性格悪年下彼 | ナノ


▽ 09


私は待っている。
にこやかに彼が入ってくるであろうドアを睨みながら。
彼はどうやら外に出ているらしく、これは探し回るよりか好都合だ、とゲートの前に体育座りで座り込む。

さっきから学校の帰りによったであろうチルドレンや職員に驚かれるけれど、
私は気にしない。とりあえず、早くこの事実を聞きたいんだ。問いただしたいんだ。


「…………、なにかの妖怪の真似かい?」


若干後ろに逃げたな?
ゆらりと立ち上がる。彼はとりあえず私に近づいてきた。
近くにきた瞬間、私は彼の前に右手に持っていた紙を持ち上げる。


「これはどういうことだ、渚カヲル」

「一課の方にもちゃんと了承は得ているよ?面倒だろうし、一課の方は忙しいだろうから別の課でもいいですかって。
君も好きな男の働いている姿とか見たいだろう?」

「見たいよ!見たいけれど仕事を増やしてどうするんだぁ……もう知らない、もう長野いって楽しむ。」

「第2新東京市でしたね……、まあ、付き合わせるので何か僕も手伝ったり気晴らしには付き合いますよ」

「そのまま彼氏として付き合ってよ」

「さて、じゃあ僕は宿題があるから部屋に帰るね」

「ちょ、まてまてまてい!」


急いでカヲルくんの後を追いかける。

正直、嬉しいよ?もちろん、好きな人と一緒にいれるのは。
カヲルくんがエヴァに乗ったところも見たことがないし。
……いや、今回が初めての四号機起動実験だけれど。

「そういえば四号機ってダミープラグを使うっていう話もあったらしいよ」

「そうなんですか?そうなると、とことん僕は嫌われ者という事になるね。使えるものは使っておけという感じを出しているおとうさんにしては珍しいね。」

「おとうさんって…シンジくんのお父さんって意味でしょ…、なにかそれだとお義父さんと言ってるように聞こえるのは私が汚れてしまったからなのかな……?」


カヲルくんは何も言わず、休憩スペースにある少しおしゃれなテーブルにカバンを置いた。
私が不思議そうに見つめてたから「座ったらどうですか?」と椅子を引いてくれた。


「ありがと。ずっと座ってたから今、足がしびれててさ」

「ふふ、だろうね。変な歩き方だったからさ。ついでに僕の宿題もここでしていこうかな。僕立ってますし、何か買ってきますよ。何がいいですか?」

「うーん、甘いもの!」

「子どもだなァ……じゃあ、適当に買ってくるよ。」


彼が遠くに行ったのを見て、私は両頬に手を当てる。
あー、うん。これは熱を持ってるな。

自覚してしまうと、どうにも恥ずかしくなって顔全体を両手で覆う。

実は、カヲルくんがこの四号機起動実験のメンバーを決めたということは知らなかった。
ちょっとカマをかけてみた。

どうせ一課がまた面倒事を押し付けたんだとか、私の恋心を知ってる上司がその仕事を回してきたんだとか、そういう風に考えてた。

でも、その件を言わずに渚カヲルに聞いてみたら、彼の仕業だった。

―彼が、私を指名してくれた。

その事実が私の鼓動を早くさせる。
どうしよう、思えば、想うほど、私は彼から目を離せなくなる。


「眠いんですか?それとも体調が……?」


不安げに声をかけられる。
そろそろと手をどかし、彼の目を見るために目だけで見上げる。
優しさを含んだ、瞳。心配、してる。


「大丈夫、ちょっと眠かっただけ。」

「だろうね、クマできてるよ、目の下。」

「ぎゃあ、マジで?!」


すっ、と彼の指が私の目の下に伸びてくる。
時間がスローになったかのようにゆっくり、ゆっくり時が流れる。
目の下を撫でられ、なんだか、すごく、甘ったるい空気。

ここで目を閉じたら彼は今度こそ、キスをしてくれるだろうか?

その指が私をくすぐるかのように耳をなぞり、首元をかすめる。
思わず、力強く、目を閉じてしまう。彼がどんな顔してそんなことしてるか
見てられ―


「うええああ!つっめたああああ!!」

「あはは、油断大敵だよ」


目をあけたら、すっごい、いい顔だった。悪戯成功したような少年の顔だった。

服の背中の方に冷たさと、ゴツゴツした異物感がある。
―こいつ、飲み物を服の中に入れたな!
首元を通った指は私の襟を持ち上げる為だったんだな…、大人をからかいやがって……ッ!

取ろうともがき、制服を脱ぐ。支えを失ったペットボトルは地面に鈍い音を立てて落ちる。
それをカヲルくんが拾い上げ、私の目の前のテーブルに置く。


「唇尖らせてどうしたんだい?そんな僕も好きなんだろう?」

「知らん!お前なんか鬼だ!使徒より怖い鬼だ!!」

「おや、酷い言われようだね。傷ついてしまうよ、この僕でも」


そんなこと言っておきながら、涼しい顔して私の目の前の椅子に座りカバンの中から宿題で出たのであろう教材を取り出し、付箋の貼ってあった場所をペラリとめくる。

なれた動作を見てると彼は本当に中学生なんだな、と思う。
さっきまでの色気は何処いったんだ。
でも黙っていても彼の色気は出ていることは出ているんだよな……

クーラーの風でふわふわと揺れる髪も、襟足から伸びる細く色白い首。
細いからくっきりと見える鎖骨。細いくせにちゃんとしっかりとしてる腕。


「じろじろ見ていられると宿題もし辛いのですが……」

「あ、ごめんごめん。」


顔を伏せ、この時間を堪能しながら少し眠ろうと目をとじた。

しばらくして、誰かから頭をなでられた。
ゆっくりとした労わるような手つきで。
撫でられて、髪で遊ばれた。


もうしばらく寝たふりでもしてようかと思う。

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