大きな地響きが起こる。
バランスを崩しながらも急いで振り返ると使徒の攻撃が命中したのかビルがゆっくりと崩れ落ちるのが見えた。
また、……彼女を失うのか。
そんな事を思いながら使徒のコアにプログレッシブナイフを突き立てる。
どんなことをしても何もかも無駄に終わった。
僕が戦線離脱して彼女を助けようとしても、使徒を先に倒しても、彼女をシェルターに向かわせなくとも……結局彼女は僕の手からすり抜けていくように僕の前から居なくなった。
状況終了の合図ともいえるような十字架のような爆発が起こる。
ああ、君は死んだんだね。次は僕の番か。
僕はすぐにエントリープラグを自分から引き出し、弐号機から降りる。
あたりは煙が至るところからあがり何かが焼けるような匂いが漂っている。
顔に張り付くようなぬるっとした感覚がするのは、リリンが焼けているのかもしれない。
「カヲルくん。」
「名前……。」
横たわる名前を見つけた。彼女に近寄ると彼女は僕が誰だかわかったのか僕の名前を呼ぶ。
しかし名前は意識が朦朧としているのかその目には光を宿しておらず、
彼女の陥没した身体はもう助からないと一目でわかった。
「やだ、なあ。あんまり見られたくないなぁ……。」
「何を言ってるのさ……。君が僕と付き合ったら見られないところがないってくらい自分の身体見られるんだよ?」
「はは……、そうかもね。うん、……私もカヲルくんの事好きだから、付き合ってほしいな。そしたら今見られる、の、……ひっく、恥ずかしくなくなったり、……悲しくなくなったり、するのかなぁ!」
「……。」
名前の目からはとめどなく涙があふれていた。
どうしてだろう。今言うことじゃないんだろうけれど、すごくきれいだった。
キラキラとした大粒の涙が零れ落ちるのを見て心奪われる。
「……無理だよ、ね。私、死ぬんでしょ……、もう、自分の身体も、みれ、ない……。」
「…………、名前……?」
名前は話の途中で呼吸をするのをやめたようだった。
僕は彼女のそばによってしゃがみこみ、頭を一撫でしてから弐号機へと戻った。
「いくよ。終わらせて、そしてはじめよう。」
友達を、好きな人を失うことはこんなに胸が苦しくなるものだろうか。
(――涙さえ出ないのに。)
黒い穴に落ちていくような感覚にいつの間にか眉をひそめてしまう。
痛み、悲しみ、ちゃんと僕はわかってあげられない。
最後に名前はどんな感情を抱いていたのだろうか。
「僕はリリンと違う。」
何度目かのシンジくんとの対峙に吐き気すら覚えてくる。
「僕は使徒だ。」
「なんで騙したんだよ!なんで僕らに近づいた!」
僕は友達と笑いあったり、好きな人と一緒の時間を過ごしたり、家族の温かみを感じてみたり、ただそういったリリンに触れるようなことをしていたかったんだ。
ゆっくりゆっくりとホワイトアウトしていく意識に僕は身をゆだねた。
――今度こそうまくできると思ってた。ごめんね。