子猫と雪解けの関係
「僕らが生まれる前、四季というものがあった。移り変わる景色にリリン達は大層心を奪われたそうだよ。」
そっと大木の幹に手をあてるカヲル。
その足元には先日埋めた野良ネコのお墓が。
「罰当たりめ。」
「死を迎えることにより、魂と身体は引き離される。コレはもうただの物体でしかないよ。腐りゆく、物体。」
「それ、桜の木よね。」
カヲルが手をついた木を指さす。
花を成さないので葉っぱの形でしかその木を判別できないけれど、
桜の木は有名だから知っている。
「そ、桜。」
「桜の花言葉は優れた美人、純潔、精神美、淡泊……なんかアンタみたいね。」
「……どれも当てはまらないと思う。精神美とか、よくわからないし。」
何物にも染まっていないカヲルを見てため息をつく。
なによ、なんだかんだで野良猫の為にお墓作ったり、
わざわざ桜の木を見つけてその下に埋めたくせに。
「桜、咲いて欲しいわね」
「うん、きっと綺麗に散るよ。花びらがここ一体を綺麗に埋めてくれる。」
カヲルは何かを訴えるかのようにポンポンと幹をたたいた。
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