09
「増えてる!!」


そんな大声に飛び起きた。
寝起きで回転しない頭をフル回転させて今の言葉にツッコミをいれようと頑張ってみた。


「あ、アメーバか……っ!」

「5点!」


意外と厳しかった。もしかしたら彼女はお笑いにうるさいのかもしれない。
ちなみにいまのは10点満点中の5点なのだろうか。それとも100点満点なのだろうか。

そんなお笑いに厳しいアスカは、おはようとカヲルに声をかけられて小さく悲鳴のようなものをあげていた。
あれで好きの感情を抱いているからなんだかアスカも可愛いものだ。

そして現在私の部屋には渚くん、カヲル、アスカと美男美女が揃っている状態に。


「眼福……。」

「とか言ってる場合じゃないでしょ!用意できてないのアンタだけなんだから!」

「よしきた!」

「わ!こ、こら!乙女の前で脱ぐな!」

「裸なら負けないよ?」

「張り合うな!このナルシスホモ!」


ここ最近バタバタすることが多いなあ、とアスカに背中をグイグイ押されながら思っていたけれど、主に私のせいだった。
ごめん、明日からもう少し早めに起きます。

そういえばどうでもいい話だけれど、昨日はカヲルも一緒にお風呂に入ってきた。
彼も渚くん同様に私の裸をみてがっくりとうなだれていた。
なんだ、君たちは。私が女子の身体をしていると思っていたのか?
男子の格好して過ごしているなんてどこの夢小説だ。

……でもそれでもよかったかもしれない。とちょっと後悔しながら登校。

学校につき、朝礼が始まる。
自分の席について席を撫でる。よし、傷ついてないね。
実は未だに少し怖い。もしかしたら、こんな感じだし転校生だし、イジメとかあるんじゃないだろうかって。
しかもたかだか数日でカヲルと仲がかなり良くなってしまった。
ファンの子とかいたらきっと何かしてくるだろう。

夢小説とかであったなぁ。……でも今の状況をみるとトウジとかも普通に接してくれるし、アスカとかも仲良くしてくれるし。
つまりイジメの対象ではないけれど、接しづらい……とかなのかな。

ならば、どうにかしてクラスに溶け込まないと……。


「というわけで体育祭だけれど、クラス対抗リレーは先に決めといてって言われてるのよねー。」

「それよッ!」


グッドアイディアと思ったら思った以上に声を張り上げてしまい全員のキョトンとした顔がこちらを向く。
そんな皆の顔を無視して挙手をする。


「え、どうしたの、苗字くん……。」

「ミサト先生、私、クラス対抗リレーにでます!」


別に目立つことが好きとか、そんなことはない。
ただ、このクラスに貢献したいんだ。一位取れるくらい頑張らなきゃ。


「センセー、参加しまーす。」


早速足が早くなるように『足が早くなる方法』と自分のパソコンで検索しようとしたら別のところから声があがった。
トウジだ。トウジも確か運動神経はよかったはず。
これでまた一位の表彰台への道が近くなったというわけだ。

……多分表彰台とかないだろうけれど。

その後、続々と選手が決まり、ひとまずクラス対抗リレーのメンバーは決まった。
結局知り合いはトウジだけとなった。

今更だけれど、なんでカヲルいないんだって思ったけれど、なるほど。確か彼は一学年上の年齢だったな。ということは先輩なのか。


「あ、あの、よろしく、苗字、さん……?くん?」

「どっちでもいいよ。よろしくね!」


同じくリレーを走る男子から話しかけられた。ちょっと嬉しくなって笑顔で答えると他の男子からも続々よろしくという声をかけられた。
な、なんだなんだ、皆もしかして私と話してみたかったのか?


「気軽に名前で呼んでいいのに。」

「せやな、気ぃ使って話す方が疲れるやろ。」

「そ、そうだな。そういえば名前って、どうして今の時期に転校してきたんだ?」

「親の都合でね。うちの両親海外に行かなきゃならなくなってさあ、それで日本で私を預かってくれるオジさんがこっちにいたから引っ越してきたの。」

「へー、大変だなぁ。外国についていかなかったの?」

「外国語デッキマセーン。ワタシ日本人デース!」

「あはは。なんだよ、それ。」


……ちなみに今の嘘も渚くんが教えてくれた。君はいい詐欺師になれそうだ。
お母さんがそんなことはさせないけれどね。

そんな会話をしていて、ふと思い出した。
今、私の本当の家族はどうしているんだろう。私を思って傷ついているのだろうか。
泣いているかもしれない。
少し喧嘩もするけれど、仲のいい家族だったと言える人たちだった。


「お、おい、大丈夫か?」

「ごめん、なんか気に障るようなこと言ったかな?!」

「へ?」

「お前、何か凄い悲しそうな顔しとったで。体調でも悪いんか?」

「……ああ、ちょっとしたホームシックだね。」

「そやろなぁ、親と離れとったらそうなるわ。」

顔を覆い、ひと呼吸。
まいったまいった。少し泣きそうだった。
……それもあの傍若無人なカミサマがいたせいだけれどな!!!


「なんか今度は怒ってる。」

「女の子の日ちゃうか?」

「身体は男の子だもん!」


……アイツ今度あったら絶対この身体で全力で殴ってやる。


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