながら考えると一瞬過った、イチゴうめぇなってセリフ。


「……銀さん何味食べたの?」

「ん―?バニラ。」

「え?バニラなの?」

「は?バニラのが良かった?」

「いやそうじゃなく、何で? 何でイチゴ食べなかったの?」


銀さんイチゴ好きでしょ?何でバニラ食べたの。


「何でって、お前イチゴ好きじゃん。」




何で。……何でこの人は、



「私、何でも良いし、銀さん好きなの食べてよ。ごめん、話蒸し返すけど心配とか気使ったりとか銀さんし過ぎだと思う。そんなんじゃ私と一緒に居るの疲れちゃうでしょ。」


何でそんなに気を使うんだろう。普通にして欲しい。じゃないと絶対銀さん疲れちゃうよ。


「それはお前だろ」

「……え?」

「俺のやってる事を気ィ使ってると思うなら、それはお前が気ィ使ってるって事だ。」

「……」

良く分からない。


「俺は気なんざ使ってねぇ。それをお前が使ってるって言うなら、それこそお前が俺に気ィ使って言ってんだろ?」

「えぇ? 私は別に使ってないじゃん。 」

「お前ならどうした? 俺が居ないときにアイス貰って、何味残すの」

「それは、」



…………イチゴ残す。


「俺に気ィ使って? 俺の好きなの残すのか?」

「……違う。……喜ぶかなって。」

「だろ? なのに俺のやる事は気ィ使ってるって?」

「…………だって。」

「だってじゃねぇよ。さっきからグダグダグダグダ。お前は脅されねぇと言う事聞けないワケ?」

「え、そんな事言ってない。」

「お望みならそうしてやろうか。腹なんてどーよ。クビレん所。」

「な、なにが?」

「痛い事されなきゃ分かんねぇんだろ。」

そう言いながら片手を伸ばし横腹に触れてきた


「っちょっと! なに!?」

「洋服だと簡単に出せんな。」

「ぎゃ! ちょっ、やめっ、ま、待って!! 分かったから、っ、もう言わないからっ!!!!」


叫ぶように言ったら止まってくれた。

とんでもない……あっという間に横向きのまま押し倒されて両手首を片手で捕まれた。
そのまま空いてる手で服捲って横腹を舐めてきた。
危ない本当に……。本気で噛まれるかと思った。



「ほら、早く食えよ。溶けんぞ。」


いや、誰のせい。



結局はやっぱり無理矢理だけど、気にさせないようにする為だ。無理矢理だけど。


そんなんで本当に疲れないの?




「心配し過ぎて疲れても私知らないからね。」

「疲れねぇから問題ねぇよ。」

「……そう。……じゃあ私、もう気にしないよ 」

「噛まれたくなきゃそうしろよ」

「……あ、りがとう。……ならもういいや、こんなあちこち舐められるし。こわいし。もう銀さんの事なんて考えてあげない。」

「怖かった?」

「こわいよ、特に最初の2回。勝手に手震えてたもん。」

「スゲェ怯えた顔してたもんな」

「……何で笑ってるの」

「ちょっと興奮した。」

「うっわ、マジもんの変態。こわ。」

「よし、次は手ェ使えねぇように拘束するわ」

「こわい! 」



発想が危ないよ
普通舐める? 噛むとか痕付けるとか。


「銀さんよく他人の肌舐めれるよね。」


汚くないの?普通人の肌舐めれる?


最後の一口を掬いスプーンを銀さんに持っていくと溶けかけていたアイスが指に垂れた


アイスを食べた銀さんは、スプーンを奪い私の手首を掴んで自分の口に近付けようとしたから慌てて引っ込めた


「今スゲェ早かったな。」

「本気で舐めようとしたでしょ。」

「しっかり咥えて舐め取ってやろうと思ったのに。」

「気持ち悪い」

「あぁ? 怒ったわ、指貸せ。」

「絶対イヤ。」

「いいから貸せって」

「っ!いった……!頭打った!」



直ぐ押し倒してくる。こうゆうの狡いと思う。
しかも本気で押さえられると力じゃ敵わない

右手は手首を掴まれ、左手は人差し指だけ伸ばされた状態で手を握られている。


「ほんっとに、やめて!! 自分の指でも舐めてれば良いじゃっ、い!ったい、っ。」


噛まれた。指噛んできたよこの人。
目の前で指を咥えギリギリわざとらしく歯を立てている銀さん。
口元緩んでるのがまた腹立たしい。
噛んだ所にゆっくり舌を這わせ始めた時、玄関の扉が開く音が聞こえた。


(ただいまヨ―)


神楽ちゃんの声だ。
聞こえた瞬間に銀さんの目が見開かれ私の手を離しガバッと起き上がった。


でもそんなの許すわけない。
起き上がった銀さんの襟元を両手で掴み引っ張ってまた押し倒された格好に戻す


「オイィィィィ!!!!!! 離せよ殺されんだろ!!」

「行ってらっしゃぁい」

「てんめぇ……!」


「名前帰って来てるアルか!?」


神楽ちゃんが居間に入ってくる直前に手を離す
私を挟んで床に手を付いている銀さんは、どうみても私を押し倒しているようにしかみえない。


「何してるアルか銀ちゃん。」

「ち、ちげぇから!! こいつが……!」

「名前のせいにするアルか。そんな使えない眼球潰れるヨロシ。」

「ちょ、待て待て、まっ、ぐっは!!!!」


凄い衝撃で吹き飛んだ銀さん。
人差し指の歯形と壁に頭を突っ込んで動かなくなった銀さんを見比べて心の中で思った。


ごめんね?


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