性格悪年下彼 | ナノ


▽ 08


「先の使徒戦……の請求…はは、こわ。」


ごん、と頭を机に落とす。

連日、使徒との戦いがあり、その度に途方もないお金が使われる。
手が回らないと判断した総務局一課は連日、三課を馬車馬のように働かせ
睡眠時間が両手で足りるくらいまで動かされていた。


「こら、サボってるんじゃない、名前。」

「サボってません、脳内で電卓を取り出してます。ほら、取り出せた。次はアイスクリームですよー」

「ダメです、この子寝ぼけてます」

「起きてるよ、失礼な。」


けれど体は正直で全然動かない。机に突っ伏した状態で少しでも気を緩めたら
たぶん、落ちる………


「あー……この前、チルドレン達、全裸でなにかやってたんだってねー…。
カヲルくんの全裸かー細そうだなー。
使徒との戦いに必要なことだろうけれどさー。
んふふ、…ここにある請求書で金が買えるよ。」

「当たり前だろう?お金なんだから。金じゃなくて国ですよね?」

「カヲルくんの声が聞こえたからカヲルくんに会いたくなってきたー……」

「顔をあげたらどうですか?」


…………あれ、幻聴だと思ってたのに?
そろそろと顔をあげてみるとそこには王子様のようなスマイルを浮かべた渚カヲルが立っていた。
あ、これ顔は笑ってるけれど、かなり引いてる雰囲気だしてる。


「僕の、裸がどうしたんですかね?」

「すいません、なんでもないです。いたいけな中学生の全裸とか想像していません……ってあれ?なんでここにいるの?今日任務か何か?」


ここは三課だったはず。司令室に行くところで通るかもしれないけれど、警報もなっていなければ、何かあったわけでもない。
カヲルくんはなんでここにいるんだろ。考え込むことを放棄している私の頭だった。

カヲルくんは手に持った書類をパタパタと振っていたので、それを奪い取ってみたら『一課宛』と上からのものだった。


「一課ここじゃないよ?」

「君に持っていか……一課がわからないんですよ。よかったら届けてくれませんか……?」

「私をパシリに使おうとしてたな!そうはさせん!君にも手伝ってもらうぞ!!」

「こら、サボるな!そこ!」

「休憩いってきまーーーーす!」


そう言ってカヲルくんの手を引いて三課を飛び出した。
これも人助け、雑務上等の三課の役目じゃない。いいことをすると気分がいいわね!うん!


「いいんですか?仕事は。」

「いいのいいの、部屋くらいには帰っていいっぽいし、ついでにシャワーもあびたいし……冷房ガンガン入ってて寒い寒い。」

「女性は身体を冷やしやすいですからね。ところで全裸の僕が、ってなんの話ですか?」


―こだわるな、こいつ。


「この前、オートパイロットの実験あったでしょ?あれで皆が全裸で、って話が流れたら、あ!っという間に広がってねー。私たちの中では結構話題になったのよ。本人たちには悪いけれどね。」

「なるほど、僕は『カヲルくんの全裸…』からしか聞こえてなかったんで、仕事中にこのヒトは何を考えてるんだ、と思ってましたよ。」

「なにも言えません……」

「僕はさしてそう言った話題は気にしないけれど、セカンドやシンジくんは気にするだろうから、するとしても本人たちの気づかないところでするようにね?」


中学生から諭されてしまった。しかもいつもの意地悪な感じではなく本当に怒られた。
そうよね……、悪いことしてしまった……。
後ろにいる彼の顔を見れません。


「この書類、実は四号機のことなんですよ。僕の機体ですよ。」

「え、そうなの?良かったね。参号機より先にできてしまったんだね……ん?あれ?四号機って事故があったんじゃなかったけ?」

「さあ?なんのことだい?現に僕の手元に来るんだから、その事故はでまかせか何かじゃないのかい?それか四号機の事故は事実だけれど、どこか君の知らないところで修復されてた……とかさ。」

「あー……、下っ端にはこないもんね、そういう情報。」

「名前さん」


突然、声のトーンが下がり、きゅっと音を立てて立ち止まった気がした。
後ろを振り向くとやはり先ほどより距離があいた彼が私をずっと見つめてる。
なんだろう。眠かった頭がドンドン冴えていく気がする。


「僕らがオートパイロットの実験をしている間、アレは、あの警報はなんだったんですか?僕らには一切聞かされていないんです。一体何が行われていたんですか?」


暑い暑いと思っていたのに、暑さではない汗が流れる。
何故かチルドレンには教えるな、という伝達が来ている。
詳しい理由もなく、そんなことを伝えられても頭に疑問符を浮かべるだけだけれど
なんとなく、いま、私は少しだけわかったきがする。


「カヲルくん、何考えてるの?」

「あなたには関係のないことです」

「……下っ端の私たちには何も聞かされてない。あの警報は誤報だと聞いた。だから私たちは普通に仕事してたもの」

「……」


沈黙。

長い沈黙の後、彼はそうですか、とだけ言って私を追い抜く。



……ていうか一課の場所知ってんじゃん、やっぱ。







「……タブリス」

「貴方の期待どおりの結果は持ってきていない。誤報、と言い切るみたいだね。」


―どうせ知っているくせに僕を使うんだね。
使えるものは使う、か。そういうところ、シンジくんのお父さんそっくりだね。
いや、リリンならば、そういった感情は当たり前なのかもしれないね。


「しかし何故あの女にこだわる。情報を与えられぬただの駒より、他の駒に唾をつければいいものを……」

「はは、ただの興味対象なだけだよ。リリンは興味がつきないね。貴方が心配するまでもなく、計画は進んでいるので大丈夫だよ。」

「お前が我々の思うように動くとは思っていない。ただ計画を滞らせるような事があれば、わかっておるな?」

「重々承知だよ」


手に持っていた資料で返事を返す。

その言葉を聞いたモノリスはフッと電源が切れる。
手元の資料に目を通すと管理局一課、二課数名…とつらつらと並べてあり、
総務局のところで目を止める。


「アレはアレでシナリオに関わってくる人物なんだよ。」


彼の言葉は暗い部屋に響くだけだった。


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