▼ あなたが噂の
猫耳が消えてしまった頃新八くん達が帰って来た
お腹は空いてないだろうけど軽く夕食を作って待っていたら、ご飯は別腹だって、お米食べなきゃご飯を食べた気しないらしく神楽ちゃんが綺麗に全部食べてくれた。
普通甘味が別腹では?
でも美味しそうに食べてくれたから気にしない事にする
片付けを終え新八くんを送りに玄関まで出た
「銀さんと何かあったんですか?」
「え? あっ、頬赤くなってたやつ? ちょっと叩いちゃって、でもおあいこって事で許して貰ったよ。」
「いえ名前さんが叩くなんてよっぽどなんでそれは良いんですけど、銀さんの様子がいつもと違ったので、」
でも叩かれて反省してるからですかね、そう言いながら帰って行った新八くんを手を振りながら見送った
確かに、最近は意味もなく引っ付いて来る事すらあったのに、今日は無い
照れさせようとしてたみたいだから、昼間ので満足したのかと思ってたけど、もしかして叩いたのが原因だったりするのかな
新八くんに言われてから少し銀さんを観察してみたけど結局答えは出ず、それならば聞いた方が早いと2人寝室に入り電気を消した後に話し掛けた
「ねぇ銀さん。 昼間私が叩いたの怒ってるの?」
「は? いや怒ってねーって、昼間も言ったろ。」
「そうだけど、新八くんが銀さんいつもと違うって言ってた。 ……銀さん優しいからさ、もし何かあるならちゃんと言ってね。私割りとすぐ手出るし、そこまでする必要無いだろって思っても仕方無いと思うし。はっきり言ってくれないと分からないからね。」
結局は他人が何を考えているかなんて分からない。
勝手に推測したって、ただの想像でしかない
布団で横になりながら銀さんを見ていると銀さんが上半身を起こした
「何でオメーはそう、時々悲観的っつーか、ネガティブっつーか心配し過ぎだろ。 あれは殆ど俺が悪いの。お前は何も悪くねーんだよ。いつもと違うってんなら、あー、アレだ。あんま俺に近付かれんの嫌かと思ってよ。」
「近付かれるのは別にどっちでも良いんだけど、なら気を使ったりはしないで欲しい。 」
「どっちでも良いのかよ……」
「 うん、でも照れるとか何とかのやつは昼間ので満足したでしょ? 新八くんも心配してるし私に怒ってる訳じゃないなら普通にして?」
「おー、え? 待て待てなんだ満足って。」
「照れ顔見たいとか言ってたでしょ。 凄い照れたじゃん私。」
「は? どこがだよ。心臓潰されそうになったワケ?」
「いや、それただの病気だよ。」
まだ言ってたのそれ。
銀さん意外と乙女チック
「まぁいいや怒ってないなら。ごめんね邪魔して、寝よう?」
叩いたせいかと思ってたから違うみたいで安心した。
さぁ寝ようと上を向いて目を瞑る
すると、なァと銀さんが口を開き顔を戻した
「なに?」
「仲直りしよーぜ。」
「仲直り?喧嘩してたの?」
「してねーけど、元通りっつー事で、仲直り。」
「良いよ−、じゃあ今から元通りね。はい、仲直り。」
「冷てーなァ、もっと何かあんだろーがよ。」
何かって何?
仲直りって普通何かするものだっけ?
「分かんないんだけど。」
「ん、じゃこっち来て。」
「え?何で?私今布団に入ってるの見えるでしょ?」
折角暖めた布団出るのは嫌だよ、もう眠いし。
「じゃ−俺が行くわ。」
そう言いながら銀さんは立ち上がり、何を思ったのか私の布団に入ってきた。
「は!? え、何で入ってくるの!?」
「仲直りする為?」
「え?銀さん仲直りする時一緒の布団に入るの?」
「さぁ?」
何それ。
そんな仲直りの方法あるの?
