アスカハッピーバースデー
「はい、これ。」
「……?なによこれ。」
彼女に可愛く赤と黄色のチェックの包装紙でラッピングされた箱を渡す。
アスカは首を傾げるが、今日がなんの日かわかっているから少し照れくさそうにしている。
もう、そういうところ意地っ張りで可愛いんだから。
12/4、冬の一日であり、アスカの誕生日。
「アスカ、誕生日おめでとう。」
「あ、ありがと。開けていい?」
「開けちゃう?それ、手作りだからかなり不安なんだけれど。」
それを聞いた瞬間にアスカはガサガサと急いでラッピングを開けていく。
ちょ、私そのラッピングも頑張ったんだけれど!
中から出てきたのは白い箱で、その箱の中身は周りをワタに包まれたスノードームだった。
「それ、作れるんだね。意外と簡単でびっくりした。」
「アタシにはアンタの器用さにびっくりしてるわよ。ホントなんでも出来るわよね。」
「なんたって私は万能ですし?」
「はいはい。って、これ……。」
そのスノードームの中には風景の写真を貼り付けて、真ん中にペンペンを模した人形を入れた。
アスカがこれ、といったのは風景の写真だろう。ここ、第三新東京市の風景を貼り付けている。
それはつい先日、アスカと一緒に行った場所だったから。
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「は?お気に入りの場所?」
「そ、一緒にいかない?まだまだ第三新東京市に慣れてなくってさ。観光ついでに教えてよ。」
「アンタねェ……、ここに来てから長いんじゃないの?」
「いえいえ全く!親が死ぬちょっと前にこっちに引っ越してきたから!親が他界してから家から全く出てませんでしたし!その数ヶ月ですべてを周れるわけじゃありませんし!」
「なんでそんな説明的に言ってンのよ……、ま、いいわよ。」
「やった!じゃあこの後一旦帰ってから駅に集合でいい?」
「りょーかい。」
そうして、のちに合流を果たし、色々とショッピングをした後に
アスカと一緒に彼女のお気に入りの場所である高台へと行った。
夕方になっていたのでキラキラと反射するビルたちがとても綺麗で、
つい携帯で写真を撮っていたのだ。
自分でも納得できるような出来になったその写真はお気に入りで、二人で綺麗に撮れたねとはしゃいだものだ。
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「これ、あの時の、よね?」
「うん、そうそう。よく覚えてたわね。」
まさか彼女がその時のを覚えているとは思っていなかったので少し面食らってしまった。
アスカにとっては、少し面倒な一日になっていたんだろうなと思っていたのに。
「当たり前じゃない。名前と初めて一緒に出かけたのよ?覚えてて当然でしょ。」
そう、ぶっきらぼうに言われて思わず胸を貫かれた。
何この子!可愛すぎるでしょ!!
そんな些細な一日も覚えててくれるなんて、嬉しい以外にないわよ。
「何笑ってんのよ……。」
「ん?わかるでしょ?」
「ふん、アタシの誕生日なのになんでアンタが喜んでンのよ。変なの。」
「可愛い可愛い友達の生まれた日を喜ばない人なんていないの。」
手を伸ばしアスカの頭へと乗せ、優しく撫でると「子供扱いするな!」と怒られてしまった。
でも、その手を振り払われることは無く、大人しく撫でられている。
アスカは気恥ずかしくなったのか私が上げたスノードームをくるりと一回転させた。
「わ、……綺麗。」
「まるで第三新東京市に雪が降ってるみたいでしょ?」
キラキラと雪に見立てた白い砂がゆっくりと下に落ちていく。
12月生まれの彼女にぴったりだな、なんて思って作ってみたんだ。
彼女はそのスノードームを子供のように、キラキラとした目で見つめている。
思った以上に喜んでくれたみたいでよかった。
……なんだか、今なら奇跡でもなんでも起こせるかもしれないな。
「ねえ、アスカ。」
「え?」
まるで雨が降ってきたかのように手を出して手のひらを空に向ける。
その手にはふわりとちいさく、そして冷たい何かが落ちてきた。
こんな奇跡、望んだっていいよね。
「雪……。」
「ふふ、きっと、アスカが降らしたんだよ。」
「……名前と一緒に、降らしたんじゃないかしら。これ作ったのアンタだし。」
「……ありがと、じゃあそういうことで。」
「あー!!寒い!なんでこんなに冬は寒いのかしら!」
自分で言った言葉に照れたのか彼女は顔を赤くしながら、大きな声を出す。
このお姫さまは本当に可愛いな、なんて思いながら彼女の手をとると確かに指先が芯まで冷え切っていた。
「ほら、アスカの誕生日、まだまだ時間があるんだから遊びに行くわよ。」
そういって自分のポケットに彼女の手ごと自分の手を突っ込み歩き出す。
アスカは驚いた声を出しながら、慌ててついてくる。
私の顔、少しデレデレしているかもしれない。笑いが止まらないや。
「ちょ、もう!恥ずかしいんだけれど!あと、……遊びに行くんだったらアタシ今日誕生日だから奢りにさせるんだからね!」
「はいはい。」
アスカ、ハッピーバースデー。