お題 | ナノ


  窒息死させてあげようか


カヲルくんの首を絞めた感覚がまだ手に残っている。
他人の肌は僕の手に吸い付くかのようにぴったりとくっつき、
そして離れなかった。

初号機を通して伝わる感覚はまるで僕が絞めているようで。
どく、どくと鼓動が手に伝わる。

少し苦しそうに彼の顔が歪むともう見ていられなかった。
ゆっくりとそして確実に彼を苦しみから逃れさせるために。
両手で……。



「シンジくんは皆の為にやったのよ。」

「人類を使徒から守るのがアタシたちの役目よ。」

「任務だから……。」

「よくやった、シンジ。」

「気に止むことはないさ。しょうがないことだよ。」


皆の声が幻聴で聞こえてくる。それは自分に都合の良いように囁く。
殺したことにかわりないのにそんな風に逃げ道をつくる自分が気持ち悪くなってくる。
身を縮めて座り直し、耳を塞ぐ。


「シンジ、……大丈夫?」


耳を塞いでいたはずなのに、あっさりと君の声は僕の耳に届くんだね。
恐る恐る手を外した。名前の声は聞いていたいんだ。


「ねぇ、シンジ……。」

「うるさいよ……、少し黙っててよ。」


幻聴だったら囁いてよ、僕に愛の言葉でも囁いてよ。
そうしたら僕は君を……。


「……カヲルは死んだの?」

「ッ!!」


顔をあげて彼女の首元に両手を伸ばす。
そうやって、名前は僕を見てくれないんだ。
カヲルくんをこうやって殺したんだ。僕が、この手で。


「けほ……っ、シン……。」

「……名前……。」


彼女の顔色が紫色に近くなった。
両手を放して、彼女の両頬に手を移動させて
酸素を求めて大きく開いている口に自分の舌をねじ込んだ。

もう彼はいないんだよ。
僕には君しか、名前には僕しかいないんだから。


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