性格悪年下彼 | ナノ


▽ 04


「ちょっと悪いんだけれど総務局三課が先日行われた対使徒戦の写真撮ってきてって言われてるんだよね。行ってきてくんない?」



というわけで、

「(私は雑用かああああああ!!)」

と心で叫ぶ。くっ、車内でなければ叫んでいた。確実に叫んでいた。
いーよ、もう雑用係でいいよ。総務局ってそんな感じだしさー。
一課と二課からのおこぼれもらう感じだしねー。

「つきましたよ。ここがエヴァンゲリオン初号機の没地です」

「没地って……言いすぎじゃ」

カメラをもち苦笑いしながらバンのドアをあけるとそこには

「ぶっ、あっはははwwww」

海の中から紫の足が二本立っている。
というか多分、これ初号機埋まってるよね。

なにこれ犬神家の一族?

思わず草をはやして笑っちゃったわよ。


「超サイコー!何この芸術品!来た甲斐があったわ!ていうかシンジくんすっごい芸術的な負け方したのね!!爆笑!!!」


角度を変えて何度も撮っていたら運転手から次は弐号機の場所へ移動すると告げられた。




「ぎゃははは、痛い!お腹いたい!!なんなのあの子たち!!」

お腹は笑いすぎて痛いし、太ももは私が叩きすぎて痛くなってきた。

でも笑いがおさまんないし、なにか叩いてたいくらい可笑しい。

「弐号機までもが犬神家!もうお姉さん大爆笑!!
試合には負けたけれど、勝負には勝ったって感じね!100点満点!」

そこには初号機同様、段々畑に上半身がうもれている弐号機の姿が。

「ふむ、足が伸ばされてる分、弐号機の方が点数は高いわね。こっちの写真もいっぱいとっておこう!ソニックグレイヴまでは良かったのにねぇ」
―後でアスカちゃんに怒られそうだけれど、こんなおいしいネタはない。

「よし、こんなもんね。パソコン持ってくるの忘れたから本部に戻ってもらっていいですか?せっかく伊豆まできたのに温泉とか入れなくて残念ですけれど。」

技術開発部の方に回さなきゃいけないらしいし、さっさと帰って書類整理しなきゃ。

一課の書類がかなりの枚数があるし。

うとうととしながら、久しぶりのゆったりとした時間を過ごしていたらいつの間にかついてしまったらしい。

背伸びをしてバンから降りると伊吹二尉が待ち構えていた。

「すみません、チルドレン達が集まったそうなのですぐに写真が欲しかったもので。どうでした?」

「爆笑ものでした」

「負けは負けですからね。今回はこんな感じで済んで本当に良かったですよ。損傷も激しくないみたいですし、使徒も今は国連第2方面軍が対策をねっていられるようですし。………何故か同じ写真が何枚もあるのですが」

「すみません、出来心です。ちょっと面白くて」

お茶目心だったのに伊吹二尉から怒られてしまった。

「これをセンパイに見せるのは心苦しいです。それに子供たちも…」

「今からお説教でしょうね。」

「でしょうね。あ、わざわざありがとうございました。お仕事頑張ってください。」

「こちらこそ。そちらも頑張ってくださいね」

そう言って伊吹二尉は踵を返した。


さ、私もお茶でも飲んだら仕事に戻ろうかな、と思ったら
「おかえりなさい」
と後ろから声をかけられた。この声は

「あれ?今作戦室にいるんじゃなかったの?」
「さァ?なんでも必要なデータが遅れてて会議すらできないからって時間ができてしまって。
その任務を負ってるヒトがトロいのか、
はたまた必要なデータを送れないくらいのドジをやってしまったんじゃないかな?
今日は皆学校の日だったんだけれどなァ……」

う、ごめんなさい。

「……というか知ってて言ってるでしょ。」
「推測ですよ。先ほどの伊吹二尉との会話からね。」

「でもほら、写真撮ってきたし、データも技術開発部に渡ったしもうすぐ会議はじまるんじゃない?」

「書類さえ作れなかったそうだよ?作戦会議はそのあとになるだろうから、あと2、30分はかかるんじゃないかな?」

ぐううう…、今日はちょっと早起きしていったんだぞ…!
ちょっとは労ってよ!

「これからまた仕事に戻るんですか?」

「そーそ、今回の二つのコアをもつ使徒の請求が酷くてね…いつもならエヴァと使徒の被害だけなんだけれど、今回は国連が絡んできてさー……もう一課の人が手一杯になっちゃってるのよね。だから補佐の三課が手を貸さなきゃいけないのよー」

「三課は外にでて写真とったり他人の仕事手伝ったり、暇なんですね」

「違うわ!それが三課の仕事なの!」

「え、暇なのが仕事なんですか?それで給料もらえるから素晴らしいですね」

「貴様…ッ!」

「まぁ、とりあえずお疲れ様です。暑かったでしょ?」

……こういう緩急をつけた優しさは疲れきった私の体には甘い毒の様に感じる。

ずるいな、本当にこの男は。

「汗臭いですよ」
「仮にも女子に!!」

するとその場に連絡を知らせる放送が流れる。チルドレン収集の放送だった。

あーあ、もう離れるのか……

「じゃあ、また、名前さん。これ、餞別です。シャワー浴びたあとにでも飲んでください」

渡されたのはスポーツドリンクで封が開けてなかった。

「なんだ、間接ちゅーできないじゃないか」

去ろうとしてた渚カヲルがぴたりと止まり、顔だけこちらに向けてきた。
目だけで何を言ってるかわかる。当ててあげよう、気持ち悪いだろう。

ため息をついて何も言わず、彼はさってしまった。

「………♪」

いいように解釈しよう。このペットボトルは外から帰ってくる私を見つけて
彼が塩分補給や水分補給のためにわざわざ買ってきて私に渡そうと思ってくれたんだ。

―こんな風に考えてたらこの後の仕事も頑張れそうな気がした。


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