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「任務完了、帰るぞ。」
「御意。」
今日は初の特Sランク任務を負かされた新人の付き添い。
正直、ガキじゃねぇんだから俺がこうして直々に見る必要もないと思う。
まぁ、綱手からの命令だから仕方ない。
「あの。」
暗部養成所も、俺が総隊長になってからは陰気くさいところではなくなるよう努力している。
とはいっても暗殺に感情は禁物だ。
だが、そうでないときまで心を殺して欲しくない、と思っている。
だから少しずつ心の訓練も取り組んでいるんだが……今日のこいつはそうなる前の奴だ。
「今日の評価をお願いします。」
評価を気にして仲間とか命とかそういったものを一切大事にしない。
「…40点だ。無駄が多すぎる、が、初めてにしては上出来だ。」
いつかこいつにも大切な仲間や守りたいと思える奴が出来るといいんだが……。
*
「じゃあ影鹿、あとは頼む。」
「あぁ。」
時刻は朝の6時。今日の任務の報告を影鹿にまかせ俺は外へ飛び出す。
……サァ
「今日でお前が死んで4年だ。姫も明日で16歳なんだな。
…16歳のお前ってどんなだ?きっとすげー美人で……それで…っ。」
毎年、姫の墓前で独り言のように永遠語りかける。
答えがないことなんて分かっているのに……語りかけずにはいられない。
「姫に…会いたい。」
『その願い、叶えてやろうか?』
バッ…
「誰だ!?」
今、何の気配も感じなかった?
いくら姫の事に気をとられていたとはいえ、この俺が全く気配を感じれないなんて事……。
『俺は敵ではない。お前の願いを叶えてやる者だ。』
そういって俺の前に現れたのは全身を黒マントに覆われた謎の人間。
…いや、人間であるのかどうかすら分からない。
「何者だ、お前。」
『俺の名はハザマ。死んだ人間を一度だけ生き返らせることが出来る。
お前がその者に会いたいだけの理由があればな。』
「死んだ人間を…生き返らせる?」
何バカなことを言っているんだ、こいつは。
俺の正体を知って、姫のネタで俺を動揺させて襲うつもりか…?
ったく、今日明日くらいは静かに過ごさせろよ。
『…ふむ、姫と言うのかこの娘。
12歳にして死んでしまったとは…可哀想に。』
「……!」
『お前はこいつの事が好きだったのか?
あぁ、それとも恋人だったとか?』
「…お前には関係ない。」
『その様子からすると前者のようだな。想いを伝える前に死んでしまったのだな。』
「黙れ。」
『なら俺に従え。姫に会って気持ちを伝えたいと願え。
そうすれば…「うるさいっ!!」
ザシュッ…
『くくく…お前ごときに殺される私ではない。』
消えた!?一体どうなってやがる…!!
ハザマの声だけが俺の耳に響く。
『今日はこの辺で引いておくか…。考える時間を与えてやる。
だが会いたいのなら無理はするな。本心に従え、抗うな。』
そういうとハザマの声はピタリとやんでしまった。
気配自体が元々感じれないので何ともいえないがおそらくもう俺の近くにはいないだろう。
「くそっ…何が生き返らせてやる、だ。」
死んだ人間が何のリスクもなしに生き返れる訳がない。
カブトのように穢土転生の術の類なのか…それともチヨバアのように己の命そのものを吹き込む類なのか……。
いずれにしても高度だし、禁術レベルである。
それに……この世の理に反してあいつが生き返ったとしても俺は――…
「そんな卑怯な真似して生き返った姫を見ても…俺は満たされない…っ!!」
頭ではそんなこと分かっているのに……
ハザマの言葉が俺の心をどうしようもなく揺さぶる。
俺は………。
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