02
目を覚ますとベッドの上だった。
部屋はひんやりと冷え切っていて、少し寒かったのか布団を肩までしっかりと被って寝ていたらしい。
カーテンは青、布団も青、……自分の部屋ではない。

布団を剥ぎ、たってみると違和感。


「あ、あれ、私男になってる……?」


骨格とか足の大きさとか、出した声までまるで男のようで。
気になってズボンの中を確認してみる。

………………うん。

妙にリアルな夢だ。定番の頬つねりをやっても痛みはきた。
なにもする気が起きないので、とりあえず家を見てまわろう。

ドアをあけると少し広めのリビング、リビングの奥には二つの扉があり、
片方を開けると客室のようなものがあった。

もう片方はトイレやお風呂へとつながるダイニングキッチンがあった。


「まさかの3DKなの……?」


確かに裕福そうではあるけれど、これ家賃おいくら?
人は誰ひとりいないから本当に一人暮らしらしい。


――ぴんぽーん


そんな間抜けな音が聞こえた。
トイレはどうするんだろう、掴むんだろうか、なんてトイレで呆然となっていたときの来客だった。

というか、これは私、出ていいんだろうか?
もともとの住人がいて部屋に変な人がいると通報されたとかじゃないよね……?
さらにいうともし何かの集金だったらどうしよう……!

なんて考え込んでいたら「NERVから伺いました。苗字名前さんのご自宅でしょうか?」と聞いたことのある声が玄関から聞こえた。


「ミサトさん……!?……は、はい、ちょっとまって!」


ズボンをちゃんと履き直して玄関を開けると、そこには案の定ミサトさんと
あと、アスカもいた。


「あら、写真よりいい男じゃない。君、苗字くん?」

「やっぱり男じゃない。名前からして女かもしれないって言ってたのに。それとも別人?」

「あ、私が苗字名前だよ。」

「私……?」


つい癖で私っていっちゃった。まあ、男の人も丁寧にいうとき言うわよね。
アスカからジトという感じの目で見られる。

それも一瞬で、興味をなくしたらしく「早く話して帰りましょ。」とミサトさんにいった。


「苗字くんは今学校いけているかしら?その、……ご両親が亡くなられてからすぐ中学校に行かなくなったでしょう?失礼だけれど、少し調べさせてもらったの。」


ミサトさんからの話から察するに私は中学生なのね。把握。

彼女は自分の肩に下げていたバッグからクリアファイルを渡してきた。
中には書類のようなものが入っている。表には「NERV学校支援本部」と書いてあった。


「学校、支援本部?」

「そ。君みたいな、ご両親を亡くされてて義務教育が受けられない状態の子達を支援するのが私たちの仕事なの。
私たちは『第三東京市立第壱中学校』というところを創立しててね。貴方も入学の条件を満たしていて。そこで良ければうちに来ないかしら、と誘いにきたのよ。」

「でも、私、多分お金が……。」

「もちろん学費はいただかないわ。家賃が心配なら寮も用意する。どうかしら?って言ってもすぐに返事なんて難しいわよね。」


胸ポケットに入っていたメモ帳とペンを取り出すとそこに何かを書いていく。
アスカの方をチラリと見てみると、外の熱気で不機嫌になっているのか
足の先でタン、タンと叩き、仁王立ちして目を閉じている。


「はい、これ私の番号。どうするか明日連絡くれるかしら?」

「……わかりました。」


そういって彼女達は去っていった。
ドアをあけて気づいたんだけれど、ここマンションだったのか。
しかも階数は2階や3階じゃない高さみたい。

眺めはめちゃくちゃいい。


「入学は……確定ね。」


これからが楽しみで書類を抱きしめながら一人でほくそ笑んでしまった。
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