07
「というわけで別にそういう関係じゃないからね?大体私、この前転校してきたばっかりじゃない。どうしてそんなすぐに親密な関係になるのよ。」
「せやけど……その、ええ雰囲気、やったよな……なあ?」
「う、うーん……。」
女子には席を外してもらった放課後の教室。
さっきの弁解を主にトウジにしている。
確か原作ではお互いに両思い、ってことだったよね。
さっきのを見て、二人の関係がいびつに歪むのは私は望まないし。
「確かに私は女の子を愛でたいとは思ってるけれど、好きって感情はまだ抱いてないし。ていうか自分でもいうのもアレだけれど、私よ?我、私よ?って言いたいくらい私なんだけれど。」
「なんや、それ。ようわからん言い分やな。」
「オカマな奴、好きな奴は好きだよ。」
「ケンスケはシャラップ!ともかくこんな中身女子な私が相手を好きになっても良いとこ友達止まりよ?そりゃなんかすっごいことでも起きない限りはさ。
それに委員長は、男らしくて、スポーツうまくて、明るくて、い、妹思いで、えっと優しくて……そ、そういう人が好きだと思うよ!」
今、実はトウジの特徴を言っていたんだけれど、大丈夫かな?
本人はそうかと言いながら自分との共通点が多くて嬉しいのか少し照れながらウンウンと頷いている。
ケンスケもシンジも気づいたのか苦笑いをしていた。
あ、というかさっきさりげに呼び捨てで呼んでしまった。気にしていないみたいだからよかった。
「ていうか、なんだ、苗字って話してみると普通なんだな。」
「あ、それ、僕も思ってた。」
「失礼な、私をただの女子と侮るなよ?」
「身体は男だけれどな。」
ツッコミがほしいところにキチンといれてくる男、相田ケンスケ。
シンジもそれには笑ったようで口元に手を持って行って笑いを抑えているようだ。
「誤解してすまんかったな、転校生。」
「別に。そんな誤解は可愛いもんよ。あ、私のことは名前で呼んでいいから。」
「……名前、女子っぽいよね。何か理由あるの?僕も名前って呼んでいい?」
「あ、俺も俺も。」
「それは問題ないよ。……理由、そう、これは親がね。私の親、すごく女の子が欲しかったらしいんだけれど、生まれてきたのは男でさ……それで私を女の子のように育てちゃったのよ。だから喋り方もこんな感じ。」
まあ、嘘だけれどね。ちなみにこれは渚くんの入れ知恵である。
ありがとう、渚くん。アンタいい嘘つきになれるわ。
させないけれど。
「なるほど……、それも俺らは誤解しとったようやな……てっきりなんかそういう趣味があるんやと思っとったわ。」
「そうそう、顔いいのにもったいないよなーって言ってたんだぜ?」
「あら、ありがと。」
「ま、距離を置いてしまったことにも悪かったと思っとる。せやからこれからは仲良くしてくれんか?」
「もちろんよ、よろしく、三人とも。」
委員長とトウジの仲もこじれず、さらには私に男友達ができました。
これでめでたしめでたし。
……で終われば良かったのに。
「名前いるかい……っ!?」
教室のドアを遠慮もなしにバンとあけたのは、
珍しく焦った表情を見せているこの学校の生徒会長だった。
「カヲル……?」
「……カヲ……、僕の弟を見なかったよね……?」
「渚くん?いや、見てないけれど……だって今日はカヲルは生徒会の仕事ないってさっき連絡してなかった?」
二人の会話だと内容がわからなかったのか、
さっきまで一緒に話していた三人はぽかんとした表情で私とカヲルに視線を行き来させている。
私も少しまだ話が見えていないんだけれど、最初の質問からすると、まさか……。
「僕が帰っても家に居なかったんだ。それで君の家に行ったんだけれど……玄関は鍵がかかってたし……。あ、ちゃんと閉めてきたから大丈夫だよ。」
「まて、また勝手に開けたんかい。」
「中はもぬけの殻だし……、じゃあ学校に来ているのかと思ったけれどここにも居なさそうだし……。」
「……じゃあ、渚君は……迷子、ってこと?」
私の言葉に、カヲルは真面目な顔をして、一つゆっくりと頷いた。