15
林間学校、それはクラスメイトと交流を深めるために行う行事。
あれ、私の時は中学二年生だったっけ?昔の記憶だったためそこらへんが曖昧だ。

まァ、タダでいけるし、楽しいからいいか。
……と、ふとちょっと気になる事があった。


「まさかと思うけれど、このご都合主義な展開って……私が招いたことなのか?」


ありえない訳ではない話だ。世界を作り上げちゃうくらいだし。(土台を作り上げたのはあのムカつくカミサマだけれど。)
自分の都合のいい状況を作り出すのも可能かもしれない。


「でも、なくすのはもったいない事だしね。」

「あ、あの、苗字くん!」

「ほ、ほい!」


肘を立てて口に手の平を当てて喋ってたから聞こえないかと思ってたけれど、
まさか独り言が煩いとかのクレーム?!

ドキドキしながら彼女の方に椅子に座っていたけれど気をつけしながら向いたら
ほんのりと顔を赤くした斜め前の席の女の子が隣に立っていた。


「えっと、林間学校同じ班だから、よろしくって事を言いたくて……。」

「ああ、うん、よろしく。でも林間学校の班って何するんだろうね?」

「確か、レクリエーションの時とか、あ、なんでも宝探しやるそうだよ!きっとそれ一緒にやるんだよ!」

「ホント?!やだ、楽しみ!」

「うん!……ふふ、なんだか苗字くんってそこらの男子より話やすいね、話してて安心するって言うか。」

「でしょー?」


もともと女の子やっていましたからね。そこらの男子より女子力は高いんだから!
って男子と競ったらそりゃ勝てるか。
なんだか最近、男子より女子と仲良くなってきた気がする……。


「じゃあ、当日はよろしくね、苗字くん!」

「うん、よろしくねん。」


授業のチャイムがなり、急いでその子は席に座る。
そうか……、班はこの六人なんだな。と周りを見渡す。
自分の周りの六人は主人公達の周りにいる子達じゃなくてモブの子達。

……なんて言ったら失礼だね。彼らにも命は等しく一個ずつあるのだから。

そうして私はノートに向き合うのだった。





「…………。」


家に帰ると大変不機嫌そうな渚くんがふくれっ面でソファに足を組んで座っていた。
私に怒らせた心当たりはない。


「な、渚くーん。」

「…………。」


反応から察するに私が原因のようだ。なんだろう、何かしただろうか。
自分の胸に手を当ててみてもやっぱり思いつかない。


「渚くん、足を組むと赤ちゃんができにくくなるそうだよ。」

「それは女性の話だろう?」


とか言いながら足を戻す渚くんにちょっと萌えた。純粋な子は好きよ。
しかし、怒っている原因は教えてくれなさそうだ。まいった、手詰まりだ。
もうお手上げだ、と手を挙げた時に奥の部屋からカヲルが出てきた。


「……また不法侵入。」

「合鍵作ったんだよ。」

「いつの間に!そろそろ嘘が通じなくなってきただろうと思って裏でこっそり笑ってたのに!ていうか私の部屋になんの用だ!」

「物色だよ。」

「爽やかに犯罪をしてるんじゃない!」


最近カヲルにツッコミしかしていないような。もう、お母さんは疲れましたよ。
そんな事よりも、とカヲルは渚くんを見てつぶやく。そんな事って……。


「いつまで拗ねているんだい?学校の決まりごとだからしょうがないだろう?」

「…………。」

「え、カヲルは事情を知っているの?」

「知っているもなにも、こんな事にしたのは僕だよ。」


お 前 だ っ た ん か い
ふつふつと漏れ出す怒気を悟ったのかカヲルまで降参のポーズを取った。
これで渚くんがこのポーズをとったら全員このポーズをしている事になる。どんな状態だ、それ。


「いや、僕はただ本当の事を言ったまでだよ。君が林間学校で2、3日いないよと。」

「は?」


思わず脱力して手を下ろしてしまった。
なに、じゃあ渚くんは私が居なくなることを知って拗ねていたのか。


「なにそれ可愛いぃいっ!」

「……母、しばらく居ないならその前の日は僕の好物を作るんだよ。」

「うん!めっちゃ作る!」


別に今生の別れということでもないんだけれど、置いていかれて寂しいんだろうな。
ぎゅうっと抱きしめるとぶっきらぼうにそう言われた。
可愛すぎるでしょ!これうちの子です!可愛いでしょう!


「……あれ?僕空気?」
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