大好きなのに知らんぷり
狙い……12時の方向。
ターゲット……碇シンジ。
……装填、3、2、1……ファイヤ!
勢いよく飛び出した弾が斜め前に居る彼の右腕にピシッと当たる。
うん、位置が微妙だな……もう一回位置調整して……。
私は消しゴムを小さくちぎると、机に書いた×印の上におく。
さっき右の方に飛んでいったから×印の位置から左に消しゴムの弾を転がす。
デコピンをする要領でひと差し指と親指で輪っかを作り、ピンと弾く。
が、しかしまたしても腕に直撃する。
なるほど。位置が悪いんじゃなくて狙撃手の腕がノーコンだったのか。
いや、逆だ。腕を狙うスナイパーとしてはパーフェクトだったのだ!
斜め前のターゲットは今更狙われていると気づいたのか弾が当たった腕を見て不思議そうに首を傾げた。
二度も同じところに当たれば何かが自分の腕を故意に触ったと思ったのだろう。
彼は辺りを見回すようにキョロキョロとしている。
はは、残念だったな。私は既に戦闘態勢を崩し真剣に授業を聞いているフリをし、貴様の事を心の中でほくそ笑んでいるわ。
碇シンジは諦めたのか前を向くとまた授業を聞き出した。
真面目め。もうちょっと私の攻撃に気づきなさいよ。
第三攻撃の為にまた消しゴムを、今度は気づかれるように少しだけ大きくちぎる。
……ちょっとちぎりすぎたかな……?
まあ、いい。いけ!消しゴム弾!
なんて思いながら発射したら脇腹の方へと行ってしまった。
ああ!腕狙いのパーフェクトアタッカーだったのに外してしまった!
これではノーコン野郎じゃないか!
このノーコン野郎と脳内で自分を罵倒しながら碇くんを見たが彼はそのまま前を向いていた。
あれ?と思いながら首を傾げたが、このままだと碇くんと、あとついでに先生にもバレそうだから今日はここまでにしておこうと前を向いた。
しばらく経つとチャイムがなり、号令がかかる。
起立、礼。その言葉に沿って身体をかたむける。うーん、疲れたと思い顔をあげるといつの間にか目の前に私の消しゴムをじっと見つめている碇くんの姿が。
「!!」
「やっぱり苗字の仕業だったんだね。」
消しゴムを持っていない手には私が最後に放ったちょっと大きめの消しゴム弾が。
それを合わせるとピッタリくっついた。
……バレてしまった。
「ど、どうして犯人が私とバレた……!」
「いや、こういう事するのここの周りでは苗字だけかなって。何か用だったの?」
「いんや、別に。」
碇くんは両手にもっていた消しゴム弾と消しゴムをピッタリと合わせた状態で私の机の上に置いた。
そこに糊のようなものは貼り付けていないので結局はポロリと落ちてしまったけれど。
私が用は無いと伝えると怪訝そうに眉をひそめる。不機嫌そうだ。
「用がないならやらないでよ。」
「嫌だ。」
私はノーと言える日本人だ。
「はあ……、構ってほしいならそう言えばいいのに。」
ため息と一緒に落ちた言葉に図星だった私は何も言い返せず、
まあ、私の気持ちを知っているなら別に言わなくてもいいかとそのまま言葉を伝えずに
少しだけ赤くなった顔を背けた。
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