「銀さんが土方さんと一緒に布団入るのってちょっと笑えるね。」
「はァ!? え、え?何?? お前何想像してんの? 意味分かんねーんだけど。怖いんだけど、何言ってんの?」
「自分で言ったんじゃん。仲直りするとき一緒に布団入るんでしょ?」
「だから!!何で俺があんなニコチン野郎と同じ布団に入るんだよ!!バカなの!? お前バカなの!?」
「ちょっと、大きい声出さないでよ!神楽ちゃん起きちゃうでしょ!!」
負けじと大きい声で言ってしまい2人ではっとして手で口を塞いだ
「オメーがバカな事言うからだろ。」
「人のせいにしないでよ。じゃあ何で入ってきたの?そっちに布団あるんだから戻ってよ狭い。」
「いーじゃねぇか、どーせ照れねぇんだろ?」
「それ関係無くない? 私1人でのびのび寝たい。」
「気にすんな。」
「何が? ねぇ何が気にするな? こんな存在感あるの気にしない方が無理でしょ。」
「うっせぇな、寝ろ。」
「またそれ? 都合悪くなったら直ぐ煩いって言うよね銀さん。あと照れたとき。」
「……オメーなんなの。喧嘩売ってんの?」
「仲直りしてるんでしょ?」
前と同様腰に腕を回され抱き寄せられてる状態
いつの間にか腕枕のオプション付き。
若干からかいを含んで言うと直ぐ突っ掛かってきて笑いが込み上げてくる
「笑ってんじゃねーか。」
「うん、なんか楽しいな−って思って。」
ふふっと我慢できなくて笑ってしまった
「昼間はあんなビクビクしちゃってたのにな。」
「ねぇ、銀さんこそ喧嘩売ってるんじゃないの? 離れてくれない?」
信じられない、自分が全部悪いとか言っといて蒸し返すんだ。
「うそうそ、ごめーん名前ちゃん。怒んないで?」
「何それ腹立つ。大人しくぎゅうするつもり無いなら本当出てって。」
「お前いきなりデレるのマジでやめろ。」
「は? 」
「もう良いから寝てくれよ頼むから。」
何だ、と思って上にある銀さんに顔を向けようとしたら胸元に押し付けられて上げさせてくれなかった
「っ、くるしい、もっと優しくしてよっ」
「マジで黙れ。そして寝ろ、頭撫でててやるから。」
「あ、それ好き。直ぐ眠くなる。」
言った傍から瞼が落ち眠かったせいもあり直ぐ意識を手離した
「勘弁しろよマジで。俺が眠れなくなんだろ。」
・
・
・
……
「……まだご飯出来ないよ?寝てたら?」
朝、銀さんの腕から抜けるときに起こしてしまったけど、まだ寝てて、と告げて寝室から出た。
てっきり寝ててくれると思ったのに銀さんは珍しく今私の居る台所で並んで立っている
「今日卵焼き? 俺甘いのが良い。」
「知ってるよ、銀さんのだけエグいくらい甘めに作ってる。」
「味見してい?」
「んー、一口だけね。」
やりィと言いながら卵焼きを手で掴んで口に運んでいるのは良いんだけど、何で私の首に腕回して食べるの?
普通に1人で立って食べれないの?
「ねぇ、ちょっと離れてくれない? 動きにくいんだけど、早くしないと新八くん来ちゃうよ。」
「うまっ、味噌汁具なにー?」
「聞いてないし。」
夢見良かったのかな?
すこぶる機嫌が良い気がする
それから何かするんでも後ろにぴったりくっついてきて、時折お腹に手を回され頭に顎を乗せられる
「どうしたの銀さん、今日随分ベタベタしてくるね。」
「照れんの?」
「しつこ−」
もう良いよそれ。
二言目にはいつも、照れんの?
そんなあからさまにベタベタされてどうやって照れる訳?
