性格悪年下彼 | ナノ


▽ 19


「うわっ!」


激しい揺れと点滅するライト。
使徒が何かしらの攻撃を本部にぶつけてきたのかもしれない。

もしくは、使徒自体がこの本部に。
ぞわり、と何かが体を駆け上がるような感じがした。

何故、使徒がこの本部を狙うのかは私は知らない。
なにか目的でもあるのだろうか…。

退避の為に自室にもどり、必要なものだけバッグに入れていたけれど、その手も止まる。

一番安全なのはこのネルフ本部。
じゃあ、ここにいた方が安全なのでは、と思ったのだ。


「どこいても一緒だよね…カヲルくんや、他のチルドレンは大丈夫かしら…。」


見えるはずもないけれど、上を見上げる。
戦闘の場面を見たことはない。
いつも膨大な金額でしか被害を想像出来ない。

パイロットもあまり戦闘の件に関しては口を開こうとはしない。

それに関して死人がでるから、多分軽々と口にしたくはないのだろう。


ドォン、という音がなると同時に激しい揺れで本棚にいれていた雑誌や漫画本がバラバラと落ちてくる。
本部に居住区を持っている人は各部屋を用意されていて、その家具は全て固定されている。
だから多少の揺れは大丈夫だけれど……。


「い、今の揺れは尋常じゃないわね……もしかして、本部かなりやばいんじゃ…。
……外のシェルターにやっぱり行こう」


荷物をいれていたバッグをとり、ドアの近くに置いてある無線機をとり耳につけながら
避難ルートを確認する。

―第8区に直…!
―第6シェ……棄、第3シェルターへ……!

かなり混線してるようだけれど、なんとか聞こえる。
随分と被害範囲が広い……それほど強力な使徒と覗える。

『総員退避!繰り返す、総員退避っ!』

そんな放送が聞こえた瞬間に、一番大きい揺れと耳を劈くようなガラガラと凄い音が響く。

足を揺れに取られ倒れるも強く膝をぶつけただけで先日治った頭はなんとか守った。
本部から外に出る為の出入口へといそぐために立ち上がり、足を庇いながら
一歩一歩前へと進む。


外へと出ると何が起こっているかがわからなかった。
ソレは以前、加持一尉に聞いていたような光景だ。

多少揺れは収まったものの、外は暴風と言っていいほど風が吹き荒れている。
その風はエヴァが起こしているもので、そのエヴァは今使徒を食い散らかしている状態だった。
まさしく、食っていた。

あたりに広がる血の様な匂い。
そういえば科学調査分析部が言っていた。
使徒は人間とほぼ同じ遺伝子で出来ていると聞いていた気がする。
その差は1%未満だとか。


「酷い…、……匂い。」


思わず胃の中のものがのぼってきそうになっていた。
遅れて銀色の機体が出現し、初号機を止めにかかる。

まさか、この非常事態でカヲルくんは待機だったの……?

前の第13の使徒の時も、そうだった…。第13の使徒、確かバルディエルと名前がついていた使徒。
こちらを殲滅し、その殲滅の際に癇癪を起こした初号機を四号機が止めた。

……まさかこの時も待機だった…?

四号機に何か問題があるのか、それとも……


「初号機に何かさせようとしてるの……?」


加持一尉も何か知り、そして特殊監査部にいられなくなった。
私が知っていい情報ではないかもしれないけれど……

そう思いながらも携帯をぎゅっと握りしめて
咆哮を上げる初号機を見上げていた。




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