蒼禰様……綾波レイ夢/日常
友達は誰が居る?と聞かれた時に私は彼女の名前を一番にあげるだろう。
綾波レイ、と。でもその言葉を聞いたら絶対に相手に驚かれる。
それは、彼女の静けさだったり、何者にも侵されそうもない何かを持っていそうな雰囲気にあると思う。
だからこそ、私が彼女の友達であるという自信が持てるんだ。

それでね、でさ、なんて拙く紡いでいる私の面白くもない話を彼女は頷きながら聞いてくれている。
レイちゃんの表情はいつもと変わらず、にこりとも笑っていないけれど。
でも彼女は本当にどうでもいいと思うなら、この場所にとどまらず違う場所にいくはずだ。

こんな私の話なのに、彼女は私の話をどうでもいいなんて思ったりしていないという事。

それがとても嬉しくてついつい話こんでしまう。友達だからこそ出来る、特別な事。


「そういえばプリクラをとった時の話なんだけれどね、」


そう言った瞬間、レイちゃんの顔色が一瞬困惑したような顔になる。
あれ、もしかして……。


「レイちゃんプリクラ撮ったことある?」

「ない……。『ぷりくら』って、何?」


こ、ここに女子中学生としての遊びをしたことのない人がいる!!
これは私がおもしろさを教えてあげないと!


「プリクラってね!プリント倶楽部の略でね!写真を撮ってそれに落書きしたり友達と交換したりするんだよ!一回一緒に撮ってみようよ!」

「撮ったら苗字さんと交換するの?」

「い、一緒に撮ったやつになるから別の人と交換しよ……?」


そうして放課後、私たちはゲームセンターへと向かった。
色んな楽しげな音が行き交う場所にくるとレイちゃんはキョロキョロとしだす。
もしかしてゲームセンターも初めてなのか……?!


「プリクラはね、2階にあるんだ。ちなみにプリクラゾーンは男性だけだと入れないんだよ?」

「どうして?」

「なんでだろ?ナンパ?」


理由は私も実は知らない。でもポスターとかで書いてあるんだよね。
二人で2階へと向かい適当な場所に入ってみる。
この機械は新登場とかいてあり、ちょうどお客さんが出て行ったところだった。


「じゃあ、ここに400円、二人だから200円ずつだね。」

「意外と安いのね。写真と同じようなものと聞いていたからもっと高いと思ってた。」

「安いかなぁ?むしろ高いんじゃ……、あ、これでモードとか選べるんだよ。レイちゃん肌白いからふんわりモードにしよ。はい、ポーズ!」

「え?」


パシャリとフラッシュがたかれ、レイちゃんは何のポーズも取らずに写ってしまう。
二回目は私がレイちゃんの手をとり大きくハートマークを作る。その後も何度か撮り、レイちゃんは最後の方には慣れてきたのか小さくピースをして撮り終わった。


「次は落書きしよう!そっちのペンもって!らくがきは時間との勝負だからね。初心者はそのスタンプってボタンで出てきたものを持ってきたら簡単だよ。」

「わかった、やってみる。」


私は落書きでペンモードを選び、『初プリクラ記念』と書いて日付のスタンプを押す。
ふと、気になりレイちゃんの方を見てみるとレイちゃんは真剣に画面と向き合ってスタンプを選んでいるようだ。
なんだか可愛い、いつも見ないようなレイちゃんだったので思わず笑みがこぼれてしまった。


「終わったね、後はここから写真が出てくるからそれまで待つんだよ。」

「……。」


レイちゃんはワクワクしているのか目を輝かせながらプリクラの取り出し口をみていた。
機械に取り付けてあるモニターを見ると残り10秒と書いてあったので、カウントダウンをするとレイちゃんはしゃがみこみジッと見つめた。

0秒になる前にカツンと音がしてプリクラが出てくるとレイちゃんは手を伸ばし、プリクラを取り出す。
その出来は良かったようでまるで周りに花が咲いているような錯覚がみえるほど表情には出さず喜んでいた。


「どう?いいのが出来た?」

「うん……、すごい。」


すっとプリクラを出されたので私も出来を確認する。
レイちゃんがしたであろう落書きはフレームで、消し方がわからなかったのか二重になっているものと、


「これ……。」


私が教えたとおりスタンプを押してくれていたようで、二人でハートマークを作ったものの真ん中に「一生友達」と書かれたスタンプが押してあった。
あのレイちゃんがこんな風に私を思ってくれていたんだとか、一生友達でいていいんだとかそういった喜びの感情が一気に目に押し寄せてきて瞳が潤んでしまった。

涙をぐっとこらえてレイちゃんにお礼をいうとこちらこそ、と照れくさそうに小さく笑ってくれた。



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