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早く走る方法、足を早く動かす。
手を振る、胸を張る。


「……よし。」


グラウンドを駆ける、駆ける。誰よりも早く。
思った以上に、前の身体以上に速くなっているようで、別のクラスであろう人もぐんぐんと追い抜く。

……カミサマは私にいい身体を与えてくれたようだ。
よし、後で自分へのご褒美に甘いものを食べよう。

体育祭まで残りの時間はあるようでないからね。
ひたすら練習練習!







「おー……頑張ってるなぁ!名前は!」

「しかし……、ああやってみると男から見てもかっこいいよな。」

「足も長いし、顔もいいし、確かに格好良いよね……。」

「そうやなぁ、あれで両親は外国住みだから英語もペラペラやろうし、中身が女子じゃなかったら女子の人気をかっさらってたやろうな。」

「は?何言ってンの?三バカトリオ。名前の両親亡くなってるわよ?」

「……は?お前こそ何言ってんねん。名前の両親は外国に住んでて、今日本のおじさんのとこに預かってもらってるゆうてたで?」

「違うわよ、だってアタシ、アイツの家に毎日迎えにいってるけれど、誰もいないし、ミサトと一緒に行ったとき、亡くなってるって言ってたわよ。」

「え、じゃあなんで……。」

「……もしかしてアイツ、気を遣わせまいと嘘ついたんじゃない?」

「そういえば、俺らと話したときスッゲー悲しい顔してたよな。」

「……ホームシックの時か。せやったな……。」

「……。」

「……。」







「あっつー!なんでこんなに暑いんだ!使徒が居ないから常夏じゃないのに!もー、帰ってシャワー浴びたい……。」


そんなことをブツブツと呟きながら汗を拭うと小さく悲鳴のようなものが聞こえた。
条件反射的にそちらをみると、別に誰かが怪我したわけでもなく、
ただ女子同士できゃあきゃあと笑い合ってるだけだった。

私も、女子だったらあんな風に誰かを応援してたんだろうな……とボーっと見ていると更に女子達は叫び声に近い声を上げて肩を叩き合っていた。


「元気だなぁ……。」

「お疲れ。」

「あれ、アスカ……、と皆?」


声をかけられ、後ろを振り向くと何故か不機嫌そうに立っている皆。
シンジは苦笑いで、ケンスケは何故かニヤニヤとしていたけれど。
なんだろう、何かの罰ゲームをするのかな?


「アンタ、嘘はいけないわよ。ドロボーの始まりよ?」

「へ?嘘?」

「ワイら友達やろ!」

「あ、はい……、え、何何?!話見えないんですけれど!」

「名前さぁ、両親海外にいるっていってただろう?それに怒ってるんだよ、トウジは。」

「気ぃ遣ってそんな嘘言ってくれたのはわかる。しかしなぁ、友達やったらそんな隠し事なしや!両親亡くなってるなら言ってくれや。嘘つかれる方がワシらは傷つく。」

「あ、ごめん……。」


……いや、あれ?そうだっけ?
そういえばミサトさんが確かに一番最初に言ってた気がする。
調べさせてもらったとか、両親が亡くなったとか。

……完っ全に忘れてた!
大丈夫、亡くなってないんだよ、本当の両親。むしろ私が死んだ。どっかの私中毒カミサマ野郎のせいで。

だから……。


「皆が悲しい顔しないでほしいな。私は皆が好きよ。」

「じゃあ、嘘は今度からなしってことで、いいかな?」

いままで傍観していたシンジが口をひらいた。
確かに嘘はいけないな。……ただ私は皆に重大な事、つまりこの世界の住人ではない事を隠している。
ていうかむしろ創造主だということを。

といっても信じないだろうけれどね。


「わかった、ごめん。皆。あとありがとう。」


この世界に来てから無意識に緊張して居たんだろう。
なんだか肩の荷が降りたかのように、ポロリと落ちたように笑みが自然とでてきた。


……なんだか、また遠いところで叫び声が聞こえた気がした。


「あと、嘘はいけないけれど、アンタって優しいトコあんのね。ちょっと見直した。」


小さく、そして照れながらアスカが言ってくれた言葉は、なんだか疲れた身体には甘く感じて、後で甘いものの補給はいらないかもしれないな、と感じた。


そして今日の渚くんのありがたい一言→
「あぁ、それは設定ミスだったね。」
「デスヨネー。」

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