地下鉄に揺らされる恋心
帰りにどこかに寄ろうか、そんなこと考えながら疲れた身体を椅子に預けた。
昨日はお肉メインだったし、今日の晩御飯は魚でもいいかもしれない。
豆腐もいいかもしれない。あっさりしたものがいいかもしれないな、
なんて思っていたらお腹がなってしまった。
恥ずかしくなって聞かれてないか辺りを見回したら
いつの間にか目の前にクラスメイトが立っていた。
聞かれたかな、なんて伺っていたけれどどうやら彼女は音楽を聞いているようだ。
音漏れもしていないからそんな大きくは聞いていないのかな?
彼女も集中しているから僕に気づいてないのかな?
なんて思っていたら彼女と目があった。
いつの間にそこに、なんて感じの驚いた顔をされてしまった。
(隣座らないの?)
そんな感じで隣を指差したら頭を下げて隣に座った。
特に話すこともなく、うとうとと意識を飛ばしていたら
小指に何か当たった気がした。
徐々に温かくなる指に違和感を覚えて手を見てみると彼女の小指が僕の小指にあたっていた。
顔は真っ赤にして唇をかみ締めている。
なんだか可愛いなと思い、顔をしっかり見たくなったので身を乗り出したら
彼女はバッと顔を上げて僕の方を見た。
――か、わ、い、い、こ、と、す、る、ね
なんて、口に出していうのは恥ずかしかったから口パクで。
彼女は何を言ったのか分からなかったらしく、ポカンとしていたけれど
なんだか、自分までドキドキしてきたので顔を逸らして狸寝入りをした。
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