19
夜、自室へと行くといきなりの質問攻めだった。


「苗字って好きなやつは惣流?」

「へ?」

「ていうかもう付き合ってるんだろ?」

「え、いやいやいや、アスカ好きな人いるよ?」

「え?!マジかよ!」


こんな感じでアスカとの関係を聞かれてしまった。
アスカには立派……、と言えるかいささか不安だけれど、立派な好きな人がいるんだ。
あの胡散臭い笑みを浮かべた生徒会長。渚カヲルという存在が。

私はただ皆とおもしろおかしく過ごせればいいんだ。


「じゃあさ、じゃあさ、名前の好みのタイプってどんなやつ?」

「苗字は男からも引っ張りだこだから選びたい放題だよな。」

「言えてる。俺、女子と話してるとき、苗字と一緒のクラスって言っただけでかなり話盛り上がるんだぜ、モテモテだな、おい。」

「やだ……っ、私はただ皆を平等に愛して生きていたいのよ。」

「あはは、なんだそれ!」


そろそろ消灯時間ということだったので個別にベッドに入っていく。
お泊りというのはどうも興奮するらしく、寝れずにしばらく暗い中でも話し続けていたが、いつの間にか眠っていたようで、
目が覚めると既に起床時間の1分前くらいだった。

……この身体、ホントに恐ろしいわ……。

朝からは皆で体操したあとに掃除や片付けをし、10時前から昼食の準備をし始めた。
今日の昼食は林間学校よろしくカレーだ。でも御飯は竹で炊くという事だったので、それはちょっと楽しみ。


「じゃあ私は竹でも切りに行きましょうかね。女性の皆さんは材料を切っててくださいな。」

「はーい。」


可愛らしく皆があわせて返事をしてくれたので軍手をきゅっと手につける。
女子たちはその姿を見ててきゃあきゃあと歓声のようなものをあげている……、あの……私、ただ軍手つけただけだからね?

包丁のような刃物をもって竹林に入り、フラフラと良さそうな竹を探していたら知り合いとばちりと目が合う。


「レイも竹担当?」

「ええ。碇くんと一緒の班だから男子が一人足りないの。それに貴方が竹林に入って行くのが見えたから。」

「可愛いこと言ってくれて。そうねえ、竹の人たちも何人か集まって一つの竹を切ってから分けてるみたいだし、一緒に竹退治でもしましょうか。」

「かかってこい。」

「男らしい!」


そういう事で竹退治はレイの班の人を入れて4人で行うこととなり、手頃な竹を見つけると私とレイは倒れないように押さえつけた。

そういえば気になっていたことがあったんだよね。
今切っている二人もおしゃべりに夢中だし、声を潜めてレイに聞いてみよう。


「ねえ、レイ、ここの学校の人たちは親が居ないってことだけれど、レイやカヲルは親っているの?それも私創ってた?」

「いえ、居なかった。だから私たちは本部が支給した『設定』がある。」

「設定……。」


なんで私、そこまで作れなかったのだろう。きっと彼や彼女も親がいたらきっと違う生き方ができただろう。
……これは私がホントに親代わりになろうかな。


「ちなみにレイはどんな設定なの?」

「私は……、碇ゲンドウの隠し子という設定。」

「それいいの?!それでいいの?!」

「問題ない。受理された。」

「大人たちはいつだって黒いものをすぐ受け入れるんだ!」


なんでそんな頭可笑しい設定にしたんだ!もっといいのがあっただろう!
ユイさんは許したのか?!リツコさんはそれでいいのか?!


「じゃあカヲルは?」

「キャベツから生まれた。」

「今度から、あ奴をキャベツ王子と名付けよう。」


あれか、世に出ないから適当に作ったんだろう、そんな設定。
ひどすぎる。

竹が切り終わったのかいきなりググッと重さが加わる。
レイも油断していたらしくバランスを崩していてコケそうだったので
片手で竹を押さえ、片手でレイの腰に手をまわし支えてあげる。


「!……ありが、とう。」

「どういたしまして。」


真っ赤に頬を染めるレイが可愛く感じて、頬が緩んでしまった。

このあとに食べたカレーも美味しくできましたとさ!
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