「お前だんだん素出てきたよな? 」
「っえ? そう? ごめん態度悪かった?」
「いや、そうじゃなくて。ハッキリ言ってくるようになったな−て。つか態度わりィの? 」
ハッキリ……
仲良くなると口悪くなるのは良く言われる、でも、
「あんまり銀さんがしつこいからかな、」
「おーい名前ちゃん声漏れてる。心の声が口に出ちゃってるよ−。」
「あら。」
「あらって……、前は話し方すら躊躇ってたのにな」
「今からでも敬語に戻しましょうか?」
「ふざけんな、次は泣くまで絞めんぞ。」
「こわ、」
「……何してんですかアンタら。」
そんなやり取りを後ろから抱きつかれた状態でしていると新八くんの出勤時間になってしまった。
ん?前も言われたようなセリフ
「何って、見りゃ分かんだろ−? 飯作ってんだ。」
「いや、名前さんがご飯作ってるのは分かりますよ、でも銀さん何やってるんですか、さっきから邪魔しかしてない。」
え、いつから見てたの新八くん
声掛けてよ
「オメーが心配しなくて済むように、仲睦まじくしてんだろ−?」
「前より違う意味で悪化してるじゃないですか。と言うか名前さん、そんなくっ付けれて良く平然と作れますね」
「もう慣れた−、はい、出来た! 食べよう新八くん!銀さんも運んで−」
会話しながらも手は動かし朝食は完成
神楽ちゃんを起こしに行こ−
・
・
・
「夕食何にしようかなー?」
皆に聞いてみると「肉が良いアル−!」と元気なお返事
「お肉ね、じゃあ買い物行ってくるね−。」
「名前さんちょっと待ってください、」
玄関に向かおうとしたら珍しく新八くんに止めれた
「どうしたの?」
「銀さん、僕ら全然働いて無いです。今家計を支えてくれてるの名前さんですよ? お登勢さんの所でバイトしたお金を食費に回してくれてるの知ってますよね。」
「え、どうしたの新八くん。 」
「名前さんは黙ってて下さい」
新八くんがこわい
「女の子に食べさせて貰ってるんですよ僕達! ジャンプ読んでる場合じゃないですよ銀さん!!」
なにやら真剣な話し合いでも始まりそうなシリアスな空気に言われた通り黙っていると銀さんが口を開いた
「……新八、お前も男になったんだな。でもまァ確かにそうだよな、自分のモン買えっつといて、飯買わせてるワケだし。」
「私、別に何とも思ってないよ? お登勢さんのバイトも楽しくさせて貰ってるし、ご飯は私も食べるし、」
「そうゆうこっちゃねーんだよな、あー、夜行くか−今日辺り。」
「夜?どこに行くの?」
「バイトしに。頼まれてたんだよ、人足りてね−って。」
「依頼? なら私も行くよ。」
「いや、お前は来んな。」
「行っちゃダメなやつ?危ないの?」
「ある意味危ね−所。」
そっかぁ、残念だけど邪魔にはなりたくないし大人しく待ってよう
「名前は私と客として行くアルよ。」
「え? お客?」
「おい神楽なに言ってんだよ」
「名前に会いたいってアゴ美言ってたネ。」
「はァ? 」
「良いじゃ無いですか銀さん、いつも頑張ってくれている名前さんにゆっくりして貰いましょうよ。」
「あんな所でどうやったらゆっくり出来んだよ」
なんだか良く分かんないけど行って良いの?
アゴ美さんって誰?
「私、行っても良いの?」
銀さんを見ながら聞くと眉間に皺を寄せながら難しい顔をした後、渋々な感じではあるが頷いてくれた
・
・
銀さんと新八くんは準備があるならと先に向かい、私は神楽ちゃんに連れられ目的地に着いた
「かまっ娘倶楽部?」
「そうアルよ−。」
かまって……オカマ??
オカマバー的な?
中に入ると全力でオカマさん達に迎えられた
「あらぁ、あなたが名前ちゃん? 初めまして−あず美よ。」
「アゴ美、銀ちゃんどこあるか?」
「あず美だって言ってんでしょーが!!」
なるほどアゴ美さんってそう言う、心の中でそっと納得した。
「マジで来ちまったのかよ−。」
さぁ銀さんの元へ、と向かう前に後ろからお目当ての人の声が聞こえて振り返る
……
え!?
銀さん!?うそ、これ銀さん!?
目を見開いて目の前の人を凝視すると「あんま見んじゃねー」って、銀さんの声!!
「っ銀さん!か、可愛い!え、え、どうしたの。そのツインテール着け毛? ふわふわっ!似合う可愛い!全体的にピンクいね! 可愛い−!気だるげな感じがまた可愛いっ!」
半ば興奮状態で銀さんに近付きながら可愛い可愛い連呼した。
だって可愛い、口紅付けてるし似合う……!
