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俺が12歳のとき、とても仲の良い女の子がいた。名前は姫。
ショートカットで大きな目をしていて…アカデミーでも1,2を争う可愛い女の子だった。
…でも死んでしまった。
元々重い病気で、忍の道へ進めばその寿命をさらに縮めることになる、
いや、下手したら卒業する前に死んでしまうかもしれない、と。
結局その予言どおり彼女は卒業する前に死んでしまった。
だが、彼女が両親に
"アカデミーに入って忍になる!"
…それが彼女が両親に言った最初で最後のワガママだった。
アカデミーにいたころの俺には"ともだち"なんていなかった。
何もしていないのに回りからは好奇の目で見られ…いつも一人だった。
姫はそんな俺とは違い周りからの人望もあってクラスの人気者で……
サスケとお似合いカップルだ、なんて言われていた。
一人ぼっち俺に姫は声を掛けてくれ…いつも一緒にいた。
同情で一緒にいてくれるのだろうか、何て思わなかったわけではないが
あのころの俺は構ってくれる存在というのが嬉しくて姫が俺と話してくれることを心の底から喜んだ。
だけど姫のそれが同情でないというのを姫が死ぬ10日前に知った。
そのとき姫は持病の悪化が原因で入院していた。
だからあいつが退院したら俺はあいつに自分の思いを伝えようとした。
なのに………死んでしまった。
姫が帰ってきたときに情けない姿を見せれまいと頑張って修行したのに……
あいつはそんな俺の気持ちを知りもしないで天国へと旅立った。
それから俺は姫のいない哀しみを埋めるために修行に励んだ。
人を信じるということも出来なくなってしまった。
そして気がついたときには暗部に入っていた。
どうして入ったのかは分からない。
だが人を殺すことに何の痛みも感じなくなっていった。
そして暗部に入隊してからわずか3年余りで俺は暗部総隊長へと上りつめた。
そこでシカマルが暗部服そう隊長であることも知った。
総隊長になってからは今まで以上に忙しくなり、昼は下忍の任務、夜は暗部の任務という生活を過ごす。
忙しいほうが姫の事を考えなくてすむ……
あの日から一度だってあいつの事を忘れたことはない。
…もしかしたら俺が暗部に入隊したのは姫をすくえなかった怒りを別の人間を殺すことで晴らそうとしているのかもしれない…。
そして今、俺は暗部の任務へ向かうために自宅で準備をしている。
「…明日で姫が死んでから4年、か。
それで…明後日が16歳の誕生日…。」
この2日間だけはどうしても姫の傍で過ごしたいといって前後で任務を詰め込む。
この後は新人の暗殺任務の付き添いで終わりだ。
「ふぅ…。」
あれから4年が過ぎようとしているのに俺の中の時計は一向に動かない。
姫が死んでしまったあの日で止まったままだ。
いつになったら動くだろうか。
いつになったら忘れられるだろうか……
「姫、…俺の気持ち……ちゃんと伝えてねぇってばよ……。」
俺のこの気持ちを姫に伝えることが出来たなら……
俺はお前を―――……
姫を忘れられるだろうか?
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