影山は叩きつけるように降る雨に舌打ちをする。その隣で及川は、わー土砂降り、と楽しそうに言った。
 部活が始まったころ、空はまだ晴れていた。それなのに、部活と自主練を終え、ふと外に気をやると、土砂降りだった。
「飛雄ちゃん傘持ってんの?」
「…持ってないです」
「えー、大変じゃん。俺はもってるからいいけど」
「そっすか」
 ジッと窓の外を睨みつけていると、ごろ、と不穏な低い音が響いた。
 影山はヒッと声を漏らして窓から離れて耳をふさぐ。それを見た及川は、おもしろそうに顔をゆがめた。
「あっれー、もしかして飛雄ちゃんって雷恐いー?ダッサー」
 ぷぷぷ、と笑いながら言う及川に影山は眉をしかめる。否定しようとしたが、土砂降りの雨を降らしながらごろごろと唸る空がいつ大きいのを落とすかわからなかったので、しぶしぶ肯定した。こういう時の及川は否定すればするほど絡んでくるのが常だからだ。影山が否定すればじゃあ恐くないってことを証明して見せてよとかなんとか言い出すにちがいない。
「…そうですよ、悪いですか」
「えっマジ?恐かったら及川さんに抱きついていいんだよ??ほらちゃんとおへそ隠さなきゃ。雷様にとられちゃったらいやだもんねー?」
 いいおもちゃを見つけたといわんばかりに楽しそうにいう及川に影山は無視を決め込む。しかし無視していても及川はねちっこくいい続けるのをやめない。
 しばらくはそれを無視できていたが、さすがにいらいらしてきて、いい加減しつこいと影山が怒鳴ろうとしたとき、ピカッと空が強く光った。それに影山はすぐに目を閉じて耳をふさぐ。しかしどうやら雷が落ちたのは遠くの方らしく、大きな音が轟くことはなかった。
 それにほっとしながら影山が目を開くと、目の前に耳を押さえて目をぎゅっとつむる及川がいた。
 え、と影山が声を漏らすと、目を開けた及川があわてて耳から手を離した。
「ち、違うからね!!今のは条件反射ってやつで、光ったのが恐かったとかじゃなく、でかい音がすると思ったからの自己ぼうえ」
 及川の説明の途中で、ぴっしゃあん、という鋭い音と光が起こった。何の前触れもなく落ちた雷に、二人は何が起こったかわからずただ身を硬直させた。その雷の衝撃が去ったあと、及川と影山は自然と近づきあった。及川が影山の両腕を握る。影山はその行動の訳がわからなかったが、その手のひらのぬくもりは影山を少し安心させた。
「ち、ちかかったね、今の」
「は、はい」
 影山は、及川がまだ緊張しているのが顔を見て分かった。少し青ざめている。また空が光って、及川は影山の腕がぴくりと引きつったことから、影山は腕をつかんでいる手のひらの力が強まったことからお互いの体が硬直したのが分かった。今度は、どこん、というような低い音が響く。
「あ、あの、おいかわさ、」
「言わないで、わかってるから」
 分かってるっていったい何が分かっているのか影山にはさっぱり分からなかったが、その言葉に従って続きは言わなかった。


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