「……え?何でそんな興奮状態? 」
「だって可愛い、ドキドキする。」
「えぇぇ!? 今!? 今ドキドキしてんの!? 何で男の時にしねーくせして今すんの!? 意味分かんねーんだけど!!」
「……これが恋?」
「聞けよ!!!!」
「お名前は?お触りOKです?」
「お触り!? お前ホントどうした!? ネジどっか落としてきた!?」
「ハイハイ、パー子。そろそろ行くわよ。」
アゴ美さんが、いや、あず美さんが声を掛けてきて銀さんはお仕事に行ってしまった
「パー子ちゃんって言うんだ………指名とか出来るのかな」
そう言えば着付け教えて貰っときパー子さんで慣れてるって、こうゆう事だったんだ。もっと早く教えてくれれば良いのに。
振り返ると神楽ちゃんに冷たい目で見られてたけど興奮を抑える事は出来なかった。
席に案内されるとステージにパー子ちゃん
笑顔で手を振ると呆れた顔しながらも軽く手を上げてくれた
可愛い
呆れながら手を上げるパー子ちゃん可愛い。
ステージが終わったらテーブルに降りて来てくれた
丸いテーブルに他のお客さんも一緒に囲って座っている
パー子ちゃんは他のお客さんの隣に座ってお酒注いでるけど、時折ちらっと目線をくれる。可愛い。
暫く飲んでいると1人のお客さんが騒ぎ出した
同じテーブルでパー子ちゃんの隣にいる人
「もっと愛想良く出来ねぇのかよぉ!! やる気なさそぅに注ぎやがって、可愛くもねぇんだから、ちったぁ愛想振り撒けや!」
そう言いながらお酒の瓶を手に持ちパー子ちゃんに向かって振り落とそうとした。
・
・
こんなオカマ姿引かれると思ったんだけどな、だって普通引くだろ
まさかあんなに興奮状態で喜んで来るなんて誰が思う?
ステージに立ちながら名前と目が合うと満面の笑みで手を振ってきた
いや、あんな笑顔見たことあるか?え?何で男の時より笑顔?
若干引きつった顔してただろうが手を上げ返すと更に喜んで手を振ってきた
何でだ……
テーブルに降りて、仕方無く酔っ払いに酒を注ぎながらも目線を名前の方に向けると目が合う度ににっこり笑顔が返ってくる
スゲー笑顔。めちゃくちゃ笑顔じゃねーか。
もう俺ずっとこのままの方が良いかな……
男の自分に自信を無くしていると隣の客が叫んでる事が耳に入って来ず、顔を上げると酒の瓶が俺にぶつかる寸前だった
やべーしくった
絶対ぶつかると思った
でもぶつかる瞬間顔の前を風が切り瓶がぶつかる事は無かった。
一瞬何が起きたのか理解出来なかったが瓶を振り落とそうとしたおっさんが俺の上を見て顔を青くしているし、遠くで瓶が割れる音が聞こえたから西郷辺りが庇ってくれたのか、とおっさんの目線の先に俺も目をやるとそこに居たのは名前だった
俺の後ろに立ち片足を上げて瓶を蹴ったであろう体勢
そのまま足を下ろし目の前のおっさんを冷たい目で見下ろしている
「パー子ちゃん私のお気に入りなんで、愚弄するのやめて貰えません?」
冷たい声で言い放った、いくら俺が悪戯してもここまで怒った事は一度もねぇし、見たこともない。
え、つかコイツ、俺に瓶が当たる前に瓶蹴り飛ばしたの?
俺とコイツの居た場所若干距離あったよね?いつのまに近く来たの?
名前の一声に走って逃げて行ったおっさん
そりゃ怖いよね、目ぇ座ってるし。少し殺意も入ってたな
ずっとニコニコ笑顔だったのにこの子
おっさんが消えた後、俺の目線と同じ高さになるように隣にしゃがみこんできた
「パー子ちゃん大丈夫?怪我はない?」
言いながらスルッと頬を撫でて来るもんだから、どんだけ男前だよって。
なんとか「おー、」と返事出来たが、なら良かった、とさっきまでの感情何処へ行ったってくらいふんわり笑って来て
うっかり惚れそうになった、パー子も悪くない
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