お題 | ナノ


  メモはテーブルに置いたから


メモを片手にウロウロと走りまわる。
数十分?数時間?もうそれくらい走りまわっている。

ことの発端はテーブルの上にあった彼の走り書きだった。

『探さないでください。』

と一言メッセージ。
不安な気持ちが一気に体をかけめぐる。ゾワゾワとしたこの感覚、何故か覚えがある。

探さないでください、と言われて探さないわけがない。
体は動きだそうとしたが、さらにメモの端っこにもう一文書いてあった。


『どうしても探したい場合は、トレーニングルームに来てください。』


なんだそれ、とは思ったけれどこんな事を書くくらいだ。何かすごく悩んでいるのかもしれない。
そう思いトレーニングルームにいった。

その場にカヲルくんは居らず、あったのはランニングマシンに貼り付けてあったメモだけ。
中身を確認すると次の場所が。しかもクイズつきで。


……それを何度も何度も繰り返して走りまわった。
そろそろ、殺意を覚えてきました。

自販機前の椅子の裏にあったメモを取り中身を見る。


『戻っておいで。』


じっとりとかいていた汗を拭い、部屋へと駆け足で戻ると
カヲルくんはシンクの前にたって、優雅に紅茶を作っていた。


「カーヲールーくーん?これはどういうことかなー?」

「名前さんなら僕を探すと思っていましたよ。」


にこやかに、どこも悩みなんてないですよ、そんな顔で笑った。
こっちはせっかくの休みが、見知った施設をウロウロしただけの休日になったんだぞ!


「でもゴールです。そこに最後のメモが残ってます。」


テーブルの上には小さく折りたたまれたメモ用紙。
なんなんだ、全く……、なんて思いながら開くと


『必死に僕のために探し回ってくれてありがとう。そんな名前さんが好きですよ。』


そんな一文が書いてあった。
信じられなくて顔を上げたら紅茶と皿に盛ってあるケーキを持ってこようとしていたカヲルくんと目があった。


「……なんですか。」

「……べ、べっつにー。」

「ニヤニヤしすぎですよ、そのうち、そこにシワが残るよ。」

「いーよーだ。」


私がこの部屋にやってきて、ちょうど一ヶ月。
意地悪な彼なりの歓迎会だったようです。

ほんのりと赤く頬を染めたカヲルくんを見ながらケーキを一口、パクリと食べた。



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