性格悪年下彼 | ナノ


▽ 06


「あーあ…行きたかったなー、沖縄!せっかく水着まで買ったのよ?!加持さんと一緒に!」

「しょうがないよ、アスカ……いつ使徒がやってくるかわからないし」

「アンタそれで納得できるわけ?いつ死ぬかもわかんないってぇのに。しかも中二の夏なんて一生やってこないのよ?はぁ…ヒカリたちは今頃どこいんのかしら……首里城?綺麗な海?水族館?っていうか鈴原だけ除外ってどういうことよ!」

「だって参号機はまだ完成してないんでしょ……しょうがないじゃないか……」

「ふふ、こうやって勉学に励める時間も、学生の本分だよ、セカンド」

「アンタら男どもはホント、つまんない。ファーストは?行きたかった?修学旅行?」

少し声を大きくしプールの端に座り足だけをつけていた綾波レイにまで届く声で訪ねた。

綾波レイは「別に。わかっていたから」とだけ返すと視線をプールに戻す。


「っは、つっまんないわね、ホント。」

心のそこからつまらなそうな顔をすると足元に居た彼を見る。

「シンジはプールに来てまでも勉強してんの?」

「うん…理科の勉強だよ。わからないことがあってさ。」

「ったく、お利口ね。……これは、ね、ねつ、なんて書いてあるの?コレ。」

「熱膨張、だね。アスカ、漢字まだ読めないの?」

「まだねー。熱膨張…アタシの場合、胸だけ暖めれば、少しはオッパイが大きくなるのかなぁ?」

「そ、そんなの僕に聞かれても…!ね、カヲルくん……ってあれ?」

「フィフスならさっきどっかいったわよ?シンジ、アンタも泳いだら?」

「……うーん、そうしようかな?よし、勝負しようか、アスカ!」

「ふふん、望むところよ!」







「えー、今コードA17が出てたの?!はー…そりゃ一課が大変そうな。え?もう終わったの?処理?無理!私今日休みなんだから!」


同じ三課の同僚から電話がかかってきたかと思えば仕事の話で。

もー休みの時くらいゆっくりさせてよ、と思いながら洗濯物をたたむ。

手がふさがると洗濯物がたためないので携帯は肩と耳で挟み、落ちないように気をつける。


「ていうか要件はそれだけ?え、何?カヲルくんがなんだって」


同僚のあるキーワードに反応する。え、今カヲルくんっていったよね?

ちょうど呼び鈴がなりそこだけ聞こえなかった…!


「もー、こんなときに!私とカヲルくん(の話)を引きさく邪魔な輩は一体誰よ!

……………

……え、うん、カッコイイカヲルくんが三課にきたんだ、私を探しに……うん、大丈夫、あったから」


ドアをあけると若干引き気味の海パン姿で上にパーカーを羽織っている渚カヲルの姿があった。

呆然と見ていたら、電話切ったら?と言われて無言で頷き電話を切る。

なにこれ、私へのご褒美?


「君、見たがるかな、と思って部署の方にいったのに休みだと言われてさ。わざわざこっちまできたんだよ。出来ればいれて欲しいんですが?シャワーまだなんだ。ちょっと寒くてね」

「え、はい。」


確かにしっかりと見てみると髪はぽたぽたと水を垂らしている。

今、渚カヲルは逆光をあび、水も滴るいい男状態で私の部屋の前で立っている。

ていうかその格好で施設内を歩いていたのか、君は。歩くフェロモン有害物体だよ。


「赤木博士だって水着に白衣きて歩いているときあるでしょう?皆にとってはきっと普通なんじゃないかな。」

「それもそうか……いや、なんか、ここは本当なんでもありな気がする……あ、ていうかシャワー早く浴びてきなよ!こっちこっち。
ここにタオルがあるから好きなの使って?あとこれドライヤー。
じゃ、じゃあ、私あっちに行っとくから私がでたら鍵、しめてね?」

「ラジャー。ありがと。」


そして私は扉を閉めた。「え、夢?これ、夢?」


あれだ、私きっと夢小説でも読んでるんだ。

じゃなきゃこんな美味しいシチエーションないもんね。うん、そうだ!そうに違いない!

と聞こえてくるシャワー音とほのかに香ってくるシャンプーの香りに、はっとなる。


―あれ、そういえば服は?


先ほどの格好を思い出す。海パンに濡れたパーカー。
多少乾いてたとはいえ濡れている先ほどまで着ていた衣類。

これ、貸した方がいいよね。

ていうかこういうの忘れてくるなんて珍しいな、カヲルくん。

ガサゴソと自分の服をあさり、ジーパンとTシャツをひっぱりだす。(……パンツどうしよう。一応私の貸しておくか…?)

この衣類をどこに置こうかと迷ったけれど、部屋に全裸で入ってこられても絶叫ものだから、とりあえずシャワー室の前の小部屋の扉に手をかける。


―かちゃ


あの子、鍵かけてない!!!!お姉さんが狼になったらどうしてたの?!

とりあえず一声かけとくか……ここで鉢合わせとか嫌すぎる


「か、カヲルくん、ここに服も置いとくね。私のだけれど……あと、…その、下着……」

「下着?」

「????!!!!」


シャワー室のガチャと扉が開かれ、顔を出すカヲルくん。

心臓が飛び出るかと思った!


「ああ、下着ならポッケに突っ込んで来たので大丈夫ですよ。気にされなくて」

「そう?よかった………ってそれなんで着替えはもってきてないの……」

「ふふ、サービスシーンとやらは必要でしょ?」


と言いながら顔を引っ込め、扉をしめた。


「畜生……、大人をからかいやがって……」


シャワーにかき消される程度に小さく文句をたれた。

あの子には本当にかなわない気がする。



―ブツッ



そして唐突に目の前が暗くなる。

……いや、別に私は倒れてないぞ?じゃあ、目隠し?違う…これは……


「ちなみに聞きますけれど、ここの電球が切れたわけではないですよね?」

冷静にキュッと蛇口がひねられる音がしたあとにカヲルくんの声がした。

「大丈夫、全部真っ暗。おかしいわね…ブレイカーは施設内だし落ちることなんてないはずなんだけれど」

「もしかしたらネルフ全体の主電源が落ちたかもしれないですね」


後ろでがちゃりと何かが開く音が聞こえると同時に、湿度があがり私の顔の横をなにかが過ぎていった。

多分、これ腕だ。


「邪魔だよ?それともわざと服やタオルをとらせないようにしてるのかな?」


真後ろに全裸のハダカヲル。

いや、ボケてる場合じゃない……!

カニのように横移動し、場所を移動する。早くこの部屋をでなきゃ!!という使命感に駆られ、がちゃがちゃとドアを探していろんなところに手をぶつける。

それにしてもこの男余裕で頭拭いてやがる!こっちは聞こえるんだぞ!!


「さ、下着はどこかな?」

「いちいち口に出すな!恥ずかしいから!いたたまれなくなる!!」


クスクスと笑う声がする…くそう、早く電気つけ!むしろこっちが攻めてやる…!

はあはあしてやる!



そんな私の思惑とはうらはらに、ゆっくり着替えたはずの渚カヲルよりも電気がつくのが遅く、予備の電源すらはいらなかった。


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