13
「遅かったわね……ってなんでアンタがここに?!」

「名前に誘われたのさ。」

「お邪魔するよ。」

「まー、まー、いつものメンバーってことで!」


アスカの元に戻ると結構驚いてくれた。やったぜ!

私がブルーシートへと座るとカヲルと渚くんも一緒に座った。
その時に渚くんはこっち、と自分の隣に座らせることも忘れずに。

よし、これで多少は話しやすいでしょ。
この場合、アスカがドンドンアタックしていかないとね。

なんてウンウンと頷いていたらアスカがこのセッティングに気づいたらしく
般若のような顔で睨んできたので箸でウインナーをつき顔の前に持ってきて
ウインナーの盾を作る。


「そういえば、皆あとは何の競技にでるんだい?」

「アタシは午後は実はないのよね。だから日陰でちょっとサボろうかしら。さっきから肌が痛いのよね。」

「あ、私も日焼けしてるかも……、日焼け止め塗ってないし……。私の競技はあとクラス対抗リレーね。え、何?日焼け止め貸してくれんの、アスカ。」

「ん。アタシ後で塗るし。」

「ありがとー!」


そして、塗り始めて気づく。……あれ、私また手を洗ってこなきゃいけないんじゃ……。まあ、いいかと思い席を立って手を洗いに行ってくるというとアスカは
「ばーか」と笑っていた。

数歩歩き、ちょっと引き返す。


「何?忘れ物?」

「うん、渚くん一緒にきて。」

「?」

「僕が行こうか?」

「いや。」


首を傾げる渚くんにおいでおいでをすると首を傾げながらついてきた。
危ない、危ない。アスカとカヲルがせっかくふたりっきりになるチャンスを逃すところだった。

水飲み場で手を洗いながら、後ろから背中をなぞるように視線を感じる。


「……すっごい不思議そうね。」

「事情はわかった気がする。でもどうしてあんな事するのかがわからないだけ。」

「あんな事って?」

「ああいう男女が仲を深めようとする機会を与えること。」


冷めた様にどこかを見つめる渚くん。
多分その先にはカヲルとアスカがいるんだ。


「ねェ、渚くん。君は恋をしたことがある?」

「……ないね。」

「なんともったいない。恋はするべきだぞ、少年。ああ、でも好きだからって殺しちゃいけないからね。どっかの大馬鹿野郎みたいに。」


渚くんは誰のことを行っているかわからないようだった。当たり前だけれど。私は根に持つからね?


「恋をするとね、人間は色々なものが活性化するんだよ。一つ一つに喜びや悲しみを見出すんだ。それが楽しめるのが恋なんだよ。だから今アスカは楽しんでる。そんな幸せそうに楽しんでるならばお手伝いしたいでしょ?」

「よくわからないけれど、母がお人好しなのはわかった。」

「はて、なんのことやら。」


きゅっと音を立てて蛇口をひねり水を止める。そろそろ二人のところに戻らないと某心配性お兄ちゃんがまた弟が迷子になったと言いかねないからね。

渚くんと手をつなぎ二人のところに行くと、そこにカヲルの姿がなかった。

あいつ……!私の作戦まで無駄にして!

その後メールを送り、無事合流を果たしご飯もしっかり食べて後半戦に突入した。


『それではクラス対抗リレーに入ります。第一走者……』


そうアナウンスが入り、私達のクラスも呼ばれる。
グッと腕を伸ばし、屈伸をして……と言っても私はアンカーなので今はやることがないんだけれど。
パンっと軽い音が鳴ると第一走者が皆険しい表情で走り出す。
うちのクラスは……どうやら最下位だ。
他のクラスは一番最初に突き放す戦法をとったらしい。

第二走者で少しずつ追い越したけれど結局トップには追いつけず、私の番になった。

第五走者が苗字!と叫んだ。手を伸ばして、彼の顔を見る。
まるで「頼んだぞ」と口に出さなくても伝わるような眼差しを私に向けている。


「任しときなさい。」


そういってバトンを受け取り、前へ前へと意識を飛ばす。
皆の声援が聞こえる。名前を呼んでくれる人もいる。皆、一丸になっている。
その思いに応えなきゃと一人、また一人と抜かして、ついに私はトップへと追いついた。


「うわッ!」


……けれど、追い抜こうとした瞬間、ガクリとバランスをトップの走者が崩してしまった。
咄嗟にそれを飛び越えてしまったけれど……。

後ろを振り向くと辛そうに膝を抱えている男の子が。
この子も学校が終わったあとも残ったりして一生懸命練習したのかな……?

なんて思っていたら一人が私の横をすり抜けた。


「はー……、私バカよね、ホント。」

彼の元に行き膝を抱えていたので抱き起こしてお姫様だっこをした。
おお、驚いてる。ていうか放送部の子が「男同士のお姫様だっこ?!」なんて身を乗り出して興奮してる。貴方、腐女子ね。ていうかマイクONのままだからね。


「え、なんで……。」

「さー、私お人好しらしいから。どうせもう皆に追いつけないし、このまま二人でゴール!でいいんじゃない?あはは、誰もビリがいなくてラッキーじゃない?」

「……な、なにをいっていいかわかんないけど、あ、ありがとう。」

「どーいたしまして!さ、ゴールに行ったらそのまま保健室までこのままよ!」

「せめてお姫様だっこはやめてくれ!!」


ここで皆が私達の会話が聞こえていたのかクスクスと笑い声が聞こえる。
二人でゴールにつくと拍手と、あと「いいぞー兄ちゃん達ー!」とか、
なんか悲鳴みたいな感じの女子の声が聞こえた。

そんな温かい感じに思わずくすぐったくなって笑ってしまった。


……ちなみに次の日、学校新聞に取り上げられ、私の靴箱にはラブレターが何通か入っていた。


「うーん、結果オーライ?」
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -