これからずっと、一緒に眠って起きて、ご飯食べて喧嘩して仲直りして、泣いたら笑いませんか
慣れとは怖いもので、私は彼と付き合った年数を着々と積み重ねていくと
隣の存在は居て当たり前なんて状態になってしまった。
好きなのは好きだし、空気みたいな存在。なければ、死んじゃう存在。
でも片思いの時ほどのときめきはない。
目が合えば小さく喜びの声を漏らしていたし、初めてキスをした時は心臓が跳ね上がってしまうんじゃないかと思うくらいにドキドキしたものだ。
だがしかし、今は彼をほったらかしにして私は雑誌を読んでいる。
ダメだとはわかっているんだけれどね。
「カヲルは私の事まだ好き?」
「まだ?」
「さらってしてるよね。(私を抱きもしないし……。)」
「僕はいつも名前を好きだと思っているよ。」
「はいはい。」
「真剣に聞いてほしいのだけれど……。」
彼のいつものさらりと言ってのける告白を私もいつものように受け流す。
彼は苦笑いを一つ漏らすと私の頬を両手で包んだ。
顔をそらすことは出来ない状況に私は意味もなくつばを飲み込む。
「僕は君と一緒に生きたいと思ってしまった。そうなってほしいと願ってしまったんだ。」
「カヲル……。」
「一生、僕の隣にいてほしい。健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも……、ずっと。」
「結婚式の誓いの言葉?」
「その通り。」
「でも私、すぐ怒るよ?」
「僕に非があるということだから僕が直せばいい。」
「ダラダラしちゃってる姿には幻滅しちゃうかもよ?」
「君の新しい一面が知れたということに喜びさえ感じるさ。」
「でも……、」
「名前。」
カヲルの顔が近くなり私は言葉を止めてギュッと目を瞑る。
軽く唇の先が何かにあたり、そして一度離れた後にもう一度、今度は少し強めに押し付けられる。
「僕は君が好きなんだ。だから、僕が18歳になったら家族になってほしい。」
カヲルの声が聞こえたので目を開けると頬を包んでいた手が私の左手に移動して持ち上げ、彼はそこに顔を近づけた。
なにをするんだろうとぼんやりと見ていたら真っ赤な舌を覗かせ私の左手の薬指をゆっくり舐め上げる。
小さく出そうになった声を喉の奥で押し殺していたけれど、カヲルはお構いなしに二度目も同じところをべロリと舐めた。
そんなところ舐めたこともなく、ゾワゾワとした感覚が身体中を這い回る。
快感だと、思ってしまっているのだろうか。
「えっち。」
「する事がいつかくるだろうから、否定はしないけれどね。」
「ば、バカじゃないの!?」
「親バカならぬ、名前バカということかな?ふふ。」
「もういい!」
いつだってカヲルには口喧嘩では勝てないけれど、彼はこういうのもきっと嬉しさに変えているんだろうな。
……ホント私バカすぎる。
そう言っても笑うだけなんだろうな。
私、安心した場所は好きかもしれない。とおもって好きだと口にしたらカヲルはまたキスをしてきた。
三度目のキスはこれからの展開に少しだけドキドキした。
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