愛と恋と寝起きのカフェインについての考察
恋とはなんでしょう。
それは下心。
愛とはなんでしょう。
それは真心。
なんて漢字の話をしているんじゃないんだ。
「というわけで加持一尉。そこらへん詳しく教えていただけませんか?」
「こりゃまた突然だなァ。」
少し思い悩むことがあり、気分転換にと飲み物を買いに来るとそこには新聞を読んでいた加持一尉が居た。
無精ひげはいつもより伸びていたので彼も忙しかったのだろう。私同様、気分転換じゃないかとうかがえる。
「で、なんの話だい?おじさんが聞いてあげるよ。」
「おじさんってほど歳は離れてないじゃないですか。あー、あのサードチルドレンとフィフスチルドレンと話していた事なんですけれど……。」
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二人が座って休憩している時にたまたま出くわして、最近の状況について聞いてみた。
例えば勉強の事、例えば友達の事。
そして恋愛の事とか。
というかそっちが狙いだった。カヲルくんがどんな子が好きだとか聞きたかった。
「恋愛……、ですか?そもそも人を好きになったことがあまりなくて……。」
「じゃあ今、シンジくんが好きな人っていないんだ?」
「気になるって人は居ますけれど、それが恋愛の好きかっていう事はわからないんですよね。」
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「って話をしていたんですよね。」
「ほお、興味深い。で、渚くんはなんて言っていたんだい?」
「終始サードチルドレンの話を食い入るように聞いていました。私に勝機はないッ!」
「そりゃ、ご愁傷様で……。」
結局シンジくんの思い人というか気になる人がどんな人かは言わなかったけれど、それが本当に恋や愛なのかっていうのは私の口からは上手いアドバイスが出せなかった。
シンジくんも別にいいですよって言っていたけれど……。
「加持一尉はその手の話は得意そうですね……、上手い言葉とか言えそうで……。」
「そうでもないさ。俺だって何度も恋に敗れているぞ?……さて、名前ちゃん、君に質問だ。」
「顔が近いです。」
問題を出すように人差し指を立てて、私にぐっと顔を近づけてきた。
冷静に肩を押し返しても力を入れているようで元の位置に戻りやしない。
私の方が背中を反らせて距離を取る。
「恋と愛の違いは?」
「……漢字の問題ですか?下心と真心、ですよね。」
さっき考えていた事だ。それをそのまま口に出すと正解、と姿勢を元に戻した。
私もそれに合わせるように自分の身体の位置を元に戻す。
「漢字だけじゃない、恋は『自分を好きになって欲しい』『自分を見て欲しい』という下心さ。逆に愛は『守りたい』『何かをしてあげたい』という真心。一方的な片思いが恋で思いやるのが愛さ。」
「あー……、わかるような、わからないような……。でもそれだとシンジくんのはなんて答えれば良かったんですか?」
「答えは名前ちゃんの答えであっている。それは答えないが答えさ。恋愛はそれぞれ違う形で作られている。無理に入り込んで形を崩すより本人に任せて見守るのが一番なんだよ。背中を押すんじゃなくて支えてあげるくらいでちょうどいいのさ。だから渚くんは何も言わなかったんじゃないかな。」
「いや、多分あの人は単にサードチルドレンの一挙一動一言一句逃したくなくて黙ってたんだと思うんですけれど……。」
カヲルくんはそんな人ですよ、加持一尉。
人の話はしっかりと聞く子だ。特にシンジくんの話になるとどんなに作業中であろうと顔を向けてちゃんと聞くんだ。シンジくんのだけねッ!!!
「じゃあもう一つ質問だ。名前ちゃんの恋愛の行き着く先ってどんなものだい?」
「うーん、結婚とかは考えてないので、まあ一緒に寝て、一緒に起きて、朝起きたら一緒にコーヒーでも飲めればな、なんて思いますよ。」
「…………それ、今、渚くんとしているんじゃないのかい?」
「…………あ。」
今、私は好きな人と恋愛の行き着く先に来ていたようです。
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