▽ 05
使徒の足止めが成功した次の日、新しい作戦が出来上がった。
第7使徒、名前は『イスラフェル』。今回の作戦にそった名前になったらしい。
イスラム教での「音楽」を司る天使の「イスラーフィール」からきている。
今はその使徒は国連の攻撃により、活動を一時停止し、己の体の修復にあたっている。
2つのコアをもつ第7使徒に有効な作戦は分離中のコアに対する2点同時の過重攻撃。
そんなタイミングを合わせて攻撃なんて
「体の相性が必要よね」
「出会い頭になにを言い出してるんですか?」
昼食のタイミングが一緒だったのか、カヲルくんを見かけ、前の席についた。
そりゃ、突然前に座ってきた女が体の相性がどうのと言い出したらそんな顔するよね。
私もすると思う。
「いや、今度の使徒戦の話なんだよね。別に卑猥な話じゃなくて。カヲルくんは何か知ってる?」
「ああ、第7使徒ですね。いえ、僕にはシンジくんとセカンドのコンビでいく、としか。」
「そっかー。どんな作戦なんだろう…」
箸を割り、食事の用意をしながら話していると、かちゃんという音と共に何かが目の端に映った。
隣に誰かきたのかな、と思ってみてみるとそこにはどこかつかめないような笑みを浮かべる加持リョウジがいた。
「どうも、加持一尉。」
「おや、そっけない挨拶だねぇ、名前ちゃん。よ、渚くん。面白い話が聞こえてきたから俺も混ぜてくれないかなと思って移動してきたよ。」
なるほど、目の端に映ったのは食べかけのご飯が乗ったトレーだったのか。
「…加持主席監査官と名前さんは知り合いなんですか?」
「多少ね」
定食についていたスープを飲むと、話したくないという雰囲気を感じとってくれたのかカヲルくんはそれ以上は追求してこなかった。
「さっき話してた第7使徒の話だけれどさ、今葛城の自宅で二人ともダンスの猛特訓中だよ。」
「ダンス?なんで踊ってるんですか、二人とも」
「攻撃、防御を共に取り入れたダンスプログラムさ。音楽にあわせ息の合った多重攻撃。これが最善策だと思ったんだろうな。
ちなみに食事、トイレ、睡眠などのライフスタイルも合わせるため、二人は同じ場所に住みシンクロニシティを高めているよ。いや、この場合はユニゾンかな。お互いを知れるいい機会だな」
「へぇ…、ユニゾン、同じ旋律を奏でるということですね。いいアイデアです。
ところでなんで私たちにその情報を教えてくれたんですか?」
その言葉を聞いた瞬間、加持一尉はぐい、と体をよせてきて顔も近づけてきた。
「俺と名前ちゃんとのユニゾンのきっかけになるかなと思ってさ」
「それはないです」
こういう人は少しでも顔を赤くしたり、隙を見せてしまうとすぐその隙をついてくるから、無表情で対応する。
こんな事しなければいい上司なんだけれどなぁ。さりげないサポートもしてくれるし。
「それに渚くん、君も気にはなってたんじゃないかい?」
いままで黙々と黙ってご飯を食べていたカヲルくんに加持一尉は目線をむける。
体も元の位置に戻ってくれませんかね。
「そうですね。シンジくんが学校を休んでいたので少し気になっていたので、病気などではなく安心しました。
ああ、あとそのヒトは確かにキスをする時は顔を真っ赤にして可愛いかもしれませんが、中身はまだまだ子どもですよ。あなたの相手にはまだ早いんじゃないんですかね。」
「なああああああああああああああ?!」
思わず全力で立ち上がって座っていた椅子を倒してしまって周りの視線を集めてしまう。
い、いやそんなことより
な、なにを、言って、るん、ですか、あなた、は…!
「おや、先約があったのか…じゃあ手はだせないねぇ。それでは、お邪魔虫は退散しようかな。」
と加持一尉はトレーを返却口へと返しにいった。
呆然とその一連を見てたけれど、今の言葉を思い出し、カヲルくんに向かい合い机を大きく叩く。
「ちょ、かを、かをるくん……!あなた今言ったこと……!」
「事実でしょう?中身が子どもだということも。それに加持主席監査官のああいったことは苦手なんでしょう?ちょうどいいじゃないですか。今度からそういったことはなくなるんじゃないですか」
「………」
そうは言うけれど、今のはこの前の事が私とカヲルくんがキスをしたような言い方だったし、
それにこんな人の集まる場所で言ってしまったから、今後、私の彼氏と間違った噂がたってしまう可能性だってあるんだよ?
―どうしよう、顔に熱が集まってきた。
恥ずかしい、でも嬉しい。
けれどこんな時なんて言っていいかわからなくて、あたまが真っ白になる。
そんな真っ白な私に
「ほら、やっぱり子どもだ」
と優しく真っ白な微笑みを貴方は向けるんだ。