04
「やあ、名前。我が生徒会室にようこそ。」
「どうも、生徒会長さん……。」
カヲルでいいよ、なんてテンプレートのセリフをいただいた。まさか生で聞けるとは……!ていうか初対面(ではないけれど)で名前を呼び捨てに……。
紅茶をいれているらしく、おいしそうな匂いが漂ってくる。
ところで私は何故呼ばれたんだろう?転校初日だから何かの説明かな?
生徒会室は応接室のような作りになっている。
高そうなイスに座り目の前に紅茶と砂糖を置かれる。
「ありがとう……、ところで私に用って何?」
「この話を他人に聞かれるのはマズイからね。ここまでのご足労感謝するよ。
さて、本題だけれど、僕は使徒だ。」
思わず口に含んだ紅茶を吹き出しそうになってしまった。
カミングアウトが早すぎる!これじゃあ人狼ゲームをやって「狼です、吊ってください!」っていっているようなものだ。
どんなドMよ、カヲルくん。
「といっても身体はリリンそのものなんだ。誰かがそう望んだおかげでね。……ふふ、まわりくどかったね。そう警戒しないでおくれ。僕は、唯一何が起こったかを知っている使徒……ではなく人間だよ。」
今度は口が開きそうだった。
何言っているんだろう、この子。
「理解不能、という顔をしているね、仕方がないことだ。君が夢だと思い込んでいる世界、これは本物の世界だ。君が創造した世界。」
カヲルくんは席を立ち、徐々にこちらに向かって歩いてくる。
なんだか、若干、怖い。
目元が笑っていない。まるで獲物を捕まえる猫のような眼差し。
「名前は神であり、僕らを生み出した母でもある。君に望まれてこの世界へ誕生した。僕は君に望まれて生まれてきたんだね。」
片膝をつき、私の手をとり手の甲へとキスを落とす。
え……?!
「ちょっと、なにしてんのよ!?」
「おや、嫌だったかい?中は女性なんだろう?」
「女だけれどさ!びっくりするよ!」
「告知してからの方がよかったんだね。」
「それを天然で言ってるんだったら私は『うん、それでよろしく!』っていう女に思えるの?!」
「言ってもらえたらこれから出来るんだね。じゃあ言ってくれる方が僕的には嬉しいな。」
「まだするきなの?!」
カヲルくんは天然タラシだった。
というかその前にこの世界は本物?じゃあ目の前にいるイケメンも
朝に送ってくれた美少女も生きているんだ。
「神様ありがとう!」
「神様は君だけれどね。それで、僕、名前の存在を知っているから、出来れば君を守りたいんだけれど。四六時中ね。」
「やめてよ、それ私の世界ではストーカーっていうんだからね。」
「僕のところもだよ。」
「知ってていったの?」
なるほど、さっきのぎらりとした目は見張りをしたいってわけね。
別にこの世界で悪いことをしたいとは思ってないから必要はないけれど。
「でも神様的な扱いはやめてよね、そういう扱い嫌い。」
「君が望むのなら。じゃあ僕からも。この世界で何かわからない事があったら僕に聞いてほしいな。名前の力になりたいし、君の事を知っているのは僕だけだからさ。」
「うん、了解。」
「そうすることで僕への好感度があがるからね。」
「蛇足!」
悪戯っこのような微笑みを浮かべた。
なんだ、こうして笑うとちゃんとした中学生じゃないか。
カヲルくんが仲間なら大船に乗った気持ちでいてもいいかもしれない。
若干、というかかなり近いカヲルくんを押しのけて帰宅した。
よし、明日から気を引き締めて行こう。