飛んでいくよ
真っ白な紙を二つに折り曲げて、更に折り曲げて飛行機の形をつくると指に挟んでドアの方に向かって飛ばしてみる。
真っ暗な空を眺めると今にも落ちてきそうな星達が広がっているのに私の心はどうにもそれを素直に綺麗だとは思えなかった。
「また帰ってこない。」
帰ってこない、というか戻ってこない、かな。
彼の帰る場所はここじゃなくてあっちの施設だってわかってる。
でも、たまに私の家までくるから、それを待っている。
「すき。」
真っ白な紙に吹きかけるように言葉をだしてまたそれを飛行機の形へと変える。
真っ白な飛行機は貴方みたいね。私の指からするりとすり抜けていく。
かちゃりとドアが開き、入ってきた人は足元にぶつかった紙飛行機をゆるりとした動作で拾い上げた。
「『私はもはやお前を愛してはいない。それどころかお前を憎んでいる。』といったのはかのナポレオンだったと聞くけれど。……それが少しわかった気がするよ。」
「嫌いになったの?私のこと。だから帰ってこなかったの?」
「いや、違うよ。言葉はこう続くんだ。『お前はまるで手紙をよこさない。夫である私を愛していないからだ。お前の手紙がどれほど、夫を喜ばせるものかわかっていながら、ちょっとペンを走らすだけの、たった5、6行の手紙さえ書こうとしないではないか。新しい恋人ができたのか。用心するがよい、ジョゼフィーヌ。ある晴れた夜、ドアが蹴られ、この私が現れるであろう。』とね。」
紙飛行機を丁寧に開き、真っ白な紙を見てその紙をまるで「なにも書いてないよ」とでも言わんばかりに左右に振る。
元々全部に書いてない、と心で思いながら首を振ると彼は律儀に紙を飛行機へと戻した。
「夫ではないけれどね。たまにはメールは欲しいものだよ。」
「だって任務中だと迷惑でしょ?」
「迷惑なんかじゃないよ。僕も名前が寝ていたらと思うとどうにも送れなくてね。」
「じゃあ、……今度からメールする。」
「『いとしきひとよ。私はお前から手紙がこないのが心配なのだ。』……つまり、そういうことだよ。僕は君が寂しいというのなら飛んで帰ってくるからさ。この飛行機にでも乗ってね。」
「……うん、あ、……おかえり。」
「ただいま。」
下に散らばっている寂しさと帰ってきて欲しいという気持ちを込めた飛行機を踏みしめて数日ぶりに会った彼へと抱きついた。
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原文をいじろうかと思いましたが、原文がすごく素敵だったのでそのままコピペしちゃいましたてへぺろりんがー。
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