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「はぁ……。」
朝一からため息で始まってしまった。
いかんいかん、幸せが逃げてしまう。と今のため息を吸うように息を吸い込む。
「相変わらずモテモテね。」
「あまり嬉しくないのよね……。」
バッグの中にラブレターであろうものを纏めてから入れる。
まあ、中身はどうせ『男らしさに好きになりました』とか『カヲルくんとの恋愛、陰ながら応援しています』とかの内容だ。
……男らしさ?この私が?カヲルとの恋愛?私ホモじゃないんだけれど……。
カヲルは確かに美形だし、好きという感情を向けられて忘れていた女心をドキッとさせるけれど、多分アレは親がいないからどう接していいかわからないんだと思う。
「またあの三バカトリオに茶化されるわね。」
「あまり茶化すようだったら周りからBLに見えるに接してやる。そして腐女子のネタになれ。」
「……アンタ黒いこと考えたわね。」
一番凄いのは靴箱の中にカヲル×私の同人誌が入っていた。思いっきり朝から吹き出しましたとも。
しかも私の方が受けかよ!
アスカと二人、階段で2階へ上がっていると下からシンジの声が聞こえた。
「おはよ、今日もラブレターもらったの?」
「シンジ、好きだよ。」
「と、突然何?!」
後ろを振り返りシンジの背中に手を回し、シンジの左手を右手で取り顔を近づけてジッと見つめる。
シンジは顔を赤くしながらも背中を少し反らして抵抗をする。
「早速黒い沼にはハマったわね。」
「シンジ、今日も可愛いね。君の黒曜石のような髪に触れていたいと思うのは私がシンジしか見えていないからかもしれない。」
「黒い沼ってなに?!ていうかなんでこんな事になってるの?!」
あー、楽しかった。……あれ、もしかしてカヲルはこんな反応を見たくて
私やシンジにこんなちょっかい出しているのでは……。
教室につくとケンスケからの第一声もラブレターだった。
「ケンスケ、私は君のその瞳に写っていたいよ。」
「……変なモンでも食った?」
「僕もそれさっきされたんだ……。」
君たちがラブレターの事ばかりいうからだろう。ついでに何も言われてないけれどトウジにもしてあげた。完全にとばっちりである。
気持ち悪いことすんなと怒られた。
「そういえばさー、お前のファンクラブなんだけれどさ。」
「ファンクラブなんてあるの?!初耳!私も入りたい!」
「お前はナルシストか!」
「じ、実態が気になるじゃん!でケンスケ、その物好きファンクラブがなんだって?」
「物好きって…まぁ、そのファンクラブが最近手を組んだらしい。」
「はァ?何とよ。」
「アスカまで食いついてきた……。」
「渚カヲルファンクラブと。」
「腐女子ばっかりだ!」
頭を抱えてしまった。もう私のスクールライフはお先真っ暗だ。
お先真っ暗というより薔薇しか浮かばない。もっと華やかなのがいい……!
「例えばアスカとか!!」
「な!?あ、アタシ別に腐女子じゃないわよ!」
おや、腐女子というのを知っていたのか。
カバンの中から教科書を取り出しさっきのラブレターをチラリと見る。
……あとで中身を確認しなければ。
そういえば、体育祭のあとだけれど、みんなも私のキャラを把握してくれたらしく気兼ねなく話してくれるようになった。しかも女子から話しかけてくれる方が多い。
せっかくここにいるんだもん、仲良くしないとね。
考え事をしていると予鈴がなり、皆席につき、しばらくするとミサト先生が教室に入ってきた。
なんだかとても上機嫌だ。
「アンタ達ぃー、喜べ!なんと、来月林間学校に行けることになったわよ!」
「林間学校?」
「そーよん!山に行くわよ、山に。」
林間学校……、古い記憶をたどってみる。
確かに中学校の頃か小学校の頃にやったことがあるなあ。
「というわけで班を組んでね。とりあえず明日からのホームルームは林間学校の件で話し合うからよろしくん!」
こうして、生徒たちはざわざわと騒ぎ出す。
私も、なんだかこういった事はすごく久しぶりで今から少しドキドキしていた。